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第十九章 旅に出る弟子と騎士
432.さらっとポロリ
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今日はこの酒場の上にある宿で休むことにして、改めてまた明日出発することに決めた。
時間はまだ早かったけど、俺たちもずっと歩いてきたし今日は早めに休むことにして明日以降の行動をウルガーと一緒に話し合う。
「まずレクシェルさんにドワーフの隠れ里を案内してもらうとして、そこで長く滞在するようになるとまた日程がずれ込みそうだな」
「サラマンダー様が何を伝えようとしているのかが分からないからな。でも、師匠のことっていう可能性もある」
「え、そこでテオドール様が出てくる?」
ウルガーが驚いているようなので、テオの身に着けていた金の指輪はサラマンダー様の力を借りられる指輪だと説明する。
俺はウンディーネ様の力を借りられる銀の指輪を身に着けているけど、問題は精霊王様側が積極的に力を貸してくれることができるのは一度きり。
俺のように精霊魔法が使用でき、更に精霊王から祝福を受けている場合はお願いすれば指輪に力を分けてもらえる。
「じゃあ、レイヴンの持っている指輪を俺が貸してもらうと、どうなるんだ?」
「ウンディーネ様が力を貸してもいいと思えば、貸してくれると思う。ちなみにウンディーネ様は俺の母さんだから、ウルガーにならきっと力を貸してくれるよ」
俺はウンディーネ様の祝福を受けたので、指輪は付けているけど指輪なしでも召喚することは可能だ。
ただ、指輪からだと精霊力は使用しないので誰でも精霊王様を召喚する条件を満たしていれば召喚できる。
「は……? えぇぇ! 俺、初耳なんですけど!」
「あー……うん。今初めて言った」
「まさか、あの時。俺らに内緒の話してたのって……」
「そう、ウンディーネ様が俺と師匠にだけ教えてくれた。戦いの後、俺が改めて父さんに会いに行ったときは母さんも父さんの側にいたから安心したけど……その時に俺は祝福を受けた」
そういえば最近誰かときちんと会話もしてなかったから、色々と話していなかったかもしれない。
ウルガーは話についていけないとずっと目をぱちぱちしていたけど、そのうちに何度か深呼吸し始めた。
「……はぁ、驚かせるなよ。で、話を元に戻せないけど戻すとして。逆に金の指輪を通じてサラマンダー様の力が借りられるんだったら、テオドール様の場所が分かったりするんじゃ?」
「指輪を通して感じることができる時は、精霊王様が指輪の先を意識して、強い魔力を感じる時のみ。つまりサラマンダー様が意識して師匠を感じた時だけなんだ」
「ややこしいな。でも、それでも可能性はあるってことか。サラマンダー様がレイヴンに伝えたいって言うなら、テオドール様のことっていうのが可能性が高そうだ」
「だと、いいんだけど」
期待しすぎると違った場合に落胆も大きくなる。
この半年で痛いほどよく理解していることだ。
俺の気持ちを察したようにウルガーが俺のことを意味深に見つめてくる。
「どうせまた悪い方向に考えてるんだろ? テオドール様の目撃情報があるくらいだし、レイヴンだって生きてるって信じてるんだろ? だったら追加でいいこと教えてもらえるかもくらいの気持ちでいろって」
「それは、そうなんだけど……どうしてもね」
俺が苦笑すると、これだから……とウルガーは大げさに両手を折り曲げて首を振ってくる。
「真面目過ぎるのもよくないっていつも言ってるだろう? テオドール様ほど不真面目じゃなくてもいいけど、レイヴンはもっと肩の力を抜いたほうがいい。また、力が入ってきてるって」
「そうかな? 俺の悪い癖だよな。気を付ける」
「そうそう。情報収集しながら、一歩ずつテオドール様の痕跡を辿っていこう」
ウルガーに両肩に手を置かれたので、俺も返事をするように見上げて頷いた。
決意も新たに、俺たちもゆっくりと就寝することにする。
まずはドワーフの隠れ里に入れてもらうところからだ。
方法を考えようと思ったけど、身体を横にすると疲れが出てしまい意識は微睡んでいった。
時間はまだ早かったけど、俺たちもずっと歩いてきたし今日は早めに休むことにして明日以降の行動をウルガーと一緒に話し合う。
「まずレクシェルさんにドワーフの隠れ里を案内してもらうとして、そこで長く滞在するようになるとまた日程がずれ込みそうだな」
「サラマンダー様が何を伝えようとしているのかが分からないからな。でも、師匠のことっていう可能性もある」
「え、そこでテオドール様が出てくる?」
ウルガーが驚いているようなので、テオの身に着けていた金の指輪はサラマンダー様の力を借りられる指輪だと説明する。
俺はウンディーネ様の力を借りられる銀の指輪を身に着けているけど、問題は精霊王様側が積極的に力を貸してくれることができるのは一度きり。
俺のように精霊魔法が使用でき、更に精霊王から祝福を受けている場合はお願いすれば指輪に力を分けてもらえる。
「じゃあ、レイヴンの持っている指輪を俺が貸してもらうと、どうなるんだ?」
「ウンディーネ様が力を貸してもいいと思えば、貸してくれると思う。ちなみにウンディーネ様は俺の母さんだから、ウルガーにならきっと力を貸してくれるよ」
俺はウンディーネ様の祝福を受けたので、指輪は付けているけど指輪なしでも召喚することは可能だ。
ただ、指輪からだと精霊力は使用しないので誰でも精霊王様を召喚する条件を満たしていれば召喚できる。
「は……? えぇぇ! 俺、初耳なんですけど!」
「あー……うん。今初めて言った」
「まさか、あの時。俺らに内緒の話してたのって……」
「そう、ウンディーネ様が俺と師匠にだけ教えてくれた。戦いの後、俺が改めて父さんに会いに行ったときは母さんも父さんの側にいたから安心したけど……その時に俺は祝福を受けた」
そういえば最近誰かときちんと会話もしてなかったから、色々と話していなかったかもしれない。
ウルガーは話についていけないとずっと目をぱちぱちしていたけど、そのうちに何度か深呼吸し始めた。
「……はぁ、驚かせるなよ。で、話を元に戻せないけど戻すとして。逆に金の指輪を通じてサラマンダー様の力が借りられるんだったら、テオドール様の場所が分かったりするんじゃ?」
「指輪を通して感じることができる時は、精霊王様が指輪の先を意識して、強い魔力を感じる時のみ。つまりサラマンダー様が意識して師匠を感じた時だけなんだ」
「ややこしいな。でも、それでも可能性はあるってことか。サラマンダー様がレイヴンに伝えたいって言うなら、テオドール様のことっていうのが可能性が高そうだ」
「だと、いいんだけど」
期待しすぎると違った場合に落胆も大きくなる。
この半年で痛いほどよく理解していることだ。
俺の気持ちを察したようにウルガーが俺のことを意味深に見つめてくる。
「どうせまた悪い方向に考えてるんだろ? テオドール様の目撃情報があるくらいだし、レイヴンだって生きてるって信じてるんだろ? だったら追加でいいこと教えてもらえるかもくらいの気持ちでいろって」
「それは、そうなんだけど……どうしてもね」
俺が苦笑すると、これだから……とウルガーは大げさに両手を折り曲げて首を振ってくる。
「真面目過ぎるのもよくないっていつも言ってるだろう? テオドール様ほど不真面目じゃなくてもいいけど、レイヴンはもっと肩の力を抜いたほうがいい。また、力が入ってきてるって」
「そうかな? 俺の悪い癖だよな。気を付ける」
「そうそう。情報収集しながら、一歩ずつテオドール様の痕跡を辿っていこう」
ウルガーに両肩に手を置かれたので、俺も返事をするように見上げて頷いた。
決意も新たに、俺たちもゆっくりと就寝することにする。
まずはドワーフの隠れ里に入れてもらうところからだ。
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