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第2章
最終警告
しおりを挟む「何ですって?」
ヴィクトリアは、エリザベスからヘイスティングス公爵の訪問予定を聞いて、驚きのあまり声を上げた。
「はい」
エリザベスは穏やかに答えた。
「ラファエル様が私との婚約を申し出るために、公爵閣下と共にいらっしゃるそうです」
「嘘よ!」
セシリアが叫んだ。
「あなたがどうやって彼を唆したのか知らないけど、許せないわ!」
ヴィクトリアは何か言いかけたが、部屋の隅でじっと立っているヘイスティングス家の護衛の存在に気づき、言葉を飲み込んだ。彼女は冷静さを取り戻そうとしていた。
「まだ終わっていないわ」
彼女は小声でセシリアに言った。
「婚約が成立するまでには、まだ時間がある」
しかし、彼女の言葉は護衛の耳に届いていた。その晩のうちに、ヴィクトリアの言葉はラファエルに報告された。
ラファエルはその夜、報告を受けると、エリザベスの安全について考えていた。護衛を配置したとはいえ、ヴィクトリアとセシリアが完全に諦めたとは思えなかった。彼は追加の対策を講じることを決意した。
「全ての食事と飲み物を二重にチェックしろ。それから父に影を二名ほど借りてきてくれ」
彼は自分の信頼する私兵に命じた。
「エリザベスの部屋への出入りも厳重に監視してほしい。そして、ヴィクトリアとセシリアの行動、特に外部との接触についても監視を怠るな、怪しいと思う動きがあればすぐに報告しろ。徹底的に悪事の芽を摘むために明日の朝ウィンターヘイブン邸を訪問する」
私兵は頷いた。
「かしこまりました、ラファエル様」
*
翌朝、エリザベスが朝食をとっていると、突然ラファエルが邸に現れた。彼は正式な訪問というよりも、突然の抜き打ち訪問といった様子だった。
「ラファエル様!よ、ようこそ…」
ヴィクトリアとセシリアは驚きのあまり玄関へと飛びだすように出迎えた。
「今日のご訪問は聞いておりませんでした」
ラファエルは彼女を身長差から冷たく見下ろした。
「昨晩、『まだ終わっていない』と言ったそうだな」
ヴィクトリアの顔から血の気が引いた。
「そ、それは…」
「忠告しておく」
ラファエルの声は氷のように冷たかった。
「エリザベスに対して、何かを企むなら、それはお前達の終わりを意味する。エリザベスはいずれ公爵夫人となる。それは決定事項だ。この伯爵家は跡取りがいなくなる事になるだろう。お前たちの好きにすれば良いと思っていたが、エリザベスに歯向かうというなら、私にはお前たちからそれすら取り上げる事ができる力がある。それを覚えておくがいい」
彼の声には、一八才の若者らしからぬ威厳と脅威が含まれていた。セシリアは恐怖に震え、ヴィクトリアも言葉を失った。
ラファエルは二人に比べて落ち着いて顔を出したエリザベスに向き直り、その表情は一変した。
「今朝は良い天気だな。庭を散歩しないか?」
エリザベスは彼の突然の変化に可笑しそうに微笑まずにはいられなかった。
「はい、喜んで」
二人が庭に出ると、ラファエルは再び本来の口調に戻った。
「あの二人には警告しておいた方がいいと思ってな。まだ何か企んでいるようだからな。懲りない奴らだ」
「あなたらしいわ」
エリザベスは彼の腕に手を添えた。
「でも、あまり厳しくしないで。一応は家族なの」
「ああいうやからは甘さを見せるとつけ上がる。すぐに忘れてくだらぬ悪事を働くのだ」
彼は断固として言った。
「かつて私が甘かったばかりに、お前は…」
彼は言葉を切った。前世での悲劇を思い出していたのだ。
エリザベスは彼の後悔を慰めるように繋いだ手を握りしめた。
ラファエルは彼女の手を取り、唇に近づけた。
「二度とお前を手放さない。それだけは約束する」
ラファエルは確かな誓いを残してまたすぐに会いに来ると、邸を後にした。
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