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第二章
(6)
しおりを挟むジャックは私が家を出てから二年後、研究室で死んだ状態で見つかった。
連絡がとれないことを心配したJが研究室をこじ開けたらしい。死亡して二日経っていた。
母と私にJが連絡をくれて、その日に火葬をした。
綺麗に整えられた箱に横たわるジャックは透けそうな程白く、紫色の斑点が気まぐれに炙られた様に浮かび上がっていた。顔につけた白粉と斑点から出る液体が混じりひどく醜く見えた。黒く美しかった髪の毛はかろうじて残っていたが、あの死体がジャック本人だとは信じられなかった。
火葬をしたことは覚えている。ジャックが慕っていた教授らしき人も来ていたと思う。
ただ、全てが夢の中のような現実でないような心地で、醜い紫の斑点が私の頭をずっと離れなかった。涙は出なかった。母はずっと泣いていて、Jはジャックから目を離さなかった。一度も。
(ぼく以上に君を思ってるやつはいない。君はぼくでぼくは君だ。)
ジャックの骨を集めた私たちはその日一言も交わすことなく各々の家へと帰った。
私は気が付いたら家に着いていて、気が付くと寝ていた。
丁度学生を終え、アカデミーでの仕事をそのまま続けることになっていた私は普段通りに過ごした。アカデミー生と違い週に三日はアカデミーに足を運ぶ生活になっていたが苦ではなかったし覚えることが増え忙しく、仕事にのめり込んだ。
しかし半年程たった頃から突発的な眠りが頻繁に起きるようになった。仕事中や移動中もいつの間にか瞼が閉じ、遅刻や早退は当たり前、時には研究室で一日眠りこけていた日もある。
私はジャックが援助してくれたお金で見つけた私の家にずっといたいと思うようになった。
夢を売る仕事を見つけたのは偶然だ。
睡眠時間を記録している手の甲のデバイスが、私の睡眠時間が飛躍的にのびたことを元に「眠れる人へ」というPRを見せてきた。
AIには人間の幸福度という観点で様々な補助を行うシステムが搭載されている。
私が眠ることで私の幸福度が上がると判断したのだろう。
そして私はアカデミーでの仕事を辞め夢を売る仕事を選んだ。
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