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反響、騒動 そんなの関係なしに
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試合直後。
ネットSNSは彩奈関連のキーワード、ハッシュタグで埋め尽くされていた。
そして当然現地のメディア勢も。
まあ普通、プロ注目クラスの選手は簡潔なコメントのみ拾いまとめ、あとは監督がテレビカメラの前面に立って細かいインタビューへの回答をもらうわけだが。
「えー私監督鈴井としましては、この逸材をどう育てるか、腕の見せ所と考えまして、さらにはもちろん初の女子部員参加。
この革新的な試みをリードしようと言う志も…。」
と折角の聖ファラリス学園鈴井監督の演説?であったが、あいにく彼に対しては代表して眼鏡姿の女性記者1人が、トレイに各社録音機器を乗せて応対しているのみであった。
いつの間にか100人近くに膨れ上がった報道陣本隊は、球場各施設を大移動して本命の少女を探していた。
「まだ球場内にいるはずだ、探せ!コメント取れ!出口には全部張れ!」
「選手控え室には!?」
「禁止されてる!」
「混乱したのでやむを得ずでいいだろ!」
そのイナゴの大群に立ちはだかったのはファラリス学園の主力2人であった。
「おいおい、今日2ホーマーの成川隆也様にはアイサツ無しかぁー!?」
「俺ももう1人のエースだし1本打ってるぞ?」
報道陣の顔が歪む。
「生憎『今は』総見寺彩奈さんに用があるんだよ君たち!」
「そうだ、匿ってないで出せ!」
「はいぃ?何ですか!?」
「最近耳が遠くてー笑」
「…ガキが…大人の世界舐めるなよ」
「高野連に君たちの態度を…」
「ああ、すみません!」
背筋のピンとした老人が割って入り…もちろん執事平八郎であった。
「なんだこのジジイ。」
「総見寺家にお仕えしております西郷平八郎と申します。
執事としてお嬢様に代わりコメントを。」
まだ納得はしていないようだが、報道陣はメモやレコーダーを構える。
「たまたま、投げる事が好きで、誘われて始めた野球が、今日こう言う実を結んだのも皆様のおかげ、監督やチームメイトのおかげです。
緊張や恐怖もあったので無我夢中でやった事の反響が予想超えてて、かなり戸惑いや動揺もありますので、初めての試合の疲れも含め頭が回りませんので、今日はコメントのみで失礼させていただきます。
…との事であります。」
7割がたは、一通り引き下がる体勢。
だが一部の記者たちは…。
「んだよジジィ、セレブ、上級国民気取りか!?
清く正しい高校野球の世界のルール守る気ないのか?5分くらいは取材に応じさせろ!
本人に!」
「執事ったって身内の話だろうが!
親の企業の重役や弁護士ならまだしも…」
「はあ、弁護士…。
司法試験になら受かっております、戦後まもなく復員後、先々代のご厚意で東大に通わせて頂いた時に、現役で…。」
!???
「戦中はそういう時代ではありませんで、陸軍の特務機関におりました。
諜報、工作、暗殺など…ああ失礼、爺の昔話などどうでもよいですな。フッフッ。」
一体何者…いや何歳だこの老執事は…。
成川、明智も含め皆唖然とした。
よく見ると、温和な表情に比して目は全く笑っていない…。
報道陣は何となく…。
潮が引くように去っていってしまった。
「ふう、疲れるブンヤ達ですな。では、これからもお若いお二方を頼るでしょうが、なにとぞよろしく。」
「い、いえ、そんなとんでもない」
「お、お疲れ様でした。」
何故か最敬礼で見送ってしまう明智と成川。
15分後、その平八の運転するリムジンの後席に、彩奈は座っていた。
「あ、なんかごめんね、色々してくれて。」
「務めでありますから。お嬢様はゆっくりお休みください。あ、スマホゲームは車内ではお控え下さい。」
「うん、こ、こ、突破したら…」
数分ほど静かになったので、ミラー越しに見ると、お嬢様は眠れる姫となっていた。
寝顔は変わりませぬな。
幼き日も今も…。
『ちょっと洸太郎!?どうしてこうなるの!?
なんで勝っちゃうのよ!?』
メッセージアプリに彼女…朝倉舞衣子から来た文面に、ため息をつく明智。
既に自宅に帰っている。
「どうしてって皆戦う顔をしているからな。
強豪だろうが勝つつもりで勝負して勝った。
ただそれだけだけど。」
『そういう話じゃない。
なんであの女に色々手ほどきしてるのよ!?』
ハァ…やっぱそっちか…
「その様子だと、予選の組み合わせに細工していきなり湾岸高とぶつかる羽目になったのは、やっぱり君が親御さんの(大会を主催している)新聞社に手をまわさせたからのようだな。」
『は?何がダメなの?あなたが野球部から早く解放されて、未来の総理に相応しい大学に入る為でしょう?』
「君に気を遣ってもらわなくても、学力で入る準備はしている…スポーツ推薦もある…というより、プロで自分を試したい気持ちも残ってる。
繰り返すけど、元総理の祖父さんや親父の後を継ぐと決めたわけでないし、野球をやり切ってから考えても遅くない。」
『ダメよ、あなたは…タレントや脳筋議員みたいに言われるのやだよ私…未来の旦那様のあなたが。
絶対に私をファーストレディにしてって言ってるでしょう!?』
クソデカため息をつきながらスマホを放り出したくなる衝動だけは堪えつつ、洸太郎は返信する。
「全部わかってるよ。
ただスポーツに打ち込んでる人間の気持ちは理解してくれ。
で、君や俺がどうこうするに関係なく、次の試合勝てる保証はない。勝負事だからね。
今言えるのはこれだけだ。
じゃ先輩と約束があるので、これで。」
そう言って明智洸太郎は、タブレットを取り出してデスクに立てかけた。
ネットSNSは彩奈関連のキーワード、ハッシュタグで埋め尽くされていた。
そして当然現地のメディア勢も。
まあ普通、プロ注目クラスの選手は簡潔なコメントのみ拾いまとめ、あとは監督がテレビカメラの前面に立って細かいインタビューへの回答をもらうわけだが。
「えー私監督鈴井としましては、この逸材をどう育てるか、腕の見せ所と考えまして、さらにはもちろん初の女子部員参加。
この革新的な試みをリードしようと言う志も…。」
と折角の聖ファラリス学園鈴井監督の演説?であったが、あいにく彼に対しては代表して眼鏡姿の女性記者1人が、トレイに各社録音機器を乗せて応対しているのみであった。
いつの間にか100人近くに膨れ上がった報道陣本隊は、球場各施設を大移動して本命の少女を探していた。
「まだ球場内にいるはずだ、探せ!コメント取れ!出口には全部張れ!」
「選手控え室には!?」
「禁止されてる!」
「混乱したのでやむを得ずでいいだろ!」
そのイナゴの大群に立ちはだかったのはファラリス学園の主力2人であった。
「おいおい、今日2ホーマーの成川隆也様にはアイサツ無しかぁー!?」
「俺ももう1人のエースだし1本打ってるぞ?」
報道陣の顔が歪む。
「生憎『今は』総見寺彩奈さんに用があるんだよ君たち!」
「そうだ、匿ってないで出せ!」
「はいぃ?何ですか!?」
「最近耳が遠くてー笑」
「…ガキが…大人の世界舐めるなよ」
「高野連に君たちの態度を…」
「ああ、すみません!」
背筋のピンとした老人が割って入り…もちろん執事平八郎であった。
「なんだこのジジイ。」
「総見寺家にお仕えしております西郷平八郎と申します。
執事としてお嬢様に代わりコメントを。」
まだ納得はしていないようだが、報道陣はメモやレコーダーを構える。
「たまたま、投げる事が好きで、誘われて始めた野球が、今日こう言う実を結んだのも皆様のおかげ、監督やチームメイトのおかげです。
緊張や恐怖もあったので無我夢中でやった事の反響が予想超えてて、かなり戸惑いや動揺もありますので、初めての試合の疲れも含め頭が回りませんので、今日はコメントのみで失礼させていただきます。
…との事であります。」
7割がたは、一通り引き下がる体勢。
だが一部の記者たちは…。
「んだよジジィ、セレブ、上級国民気取りか!?
清く正しい高校野球の世界のルール守る気ないのか?5分くらいは取材に応じさせろ!
本人に!」
「執事ったって身内の話だろうが!
親の企業の重役や弁護士ならまだしも…」
「はあ、弁護士…。
司法試験になら受かっております、戦後まもなく復員後、先々代のご厚意で東大に通わせて頂いた時に、現役で…。」
!???
「戦中はそういう時代ではありませんで、陸軍の特務機関におりました。
諜報、工作、暗殺など…ああ失礼、爺の昔話などどうでもよいですな。フッフッ。」
一体何者…いや何歳だこの老執事は…。
成川、明智も含め皆唖然とした。
よく見ると、温和な表情に比して目は全く笑っていない…。
報道陣は何となく…。
潮が引くように去っていってしまった。
「ふう、疲れるブンヤ達ですな。では、これからもお若いお二方を頼るでしょうが、なにとぞよろしく。」
「い、いえ、そんなとんでもない」
「お、お疲れ様でした。」
何故か最敬礼で見送ってしまう明智と成川。
15分後、その平八の運転するリムジンの後席に、彩奈は座っていた。
「あ、なんかごめんね、色々してくれて。」
「務めでありますから。お嬢様はゆっくりお休みください。あ、スマホゲームは車内ではお控え下さい。」
「うん、こ、こ、突破したら…」
数分ほど静かになったので、ミラー越しに見ると、お嬢様は眠れる姫となっていた。
寝顔は変わりませぬな。
幼き日も今も…。
『ちょっと洸太郎!?どうしてこうなるの!?
なんで勝っちゃうのよ!?』
メッセージアプリに彼女…朝倉舞衣子から来た文面に、ため息をつく明智。
既に自宅に帰っている。
「どうしてって皆戦う顔をしているからな。
強豪だろうが勝つつもりで勝負して勝った。
ただそれだけだけど。」
『そういう話じゃない。
なんであの女に色々手ほどきしてるのよ!?』
ハァ…やっぱそっちか…
「その様子だと、予選の組み合わせに細工していきなり湾岸高とぶつかる羽目になったのは、やっぱり君が親御さんの(大会を主催している)新聞社に手をまわさせたからのようだな。」
『は?何がダメなの?あなたが野球部から早く解放されて、未来の総理に相応しい大学に入る為でしょう?』
「君に気を遣ってもらわなくても、学力で入る準備はしている…スポーツ推薦もある…というより、プロで自分を試したい気持ちも残ってる。
繰り返すけど、元総理の祖父さんや親父の後を継ぐと決めたわけでないし、野球をやり切ってから考えても遅くない。」
『ダメよ、あなたは…タレントや脳筋議員みたいに言われるのやだよ私…未来の旦那様のあなたが。
絶対に私をファーストレディにしてって言ってるでしょう!?』
クソデカため息をつきながらスマホを放り出したくなる衝動だけは堪えつつ、洸太郎は返信する。
「全部わかってるよ。
ただスポーツに打ち込んでる人間の気持ちは理解してくれ。
で、君や俺がどうこうするに関係なく、次の試合勝てる保証はない。勝負事だからね。
今言えるのはこれだけだ。
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そう言って明智洸太郎は、タブレットを取り出してデスクに立てかけた。
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2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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