悪役過ぎない気まぐれ財閥令嬢が野球と言うスポーツで無双します!?

俊也

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自分を解き放て!

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その後はあっさり後続が絶たれて5回表、帝王学園の攻撃。
いつもの如く無表情ながら、それでも心身の疲労を隠しきれない伊万里。
ベンチに腰掛けようとした所に立ちはだかり、文字通り指弾したのは立花部長兼コーチであった。
「この恥晒しが!
ファラリスに、あの女1人になんて醜態だ!
そのままプロやメジャーに行けたところで、素人メスガキに負けた奴というレッテルをいつまでも背負うことになるんだぞ!
私の指導者歴にドロを塗るつもりか!
誰が行き場のないひ弱なデクの棒を拾って特別特待生にしてやったと思っている!?」
瞬間、誰もが初めて見る形相に伊万里の顔が変容した。
そして右手で立花の喉を掴む。
「う…ごっ…!?」
「うるせえ!お前のおもちゃじゃない俺は!!
恩はあるのかも知れねえが今は別だ!
俺はお前じゃなく俺自身のために戦う!!
あの女のように!」
当然慌ててチームメイト達は伊万里を止めようとするが、彼らの体格体力をもってしても困難であった。
どうにか引き剥がされ、咳き込む立花。
…幸い、190センチ級のフィジカルエリート達が人垣を作る形となり、何があったかはカメラにもスタンドにも把握されずじまいであったが…。

「まあ一旦落ち着いてすわりなさい、伊万里。」
鬼内監督がグラウンドから視線を外さぬまま呟く。
「立花コーチがどうかなっちまったらお前さんの野球でなく人生が終わるぞ。
それに粗相もしてしまったようだし、彼も思い知ったろう。」
立花の足元にアンモニア臭のする水たまり。
つい、2.3名の部員が失笑を漏らしてしまう。
『…何でしょうか?帝王学園のベンチで…トラブルが?』
『んー伊万里くんを囲んでるようですが…あるいはナインが激励しているのかも知れませんねえ。少なくとも彼が地区予選レベルでこのように打たれることはありませんでしたから…。』
放送席のやり取りを差し置き、彩奈は再び三者連続三振。
あっさりと帝王学園の上位を切り捨てる。
「いくぞ」
!?
他ならぬ伊万里羅堂の声に、ナインは顔を見合わせた。
おうっ!と遅れて応える。
「お前変わったな」
野田が苦笑気味に呟く。

ファラリス学園、7番内田からだが…!
うおっ!?
164キロ!
牙はまだ死んでいない。
いや、ボールが生きてると言うか…。
「だがなんとか畳み掛けたい。」
3球目に来たパワーカーブ。
喰らいつくも強めのセカンドゴロに終わってしまった。
渡部も1球ファウルが精一杯の三振。
そして児島も…。
カウント0ー2、真っ直ぐの高めを狙い打つ!
果たして伊万里は予測通りの球。
よっしゃもらった!
児島のバットが…
しかしあえなく空を切った。 
再び164キロ!
ストライク!バッターアウト!

「うおおおおおお!」
なんと感情をむき出しにして吠える伊万里。
驚きつつもナイスピッチ、モノが違うぜと声をかけ引き上げるナイン。

「マズいな…立て直してきやがった。」
成川の呟きに、明智もうなづきつつライトへ走る。
我らが総見寺彩奈は、なぜか楽しげな表情でマウンドに上がる。

そして6回表の先頭打者は。
『さあ帝王の牙!伊万里羅堂!総見寺彩奈と三度目の対決はいかに!?』
楽しいねえ!

誰に言うともなく、彩奈は唄うように呟く。
それに応えるように、伊万里は唇を僅かに緩めた。
気づくチームメイトがいたとしたら驚いたであろう…。
(まだ、不完全だが…
俺は解き放たれたぜ。
貴様のおかげかも知れないが、礼はバットでする。)
内心の伊万里の声に応えるように、彩奈の豪球。
『164キロ!こちらも負けてない!
ど真ん中を伊万里空振り!』
『これはもう私の解説出来ない野球ですね』
鍛治山氏も苦笑するしかない。
(今のをインハイに来い)
ミットで示す山倉。
バッティングはアレでも、投手に合わせたインサイドワークは的確である。
舞うようなフォームから、彩奈はまた再び164キロ!
果たしてインハイギリギリ。
ストライクゾーンでも並の選手は単純に恐怖を覚えるスピード!

異音。
しかし打ち損じでは無かった。
『一撃ーッッ!!
高々と神宮の蒼天を衝く打球!
芸術的な放物線を描いて、ああっスコアボードに当たってしまったホームラン!文句なし帝王の牙の逆襲の狼煙だーっ!!』
敵味方もなくスタンドは湧く。
今度は角度の関係で、見てわかる範囲では液晶画面は壊れなかったようだが…。
とにかく試合を振り出しに戻す以上の凄まじいインパクトの特大アーチであった!
「うおおお流石伊万里さん!」
「結婚してー!」
「っしゃ!反撃の時間だああああ!」

ただ、打たれた彩奈は笑みを絶やさない。
そして、ホームベースを踏んだ瞬間に天に拳を突き上げる伊万里。
「よっしゃああああ」
「やったぜ伊万里!」
「続くぞ俺たちも!」
ベンチでハイタッチを交わしながら、横目で立花を見ると、虚ろな目で明後日の方角をみて拍手していた…。

(何はともあれ、確かに楽しい勝負だった。
だが、完全に差し込まれていたのも事実。
金属でなく木製バットなら俺のが折られて負けていた。
で、それでも力で強引に持って行ったツケだ…)
自身の右手首に視線を落とす伊万里。

まあ、ここは仲間を信じるしかない…。
だが彩奈の超高回転160キロオーバーの連発に、帝王学園の猛者達は次々と三振に倒れチェンジに…。
6回裏を同点で迎えることになる。

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