拳の価値は〜いじめで人生詰んだ僕がチート超戦士になり国を守る!【現実を異世界にします!?】

俊也

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芽生え

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高志の自宅に着く。車がある。中小製造業勤務の父親は、まだ夕方6時前なのに帰っている。まあ最近は仕事も減りつつあると聞いてはいるが。
「た、ただいま…。」
母親が出てきた。
「あら高志。今日は何か遅かったわね。え?その方は誰?」
「失礼致しました。私は東郷日出夫と申します。恐れ入りますがこの子の御父上も加えて、お話したいことがございまして。」
「は、はあ…。」
戸惑いつつも、奥へいったん戻る母親。
1分後、高志の父親が出てきた。
「これは…わざわざ…ウチの高志が何かしましたか?」
「はい、何かしたというより、この高志君は学校で日々かなり悪質ないじめを受けておりましてな。恐らくは金品も巻き上げられておるかと。」
「え…本当なの高志?」
ゆっくりと頷く息子に、なんでもっと早く言わないと言いかけた父親を、東郷は軽く右手を上げて制した。
「もちろんその事自体にもきちんと対処しなければなりません。ですが、まず高志君自身の心が酷く傷つき、弱っている。まずはそれをどうするかです。」
「は、はあ…で、何を。」
父親の問いに、東郷は若干表情を緩めて答える。
「どうか、高志君を一週間、この老骨めの空手道場に預けてくれませぬか。
まあしかし現在公式には道場ではなく、DVや虐待などの被害者のシェルターとして、NPO法人として認可を貰っておるという立場ですが。
別に妙なしごきをするという話でなく、心を休ませつつ、高志君の自己肯定感を高め、どんな状況、相手でも堂々としていられるように仕向けていきたいのです。それだけでもかなり状況は変わると思います故。」
遅くなりましたがと言葉を添えて、自らの名刺を渡す東郷。
顏を見合わせる両親。
やがて父親が問いかける。
「高志、お前自身はどうしたいんだ?」
「ぼ、僕はいき…行きたい。行かせてほしい。」
「そ、そうか…わかった。」
一つだけと言って、父親は東郷の方に向き直る。
「この子は一人っ子で、わたくし共も大事に育てたつもりで…実際優しくて誠実な子に育ってくれたとは思いますが…、この世の中を生き抜いていくうえで大切なことを、男親としてもっと教えるべきでした。
お恥ずかしい話ですが、どうか何卒、宜しくお願い致します。」
深々と、両親とも頭を下げる。
「それも、よく判ります、もちろんそうした高志君の美点も、大事に尊重していくつもりです。ではお母さま、最低限のこの子の肌着等を用意してあげて下さいませんか。」
「あっ…はいっ。」
奥へと小走りで向かう母親。
「それと、お父様、高志君の…そうスマホをご自宅で、電源を切った上でご両親の方でお預かり頂きたい。どの道、虐めてくる連中のメッセージや電話が絶えず、彼にはストレスにしかなりませんし。」
「そ、それもそうですな、おいっ、高志。」
「う、うん…。」
父親に渡す寸前、あることに高志は思い当たる。
「ちょ、ちょっと、少しだけスマホみていいですか?すぐ終わります。」
高志が開いたのは、「あの憧れの彼女」の写真動画共有アプリのアカウントであった。
こっそりとフォローして、夜な夜なチェックする。まあネットストーカーと呼ばれても仕方ないのだが。
その娘の本日分の投稿…

!!!!

やはり!そうだったのか…。今日トイレで福井が話していたことと、コレで繋がった…なんということ、何たる理不尽。「彼女」の大切なお姉さんが、そんな形で…。
強烈なマグマのような何かが沸き上がる。
「お、おい?大丈夫か高志?」
息子の見たことも無いような形相を訝しむ父親。
「う、うんなんでもない。よろしくお願い。」
こんどこそ父親にスマホを手渡す高志。
ちょうど戻ってきた母親から、スポーツバッグを受け取る。
「ありがとう。お父さん、お母さん。行って参ります。」
いつになく張りのある声。
家を出る。次に戻って来るときには、果たして…。
東郷の後に付いていく形で、「道場」を目指す。
徒歩で15分の所らしい…。
両者沈黙したまま、10分弱程歩いたところで…。
東郷が口を開く。振り向かぬまま。
「どうしましたか高志。今吐き出してもらってもいいぞ。」

「殺してやる…。」
…何故咄嗟にそんな言葉が出てきたのか、自身にも判らない。
しかも生まれてこの方無いほどに、腹の底から絞り出すような声。
「ほう、怒りを通り越して殺意か。それもまた良し。
それを今後、決して絶やさず加熱させ続けなさい。
それもガソリンが燃えるような、そのうち消えてしまうようなケチなものではない。恒星が人智を超えた光と灼熱を放ち続けるような、半永久的なものを…。そうまさに日輪の拳…。
そうすれば君にできぬこと、倒せぬ敵などこの世に存在しなくなる。

さて…着いたか。」
思った以上に大きく美しい、純和風の建物。
「し、失礼いたします!」
高志は敷居を跨ぐ。自分はこんなにも強く声を張れたのか。


この瞬間この少年は、「惨めな弱者」たる過去を捨て、「ヒトを超えし超生物」としての冒険の地平に旅立ったのである。
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