拳の価値は〜いじめで人生詰んだ僕がチート超戦士になり国を守る!【現実を異世界にします!?】

俊也

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東郷の回顧、戦火の拳

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高志は言われた通り食べることは止めなかったが、聞き入らずにはいられなかった。
いわゆる「軍オタ」の血である。
「私は『ある半島』の出身だ」
軽く驚きを見せる高志。
「いまの一般日本人の歴史認識としては、私の故郷は戦時中の日本の軍隊に植民地として虐げられていた。
と言う見方は半分は正しい。
だが、その反面、我々の『民族』は、日本人にとっては一種の同族であったことも事実。
まあ、自国の価値観と同化させようとしたのを気に食わない者も当然居たが、少なくとも植民地の人間を家畜扱いした白人たちよりは遥かにまともであったと私は考える。
現に、私は貧困の中、勉学と鍛錬に励み、例外的な飛び級で日本の陸軍士官学校に入ることが出来たのだからな。」

高志は強く頷いた。
ネット掲示板やSNSの情報に染まり、同種の考えがあったから…しかし、それを生の声で聴く事が出来るとは。
「そこで厳しい訓練に明け暮れていたある日の教練時、私の武道がある教官の目に留った。
元々私は、父親に先祖から伝わる大陸の拳法を応用したものを厳しく仕込まれておったからな。
そして、連れて行かれた所が…」

決号部隊。

息を呑む高志。
ネット上で戦場伝説的に語られている、実在そのものが疑われていた、敗戦直前の日本軍が編成した精鋭特殊部隊。
それが実在し、その当事者が、僕の目の前に…。
この人から、直接教えを…。

「そこでの基本方針は、あらゆる武道、武術、殺人術を鍛錬し、武器が枯渇し素手素足となっても、無数の完全武装の敵を屠りうる修羅の軍団を作りあげることにあった。
…当然、訓練、鍛錬は苛烈を極めた。死者などザラ。
同期の仲間で実戦投入される段階まで生き残ったのは3割に満たなかった。」

…! ん?実戦投入?

「そう、我々は、日本がアメリカに追い詰められ、敗戦の色が濃くなった中…。
昭和20年(1945年)3月のうちに、決号部隊は、次の敵の目標である沖縄へと配置された。
その数334名。
みな、10代半ば~20代の若者であった。」

そうか…
例えばあの特攻隊も、多くは高志と変わらぬ少年たちであった。
そして東郷先生自身も…
デジタルで得られるのとは違う、圧倒的な体感…。
「私は正直怯えもあったが、それ以上に米軍来たらば来たれと闘志に燃えてもいた。
奴らの手による東京大空襲で、女性も子供もなすすべなく炎の嵐に呑まれていく光景を目の当たりにしておったからな…。
命尽きるまで、米兵どもを殺しまくる気魄でいた。

そして、奴らは来た。圧倒的な兵力と火力で。
我々は当初の作戦通り、数名づつのチームに分かれ、地下壕や林を利用して、上陸した米兵達を奇襲し、ある者は柔術、またある者は私の様に拳法で、奴らに次々と致命傷を与え、一人あたま数名を斃した所で速やかに逃げ去る。
これを徹底して繰り返した。
私は当然初めての殺し合いで、当初は震えが止まらなかったが、やがては慣れてしまった。
我々の存在は、日本軍主力、神風攻撃の思わぬ力戦奮闘とも相まって、米軍に迷信的な恐れをいだかせるようになった。
と同時に、当然の如く警戒も強まり、あらゆる手段を使って我々を潰しにかからせることとなる。
精鋭の小隊を囮に使ったり、近辺の地元集落を焼き払うなどして誘い出すなどの手法で、我が決号部隊にも犠牲が多発するようになった。
私の仲間も3名散り、他のチームに再編されるようになる。
日本軍全体も…善戦むなしく沖縄本島内部に押し込まれていった。
なによりやりきれなかったのは、沖縄の民間の人々が年端のいかぬ少女まで駆り出され、様々な形で命を落としていき…自分達にもそれを護りきれないことであった。」
…いつの間にか高志は、正座をして話に聞き入っていた。
「そして6月に入り…さしもの決号部隊も、50名強程までに撃ち減らされていた。
そこに、沖縄日本地上軍牛島司令官から、直々に命令が下ったのだ…。

我々は例によって分散し、我が軍の主力用とは別枠に掘ってあった幾つかの地下壕伝いに、どうにか敵の警戒網をかいくぐり、諜報に基づいた『そこ』にたどり着いた。
アメリカ沖縄攻略地上軍司令官、バックナー将軍の司令部に、だ。
天佑、と言うべきか、目標の敵将軍は視察のつもりなのか司令部の建屋を出て、数名の護衛のみを連れて姿を見せていた。
私達のチームから300メートルも離れていなかったであろう。
我々…4人は、互いに示し合わせ、一気に茂みを出て突撃した。
完璧過ぎる奇襲であった。
死力を尽くして駆けた。
周囲の米兵達が銃を構える頃には、もうバックナーまでの距離は150メートルを切っていただろう。
左右からの銃弾の嵐に、一番歳上の永田兵長がまず斃れた。
それを見て同じ一等兵の大山と木下が、
「東郷!!貴様に託した!」
そう叫んで、それぞれ示し合わせたように左右に方向転換した。
「すまん!」
私は視線を変えず、そう叫び駆け続けるので精一杯であった。
恐らく両名とも、無数の銃弾を浴びながらも、最低2.3名の米兵を斃し最期を飾ったであろう。
そして私も脇腹と脛に銃弾を喰らいながらも、遂に敵将まで数メートルに迫った…。」


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