拳の価値は〜いじめで人生詰んだ僕がチート超戦士になり国を守る!【現実を異世界にします!?】

俊也

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似非上級国民に天誅を

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東京都板橋区某所。
瀟洒な住宅街を、そのうちの一軒の、「豪邸の一歩手前」くらいの邸宅の門を、3人の警察官が固めていた。
「やっとここも3人まで減ったか…一時は10人体制だったが。」
「そうすね…、まあ迷惑系ってか、正義ぶったYouTuberとかの強引な自宅訪問も、ここ一年以上ないすからね…」 
「みんな正直忘れちゃったんでしょ、ぶっちゃけ。ネットにすらあまり出ないし。確かに個人的には可哀想な事故だったですけど…」
「肝心のマルタイは、なんやかやピンピンしてるしなぁ、大した生命力…。」
!!??
185センチの、屈強な男がこちらに歩み寄って来る。
どう見ても、勤勉な若いビジネスパーソンの風体ではない。
流石に警戒度を一気に上げた3人。
「君、ちょっと身分証出してもらえる?」
一番若手の警察官が進み出た時。
男はナイフを抜いた。
「井伊、コロスー!!!」
いかん!!一人が拳銃を抜くが、右フックを喰らいダウンする。
そのまま男は、「井伊邸」に突入するかと思いきや、何故かナイフを捨て、警官一人を羽交い締めにする。
ナイフを持ってないからには拳銃を抜けない。
そう考え、眼前の状況と自分なりの出世ビジョンを瞬間的に天秤にかけ、もう一人の警官は結局手錠片手に素手で抑えこみにいく。
「はやらせコラ!はやらせコラ!」
意味不明な叫び声をあげ暴れる男を警官達は必死に制圧しようとするが、2人とも170センチ半ばの身長。
もちろん相応に鍛え込んでいるのだが、骨格も違い筋力も相当にある若者が全力で暴れると…。
「クソッ応援を、すみません、どなたか…」
その刹那。
猫科の肉食動物のそれを思わせる、疾走と跳躍。
締め切られた門を乗り越え、そのまま玄関へ殺到。
「お巡りさん…なにか…?」
アラフォーの小綺麗な女性が、玄関を開ける。
天祐我に有り!!
神崎高志は加速し、女性の脇を擦り抜ける。
女性の方は何が起こったか分からず、思考停止し棒立ち状態。
「奥さん!110番してぐうっ!?…ください!」
あ…あああはいっ。

震える手でここの邸宅の主の義理の娘は、スマホを取り出す。
その間、神崎高志は邸内の廊下を走る。
どこだ…?
!?
50代半ばの男性が出てきた。
「なんだ!なんなんだあんたは!あのモンスター遺族に頼まれたのか!?こんなことが許され…」
高志の右関節蹴りが、男性の片膝を破壊する。
「ぐぎゃああああああ!?」
確かめるまでもなく奴の息子。
「あの事故」の時に父親のSNS削除などのケチな炎上逃れの工作をした…。
「そこまで言うならもう、わかっているな。
どこにいる!?」
「ぐ…ぎゃっ…誰が…言うか…親…父…にげ…」
「3秒以内で言わなければ貴様の頭蓋骨を砕く。
ひとーつ、ふたーつ。」
高志は敢えて大振りのモーションで右拳をふりかぶる。
「みーっ…」
「わわわ……わかった、言うっ!この…廊下の…右奥…」
「はいどうも」
追い討ちで高志は息子の片方の膝を蹴り砕く。
もしかしたら彼は従来通りの仕事は出来ないかも知れないが、例によって知ったことではない。
さらに音程を外した悲鳴を背に、小走りで目標に…ドアを蹴破る。
こちらをばっと振り向く老人。
間違いない。テレビでもネットでも何度も見た…。

「井伊 塚蔵!!
7年前、自らの運転技術の衰えを顧みず、繁華街で暴走した挙句に、幸せに暮らしていた幼いお嬢さんと若いお母さんを轢き殺した。
父親であり夫である男性の御無念いかばかりか。
その直後から救命措置すらせず、隠蔽と欺瞞をひたすら繰り返しご遺族に面と向かっての謝罪や補償をすることもなく、未だ老醜の身を生きながらえている。
よってここに貴様に天誅を下す!!」
東郷先生よりは若い筈なのに、深い皺ばかりが目立つ顔を、井伊は最大限に歪めた。
「待て、待ってくれ、べ、弁護士をよ、呼んでくれ、き、君には、老人を、この国の為に働いて実際無数の勲章を賜った人物への敬意と言うものが…」
加減しつつも、高志は股間を蹴り付けた。
「お前もう黙れ。なにが勲章だ。
そんなものは地獄には持っていけない」
「あぐあ…ぐっ…わ、私はもっと生きる権利…大体…殺人…日本は法治国家…。」
「悪いがもう、俺は一線をとうに超えているのでね。」
今回もこれだ。もっと趣向こらし、苦しめたいが、時間がない。
「成敗!!」
右貫手を突き込む。老人の痩せ腹にはあっさり刺さる。
「うおーっ!!!」
そのまま腸を引き摺り出し、鮮血共々床にぶちまける。
井伊本人はと言えば、死にきれず悶絶…いい気味だ。
よし…執行完了!!
周囲を見渡すと、ここは書斎のようだ。
誇らしげにいくつかの賞状、勲章が飾っている。
全部ぐしゃぐしゃにしてやりたいが、もう時間が無い。
窓を蹴破って裏庭に飛び出した時点で、サイレンが聞こえてきた。
Googleアースで井伊邸自体にはモザイクがかかっていたが、逃走ルートは確認でき、確保している。黒ずくめの服装で返り血は目立たないだろうが、近くの公園の茂みに隠してあったリュックから、着替えを取り出し、公園のトイレ内で着替えつつウエットティッシュで顔や手を丹念に拭く。
井伊邸からここまで10名弱の人間に見られたであろうが、まあ仕方ない。
途中でタクシーを捕まえ、新宿まで。
一旦都心を離れ、町田市に向かおう。

もう、涙が流れることもなかった。

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