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第二節 〜忌溜まりの深森〜
013 亜次元領域
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【前述】
魔法ってなんだ? どういう理屈なの? っていう説明話です。
私の妄想回です。
長い漢字列はルビを振って簡素化していますが、個々の漢字を見て、ああ、こんな感じなのね、と思って下されば嬉しいです。
全体的に小難しい回ですが、『エイ!魔法打っちゃえ』で終わらせたくなくて、こねくり回してしまいました。私の趣味です。
斜め読みでも構いませんので、一読して下さると有り難いです。
――――――――――――――――――
サラッとさっき、僕に運が無いって言ってただろ。傷つくぞ。
その通りだとは思うけど。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
身体に加わった技能・異能について。
先ず、第二基門・並列亜次元領域が先に開放しました。
量子演算フィールドを構築、“高速思考編纂型疑似脳”を展開、同時に生体大脳皮質に古武術系縮地移動法を主体とした関係体術総体の圧縮データーを確認。疑似脳に転送解凍し強制リリース。後に量子演算フィールドにて高速仮想研鑚を執行、完了後ビルドアップし生体へフィードバック。これを繰り返して練度を高めました。
次いで第一基門・並列亜次元領域を開放。同領域在中の万有間構成力制御魔技法を確認し、始動しました。
初級【微増幅及び微斥力】を取得、万有間の引力及び斥力を打撃力・移動速度に変換し、身体基本連動運動にてコントロール可能と判明。
次いで同魔技法初級【流波動】を取得。
続いて第三基門・並列亜次元領域を開放。
身体損傷に対して修復を敢行。細胞核のDNAエイドスにアクセスする量子【魔量子体】を以って損傷前の正常であるべき状態を読み取り、魔量子体の理力【魔理力体】により超高速にて細胞を強制増殖させ修復。加えて骨格も正常位置へと微調整のうえ操作し修復していることを確認。生体再生修復技能を取得し、記述。
ここで各基門・並列亜次元が同軸亜次元へとバージョンアップしました。
次いで第四基門・以降を順次開放。
同時に“高高速自動読取解析及び再構築付与【真魔眼】”を得たことにより構築された量子演算フィールドにおいて【謎の術能】及び【諸事】の解析検証を開始。
各基門の同列“高速思考編纂型疑似脳”が、“同軸多重高速思考攻究編纂型疑似脳”へと更新、同時に各基門間の同軸上同期回路を得、総合ネットワークを構築。各基門の疑似脳への同時同調が可能となり、結果、再演算・最適化・生身体へのフェードバック・ブラッシュアップの誤差ゼロの同期進行を可能とさせました。
と結論 ∮〉
うん、全然わかんない。簡素に。
あ、黙った。凄く考えてる。
……長い。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
公彦の脳および身体の同軸上に亜次元が複数且つ多重的に存在し、各次元には公彦の脳細胞を元とした『量子のふるまい』と酷似した現象である量子演算フィールドにおいて疑似脳が存在しています。
そこではオートメイションで解析と研究とバーチャル実験検証を超高速で行いそれを繰り返しています。
それらは常に生体脳と直接リンクしています。多重の疑似脳を同軸上に持つことでレスポンスゼロ、且つ瞬間単位時間当たりの思考力向上=同軸多重同時高速思考及び考究機能を得ました。
尚、その疑似脳を、同軸多重高速思考攻究編纂型疑似脳と呼称します。
同疑似脳は亜次元 の増加と共に際限なく増加中です 。
と結論 ∮〉
要するにいっぱい脳味噌があって、すんごく色んな事やアンナ事を同時にいっぱい考えられて、それが全て高速オートメーション化しているってこと? 本当か? その割にはバタバタし過ぎじゃね。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
もの凄くぶっちゃけて其の通りです。兎に角データーがありません。現状は中身のない立派な箱でしかありません。ちなみに私の不足するところではありません。
(俺の所為ってことか? そうなのか? )
第一基門・同軸亜次元領域で“万有間構成力制御魔技法”を。
第二基門で身体戦闘技術を。
第三基門で生体再生を。
第四基門から随時に炎弾を含めた謎の術能全般と言語を含む諸事等を司ります。
それら各基門では別個に自動的に研究し、随時実装を可能とさせる諸事自動研鑽研究及び仮想実験実装機関に昇華する予定です。あくまで予定ですけど。今のところは。
ちなみに、これら複数の疑似脳を持つのは“謎の術能”が複雑すぎて、生体脳では処理しきれない為です。
尚、敏感になったとお悩みの臭覚聴覚ですが、第二・第四基門での身体戦闘の一環として、状況における立体的な空間把握と索敵機能を構築する要素の一つではあるものの経験値及び熟練度が足りず、構築できずに疑似的に比較的空間把握しやすい臭覚聴覚にフィチャーして代用としています。
と結論 ∮〉
なんかさ~、削ってくるよね~。
そして凄くカッコよくてヨロシクてよ、なんだけどさ。やっぱり詐欺師的誇大広告っぽいのはなんで?
『ワオ、俺TUEEE~的なブイブイ系のクセに、でもお値段お高いんでしょ~奥様ご心配いりませんわ的なアレ的な“落ち”が在りそうで、結局はアレなんでしょ? 』的な。
ああ、わかってる。練度が足りないんでしょ? 経験が足りないんでしょ? お決まりだよね。結局は課金しろってことね。身を削って。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
(あ、無視されました)
第四基門・同軸亜次元領域で研究研鑚した魔法である炎弾はハナ様が使用された際に表れた魔法陣を【真魔眼】にてフルコピーし解読、順次に精査最適化を行い練度を効果的に上げつつ使用していました。が、最後にサキュバスに使用した際のそれは全く別なものとなります。
初期の炎弾は御指摘の通り下手な3Dアニメの様な見た目であり、炎ではありえない低い温度でした。
(あっ、やっぱりそうなんだ)
そもそも炎とは水や土岩等のような“物質”ではなく、可燃物と酸素とが燃焼という化学反応を起こす“現象”であり、その際に発生するのが光であり熱です。
と結論 ∮〉
確かに異世界モノでは“物質”と“現象”の違いをしっかり分けていないかも。
その手のモノってよく火水風土金の五行相属性とする理論を魔法の基本としてるし、同じ魔法世界だし見た目が中世的で貴族とかいて、痛い日本語の厨二ちっく呪文が顕在な異世界なら当然にありそう。
(後でハナに確認したらその通りだった)
実際、火水風土金って自然科学的にも物理学的にも全く並列することは出来ないんだよな。まあ、全否定するつもりはないけど、要するに思考理論だろ。想像しやすいから採用しているってこと。多分、魔法の基本は想像イメージだから。お約束だよね。
例えとしては適切ではないものの『大田区の町工場の職人さん』が3マイクロメートルという精度をその指だけで実現できるのも理論を知っているから、だけではないって感じ。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
ハナ様の初期の炎弾は見た目の形を再現し、熱量を単純に与えた炎に偽装された“謎物質”でした。
公彦が最後に放った炎弾は、アルミニウム粉末と酸化鉄を謎のエネルギーで顕現化し、現実のものとしました。
次に謎のエネルギーにて物理的に、極小の空気を断熱高圧縮し電子を放出させ、プラズマで発火する高速連続燃焼により超高温爆発を瞬時に起こさせました。
成果物であるテルミット爆発は純粋に物理的な“現象”です。
ちなみに公彦の記憶から参照して新たな魔法陣を構成構築し再現しました。
と結論 ∮〉
そうなんだよな。あの時は焦ってさ、何でもいいから高出力な攻撃をって、そしたら昔テレビで見た面白実験が頭を過ぎって、気づいたら腕を延ばしていた。
似非さんも言ってる、このアルミニウム粉末と酸化鉄も純粋な元素番号を持つ元来の物質ではなく、その性質を与えられただけの謎の“何か”なのだろうと。
あれ? 逆に言えば、性能も本来以上を与えられるし、全く別の未知の性能を与えられる可能性がある。ってこと?
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
確かにその可能性は否定できません。しかしながら人の固定観念・既成認識を覆すことは困難であると思われます。
と結論 ∮〉
人は見た物しか信じない。炎なら紅くメラメラしてなくちゃならないし、だからこそ熱い。それが炎弾ってことか……
すなわち、見たことが有るものしか魔法で再現できない。それを崩すことはリアルで自ら新たに開発し形にするしかないってこと?
そして普通の科学の発展と一緒で次の一歩は大変。ブレイクスルーは至難ってこと。
僕はテルミット反応を知っていた。基礎知識もある。なによりイメージの最高位である事実を知っている。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
今回はたまたま、公彦はテルミット爆発に必要な素材もその性質も配合具合、化学反応の詳細を正確に知っていたから可能でした。しかしそれ以上の効果を求めたい場合は、やはり現実の科学と同じに長い研鑽が必要と成るでしょう。
元の世界 で火薬が発見されたのは九世紀の中国です。最初の火薬は不死を求めた練丹術師が偶然に発見したものです。たまたまです。その後、色々と火薬を使用した兵器は生まれますが、見た目が派手で虚仮脅しとしては優秀でしたが、実際の性能は低く何よりコストが割高で一般化しませんでした。
なにより製造が難しく管理も大変でした。
そして純粋に人を手軽に害する可能性を秘めた破裂・爆発を人々が認識し始めたのは近世にてダイナマイトが開発されてからです。ダイナマイト以降の火薬は第一次世界対戦で安定的に且つ効率よく使用され、使いこなされ、ローコストで殺しまくってからです。
賭けてもいいです。異世界ではダイナマイトは発明されておらず、ダイナマイトに匹敵する破裂・爆発を再現する魔法も存在しないと。
異世界の人々はダイナマイトに代表される大規模な爆発の現象を知らないが故に破裂・爆発の魔法を思いつけない。イメージできない。
何の苦労もなく手に入る謎のエネルギー“魔力”があるが為に、逆に物理の発展を阻害していると。
ただし、その前提は異世界に公彦と同じ様な転移者、転生者がいない事を前提にしています。
知っていますよね、ダイナマイトの生成知識。
( おまえ、怖いこと言うよな。ちなみに俺は何故かYT規約抵触の例の戦略級の化学式と生成に必要な知識も有してるぜ、俺を大量虐殺犯にしたい訳? )
大丈夫です。公彦様の魔法行使範囲は半径1メートルですので、消滅するのも死んじゃうのも公彦様一人だけです。よかったですね。
( ……それってさ、魔法ってさ、俺にとっては役立たずってこと? 異世界冒険談を返して )
そんな事ありませんよ。瞬時に体が治っちゃうとかあるでしょ?
( ハイ! 似非大賢者センセイその点について質問です。
第二基門の生体再生について、細胞核のDNAに働きかけての再生ってのはまあ、良しとして、如何して骨が正しい位置まで移動してくっ着くんですか? )
いい質問ですハム君。……失礼。
従来の身体の細胞はどんな重篤な傷でも元ある形に出来うる限り修復しようとします。骨の正常な位置もDNAは記憶しています。
しかしながら現実ではそれは叶わない。
遅々と細胞分裂による修復を待っている余裕など無く、骨を動かし戻す術もありません。出血多量や感染症、傷が治る前に生命が尽き死亡します。
ですが何度でも言いますが、DNAは完全な修復後の完成図を持っていますし、完全修復を望んでいます。熱望しています。例え欠損した腕だとしても。
魔法とは大雑把には二つに分類できます。【造る】と【操る】機能です。
【造る】とは謎の顕現化魔技能で炎や土や水を疑似的に生成し、使用する事です。炎弾がその例です。
【操る】とは謎の事象遷移魔技能で自然物理の法則を捻じ曲げイイようにする直接的な力です。人体損傷部の修復促進や万有引力の自由操作がその例です。
この二つの万能の力により、 魔性的成果物 を得ます。
【叶えよう】とする意思が全てです。
ただ願う結果を想像する。すると、それを叶えるべく自然万象を捻じ曲げます。正に力業でイイように作り変えるのです。それが魔法です。
ヒドイですよね。理不尽です。それをあなた、公彦は所有している。膨大な量を。おめでとうございます。何故ならその規模の大きさこそが、この世界ではその者を格付けする“価値”なのだから。
( 何だろう。おめでとうって言われたけど、全然嬉しくない。逆に酷く悪趣味な呪言を聞いたような、心がまるで籠もっていない憐れみを掛けられたような、そんな気がするのは )
それらを成し得る基幹エネルギーが“魔力素粒子”です 。
と結論 ∮〉
“魔力素粒子”って結局なんだ? 何処から来てる?
――――――――――――――――
【後述】
物理のお話しも出てきますが、端折ってますし、歪曲もあると思います。総じて『ナンチャッテ』です。
すいません。自分は『雰囲気』って言葉が大好きです。所詮妄想物語です。ファンタジーです。
どうぞ寛容に笑って許して下されば有り難いです。
次話は魔法のみなもと、そのエネルギー源である魔力についてです。
そしてどうして主人公は自身から半径1メートル以内でしか魔法が使えないかを説明します。
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
魔法ってなんだ? どういう理屈なの? っていう説明話です。
私の妄想回です。
長い漢字列はルビを振って簡素化していますが、個々の漢字を見て、ああ、こんな感じなのね、と思って下されば嬉しいです。
全体的に小難しい回ですが、『エイ!魔法打っちゃえ』で終わらせたくなくて、こねくり回してしまいました。私の趣味です。
斜め読みでも構いませんので、一読して下さると有り難いです。
――――――――――――――――――
サラッとさっき、僕に運が無いって言ってただろ。傷つくぞ。
その通りだとは思うけど。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
身体に加わった技能・異能について。
先ず、第二基門・並列亜次元領域が先に開放しました。
量子演算フィールドを構築、“高速思考編纂型疑似脳”を展開、同時に生体大脳皮質に古武術系縮地移動法を主体とした関係体術総体の圧縮データーを確認。疑似脳に転送解凍し強制リリース。後に量子演算フィールドにて高速仮想研鑚を執行、完了後ビルドアップし生体へフィードバック。これを繰り返して練度を高めました。
次いで第一基門・並列亜次元領域を開放。同領域在中の万有間構成力制御魔技法を確認し、始動しました。
初級【微増幅及び微斥力】を取得、万有間の引力及び斥力を打撃力・移動速度に変換し、身体基本連動運動にてコントロール可能と判明。
次いで同魔技法初級【流波動】を取得。
続いて第三基門・並列亜次元領域を開放。
身体損傷に対して修復を敢行。細胞核のDNAエイドスにアクセスする量子【魔量子体】を以って損傷前の正常であるべき状態を読み取り、魔量子体の理力【魔理力体】により超高速にて細胞を強制増殖させ修復。加えて骨格も正常位置へと微調整のうえ操作し修復していることを確認。生体再生修復技能を取得し、記述。
ここで各基門・並列亜次元が同軸亜次元へとバージョンアップしました。
次いで第四基門・以降を順次開放。
同時に“高高速自動読取解析及び再構築付与【真魔眼】”を得たことにより構築された量子演算フィールドにおいて【謎の術能】及び【諸事】の解析検証を開始。
各基門の同列“高速思考編纂型疑似脳”が、“同軸多重高速思考攻究編纂型疑似脳”へと更新、同時に各基門間の同軸上同期回路を得、総合ネットワークを構築。各基門の疑似脳への同時同調が可能となり、結果、再演算・最適化・生身体へのフェードバック・ブラッシュアップの誤差ゼロの同期進行を可能とさせました。
と結論 ∮〉
うん、全然わかんない。簡素に。
あ、黙った。凄く考えてる。
……長い。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
公彦の脳および身体の同軸上に亜次元が複数且つ多重的に存在し、各次元には公彦の脳細胞を元とした『量子のふるまい』と酷似した現象である量子演算フィールドにおいて疑似脳が存在しています。
そこではオートメイションで解析と研究とバーチャル実験検証を超高速で行いそれを繰り返しています。
それらは常に生体脳と直接リンクしています。多重の疑似脳を同軸上に持つことでレスポンスゼロ、且つ瞬間単位時間当たりの思考力向上=同軸多重同時高速思考及び考究機能を得ました。
尚、その疑似脳を、同軸多重高速思考攻究編纂型疑似脳と呼称します。
同疑似脳は亜次元 の増加と共に際限なく増加中です 。
と結論 ∮〉
要するにいっぱい脳味噌があって、すんごく色んな事やアンナ事を同時にいっぱい考えられて、それが全て高速オートメーション化しているってこと? 本当か? その割にはバタバタし過ぎじゃね。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
もの凄くぶっちゃけて其の通りです。兎に角データーがありません。現状は中身のない立派な箱でしかありません。ちなみに私の不足するところではありません。
(俺の所為ってことか? そうなのか? )
第一基門・同軸亜次元領域で“万有間構成力制御魔技法”を。
第二基門で身体戦闘技術を。
第三基門で生体再生を。
第四基門から随時に炎弾を含めた謎の術能全般と言語を含む諸事等を司ります。
それら各基門では別個に自動的に研究し、随時実装を可能とさせる諸事自動研鑽研究及び仮想実験実装機関に昇華する予定です。あくまで予定ですけど。今のところは。
ちなみに、これら複数の疑似脳を持つのは“謎の術能”が複雑すぎて、生体脳では処理しきれない為です。
尚、敏感になったとお悩みの臭覚聴覚ですが、第二・第四基門での身体戦闘の一環として、状況における立体的な空間把握と索敵機能を構築する要素の一つではあるものの経験値及び熟練度が足りず、構築できずに疑似的に比較的空間把握しやすい臭覚聴覚にフィチャーして代用としています。
と結論 ∮〉
なんかさ~、削ってくるよね~。
そして凄くカッコよくてヨロシクてよ、なんだけどさ。やっぱり詐欺師的誇大広告っぽいのはなんで?
『ワオ、俺TUEEE~的なブイブイ系のクセに、でもお値段お高いんでしょ~奥様ご心配いりませんわ的なアレ的な“落ち”が在りそうで、結局はアレなんでしょ? 』的な。
ああ、わかってる。練度が足りないんでしょ? 経験が足りないんでしょ? お決まりだよね。結局は課金しろってことね。身を削って。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
(あ、無視されました)
第四基門・同軸亜次元領域で研究研鑚した魔法である炎弾はハナ様が使用された際に表れた魔法陣を【真魔眼】にてフルコピーし解読、順次に精査最適化を行い練度を効果的に上げつつ使用していました。が、最後にサキュバスに使用した際のそれは全く別なものとなります。
初期の炎弾は御指摘の通り下手な3Dアニメの様な見た目であり、炎ではありえない低い温度でした。
(あっ、やっぱりそうなんだ)
そもそも炎とは水や土岩等のような“物質”ではなく、可燃物と酸素とが燃焼という化学反応を起こす“現象”であり、その際に発生するのが光であり熱です。
と結論 ∮〉
確かに異世界モノでは“物質”と“現象”の違いをしっかり分けていないかも。
その手のモノってよく火水風土金の五行相属性とする理論を魔法の基本としてるし、同じ魔法世界だし見た目が中世的で貴族とかいて、痛い日本語の厨二ちっく呪文が顕在な異世界なら当然にありそう。
(後でハナに確認したらその通りだった)
実際、火水風土金って自然科学的にも物理学的にも全く並列することは出来ないんだよな。まあ、全否定するつもりはないけど、要するに思考理論だろ。想像しやすいから採用しているってこと。多分、魔法の基本は想像イメージだから。お約束だよね。
例えとしては適切ではないものの『大田区の町工場の職人さん』が3マイクロメートルという精度をその指だけで実現できるのも理論を知っているから、だけではないって感じ。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
ハナ様の初期の炎弾は見た目の形を再現し、熱量を単純に与えた炎に偽装された“謎物質”でした。
公彦が最後に放った炎弾は、アルミニウム粉末と酸化鉄を謎のエネルギーで顕現化し、現実のものとしました。
次に謎のエネルギーにて物理的に、極小の空気を断熱高圧縮し電子を放出させ、プラズマで発火する高速連続燃焼により超高温爆発を瞬時に起こさせました。
成果物であるテルミット爆発は純粋に物理的な“現象”です。
ちなみに公彦の記憶から参照して新たな魔法陣を構成構築し再現しました。
と結論 ∮〉
そうなんだよな。あの時は焦ってさ、何でもいいから高出力な攻撃をって、そしたら昔テレビで見た面白実験が頭を過ぎって、気づいたら腕を延ばしていた。
似非さんも言ってる、このアルミニウム粉末と酸化鉄も純粋な元素番号を持つ元来の物質ではなく、その性質を与えられただけの謎の“何か”なのだろうと。
あれ? 逆に言えば、性能も本来以上を与えられるし、全く別の未知の性能を与えられる可能性がある。ってこと?
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
確かにその可能性は否定できません。しかしながら人の固定観念・既成認識を覆すことは困難であると思われます。
と結論 ∮〉
人は見た物しか信じない。炎なら紅くメラメラしてなくちゃならないし、だからこそ熱い。それが炎弾ってことか……
すなわち、見たことが有るものしか魔法で再現できない。それを崩すことはリアルで自ら新たに開発し形にするしかないってこと?
そして普通の科学の発展と一緒で次の一歩は大変。ブレイクスルーは至難ってこと。
僕はテルミット反応を知っていた。基礎知識もある。なによりイメージの最高位である事実を知っている。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
今回はたまたま、公彦はテルミット爆発に必要な素材もその性質も配合具合、化学反応の詳細を正確に知っていたから可能でした。しかしそれ以上の効果を求めたい場合は、やはり現実の科学と同じに長い研鑽が必要と成るでしょう。
元の世界 で火薬が発見されたのは九世紀の中国です。最初の火薬は不死を求めた練丹術師が偶然に発見したものです。たまたまです。その後、色々と火薬を使用した兵器は生まれますが、見た目が派手で虚仮脅しとしては優秀でしたが、実際の性能は低く何よりコストが割高で一般化しませんでした。
なにより製造が難しく管理も大変でした。
そして純粋に人を手軽に害する可能性を秘めた破裂・爆発を人々が認識し始めたのは近世にてダイナマイトが開発されてからです。ダイナマイト以降の火薬は第一次世界対戦で安定的に且つ効率よく使用され、使いこなされ、ローコストで殺しまくってからです。
賭けてもいいです。異世界ではダイナマイトは発明されておらず、ダイナマイトに匹敵する破裂・爆発を再現する魔法も存在しないと。
異世界の人々はダイナマイトに代表される大規模な爆発の現象を知らないが故に破裂・爆発の魔法を思いつけない。イメージできない。
何の苦労もなく手に入る謎のエネルギー“魔力”があるが為に、逆に物理の発展を阻害していると。
ただし、その前提は異世界に公彦と同じ様な転移者、転生者がいない事を前提にしています。
知っていますよね、ダイナマイトの生成知識。
( おまえ、怖いこと言うよな。ちなみに俺は何故かYT規約抵触の例の戦略級の化学式と生成に必要な知識も有してるぜ、俺を大量虐殺犯にしたい訳? )
大丈夫です。公彦様の魔法行使範囲は半径1メートルですので、消滅するのも死んじゃうのも公彦様一人だけです。よかったですね。
( ……それってさ、魔法ってさ、俺にとっては役立たずってこと? 異世界冒険談を返して )
そんな事ありませんよ。瞬時に体が治っちゃうとかあるでしょ?
( ハイ! 似非大賢者センセイその点について質問です。
第二基門の生体再生について、細胞核のDNAに働きかけての再生ってのはまあ、良しとして、如何して骨が正しい位置まで移動してくっ着くんですか? )
いい質問ですハム君。……失礼。
従来の身体の細胞はどんな重篤な傷でも元ある形に出来うる限り修復しようとします。骨の正常な位置もDNAは記憶しています。
しかしながら現実ではそれは叶わない。
遅々と細胞分裂による修復を待っている余裕など無く、骨を動かし戻す術もありません。出血多量や感染症、傷が治る前に生命が尽き死亡します。
ですが何度でも言いますが、DNAは完全な修復後の完成図を持っていますし、完全修復を望んでいます。熱望しています。例え欠損した腕だとしても。
魔法とは大雑把には二つに分類できます。【造る】と【操る】機能です。
【造る】とは謎の顕現化魔技能で炎や土や水を疑似的に生成し、使用する事です。炎弾がその例です。
【操る】とは謎の事象遷移魔技能で自然物理の法則を捻じ曲げイイようにする直接的な力です。人体損傷部の修復促進や万有引力の自由操作がその例です。
この二つの万能の力により、 魔性的成果物 を得ます。
【叶えよう】とする意思が全てです。
ただ願う結果を想像する。すると、それを叶えるべく自然万象を捻じ曲げます。正に力業でイイように作り変えるのです。それが魔法です。
ヒドイですよね。理不尽です。それをあなた、公彦は所有している。膨大な量を。おめでとうございます。何故ならその規模の大きさこそが、この世界ではその者を格付けする“価値”なのだから。
( 何だろう。おめでとうって言われたけど、全然嬉しくない。逆に酷く悪趣味な呪言を聞いたような、心がまるで籠もっていない憐れみを掛けられたような、そんな気がするのは )
それらを成し得る基幹エネルギーが“魔力素粒子”です 。
と結論 ∮〉
“魔力素粒子”って結局なんだ? 何処から来てる?
――――――――――――――――
【後述】
物理のお話しも出てきますが、端折ってますし、歪曲もあると思います。総じて『ナンチャッテ』です。
すいません。自分は『雰囲気』って言葉が大好きです。所詮妄想物語です。ファンタジーです。
どうぞ寛容に笑って許して下されば有り難いです。
次話は魔法のみなもと、そのエネルギー源である魔力についてです。
そしてどうして主人公は自身から半径1メートル以内でしか魔法が使えないかを説明します。
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
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