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チームワークと絆と優しさと
しおりを挟む「へー、死んだんだ、まぁ嫌いだったからどうでもいいや」
「ある意味清々したかも」
そう言って笑っている生徒は人間なのかと疑うぐらい恐ろしかった。人の死を軽々しく笑われたのが悔しくて、悲しくて仕方なかった。それよりも生徒をこんな風に思ってしまう自分が許せなかった。
「…あ、」
「あれ、珍しいですね。安田先生がうたた寝なんて」
目が覚めると、沢山の陳列されたモニターの光が目を刺した。眩しさから逃げるように1度体を伸ばすと、そこに松本先生が本片手に立っていた。
手に持っている本は年季の入っていて、沢山読まれているようだった。未だに高鳴る鼓動を抑えるように息を吸う。
「…久しぶりに夢を見ました。未だに心臓が落ち着いてません」
「あの時のですか、私もよく見ます。結構心臓に悪いですよね」
まるでご近所さん同士の会話のような気軽さに
いつの間にか心臓が落ち着いてきた。
するとモニターに映る生徒達が一人足りない事、松本先生に外の寒い空気が纏わりついているのに気づいた。
「おや、松本先生、生徒達と会ってきたんですか?」
「はい、様子見てきました。凛さんがピリピリしてまして、皐月さんと言い争ってたので止めてきました。まあ、凛さん、どうも気に食わなかったのか皆置いて走り出してましたけども、」
「…その調子じゃあ、皆バラバラにここにきそうですねぇ」
困ったように笑うと、つられて松本先生も眉を下げて笑った。話す事が無くなり、俺はモニターに向かうと松本先生は近くの椅子に座り、本を読み始めた。
「…読書、好きなんですね」
俺は振り返ってそう言うと、松本先生は儚く笑って言った。
「えぇ、本は、孤独を埋めてくれるんです」
*
「…思春期少女はめんどくさいなぁ…」
「ちょっと!やめなって…!」
花火が無意識に小さく呟くと闇桜が焦ったように止めにかかった。花火は「あっ、」と声を上げ恥ずかしそうに口を手で覆った。
「…とりあえず凛追いかける…?」
一樹がそう言うと生徒達は静まりかえった。
誰も何も言わず、目を逸らしている。
そんな中涼太が言った。
「…別に追いかけなくていいだろ。めんどくさい」
冷淡に放たれたその言葉に、皆何も言わなかった。それをわかっていたかのように涼太は歩き出した。立ち尽くす生徒達をよそに、一樹は涼太を追いかけた。
「ちょ、まてって!」
2人が闇に消え、この場には8人が残った。
皆どうしようかと目を合わせていた。
「…じゃあ、私も先行ってるわ」
千秋はそう言うと、手を振りながら歩き出した。生徒達はただ、背中を見つめていた。
すると「じゃあ俺も」「私も」と、どんどん生徒達は別れて歩いていった。
「…まーじかよ…」
花火と闇桜はたった2人残され、立ち尽くしていた。闇桜はただ無言で俯いていて、気まずい空気が流れ始めた。
「…とりあえず、私たちも進むかい?」
「………」
「あっ、いや、なんかすみません、とりあえず私は行ってるね」
闇桜は何処か遠くを見つめていて、魂がこの場に無いような様子だった。何処か恐怖を覚え、逃げ出すように花火はその場を立ち去った。
ただ1人、闇桜だけが残った。
「…同じクラスなのに、チームワークも絆も優しさも、何もないもね」
何かを諦めたような目で闇桜は呟いた。
感情を無くしたような声だった。
「…私は悪くないよね、そう、うん。私は悪くない、悪いのは皆、殺したって大丈夫なんだ」
「はははっ、想像するだけで面白いなぁ」
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