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懐かしい声、懐かしい光景
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「じゃあ、また後で!」
赤目は手を振ると笑顔で穴に飛び込んでいった。絆は飛び込むことなく立ち止まった。
「絆?」
坂木先生はそう尋ねると、絆は笑って叫んだ。
「先生!!大好きでーーす!!」
絆は恥ずかしそうに、嬉しそうに笑っていた。
(芽依先輩の言ったこと、守ったよ!)
誇らしく絆はそう思うと、穴に飛び込んでいった。
「ふふ、なんだそれ」
坂木先生は照れ隠しのように笑った。
この場には坂木先生と林道先生が残った。どうしようもない空虚感と、全てが終わっても尚残る緊張感がまとわりついている。
「…はあ、全てが終わった」
坂木先生はそう呟くと、後ろから林道先生がひょっこりと顔を出した。
「先生、お疲れ様でした。結構長い物語でしたね。」
「そうですね、長かった。でも、俺も、皆も成長出来た良い経験だったかもしれません。」
坂木先生は凝り固まった体を伸ばしながら言った。その目は、何処か満足気だった。
「…先生、覚えてます?あの日死ぬ前に言った事。」
「えぇ、覚えてますよ。全てが終わったら、屋上でサイダーを飲もうって話でしょう?」
「…ふふ、良かった。じゃあ、行きましょう!皆が待ってる」
林道先生が坂木先生の手を引っ張ると、
真っ黒な穴の前に立つ。坂木先生は1度景色を見つめ「ありがとう。」と1つ礼をした。
「いっせーのでで、飛んでみようぜ?」
坂木先生は、あの時よりも幸せそうに笑った。___俺が見たかった、先生の本当の笑顔。
「いいですね、いきますよ!」
最後ぐらいはあの時以上の最高な笑顔で
『いっせーのーで!』
*
ぱちっ。
目が覚めるとそこは、見慣れた天井に、見慣れた部屋、自分の家だった。
なんか、長い夢を見ていた気がする。
花火は重い体を起こして立ち上がった。
カレンダーは3月14日水曜日。
ずっと身につけていたロケットペンダントは無かった
「おはよう、早く行かないと遅刻するよ」
母が居た。朝食をテーブルに綺麗に並べて、懐かしい顔で笑っている。そう言えば着ていたパジャマも、あの時のだ。この部屋の壁紙も、テレビも、まだ寝ている父も、あの時のままだ。
そうか、帰ってきたんだ。
強烈で、本能的な喜びが体を包んだ。
早く朝ごはんをかきこんで、すぐ様服を着替え、身支度し、家を出た。
「ああああああ、懐かしい、凄い…」
周りの景色が、世に言うファンタジーじゃない、ただの普通の景色だ。
木々が揺れ動いて、心地よい風が頬をくすぐる。いつもならどうとも思わない景色が全て輝いて見えた。興奮を抑えきれず走り出すと、アスファルトの硬い感触がまた帰ってきたと思わせる。いつもの待ち合わせ場所に行くと、遠くに夏目の姿が見えた。
「あ、夏目!夏目~~!」
うるさいぐらいに叫んで手を振った。
そんな私に夏目は気づいたのか、走ってこちらまで来てくれた。
「は、花火!久しぶり!久しぶり!」
興奮していたのは夏目も同じようで、
顔が赤くしてハイタッチをした。高鳴る鼓動を抑えながら、2人で学校へと向かった。
*
私達は学校に入ると懐かしい光景に涙ぐんだ。低学年の子は元気に先生に挨拶をしたり、ホールに飾られている生徒の作品も何処が懐かしい。階段を登り、6年2組の教室の前に私達は立った。少し、中がざわついていた。
「はよーございまー」
私は緊張を隠すように小さく挨拶をして入っていく。夏目もそれについていくと、他の皆と目が合った。
目を白黒とさせている皆の言いたいことは、何となく分かる。
「…覚えてる?」
友樹は恐る恐る私達に聞いた。
私達は顔を見合わせて
「「もちろん!!」」
と答えた。皆顔を真っ赤に染まらせて
「わあああああ!」と迷惑にならない程度に叫んだ。帰ってきたんだ。本当に帰ってきたんだ!と皆嬉しそうにハイタッチしている。
そんな事をしているうちに、朝自習の時間も終わりが近づいた。そろそろ、先生がやってくる。高鳴る鼓動を紛らわすかのように皆顔を見合わせた。
ガラッと扉の開く音が聞こえた。
『…!先生!!』
瞬時に皆がそう叫ぶと、坂木先生はきょとんとしながらも、笑った。
「ただいま。そして、おかえり」
坂木先生はそう言うと、皆感情を高ぶらせて叫んだ。「うるさい、うるさいよ」と注意しながら笑う先生も、何処か嬉しそうだった。
あのRPGの世界での事は私達以外覚えていないらしい。それでも、このクラスだけの秘密が出来て、嬉しかった。
その日、坂木先生は卒業までの2日間の中で思い出を沢山作ろう!と、色々な話をしてくれた。笑いあり、涙ありの先生の無駄話はやはり面白かった。
その後、林道先生も理科の授業にやってきた。「うわあ、久しぶりに見たなあこの感じ」と嬉しそうに話をしてくれた。
その後、林道先生からの提案で坂木先生に向けてビデオメッセージを撮ることにした。まだ不慣れな英語ででのメッセージを坂木先生に向けてカメラの前で言っていく。
「よし、後で先生が編集して、先生に見せよう!」
林道先生はそう言うとそそくさとカメラを確認していた。
そうして、私達の一日が終わった。
*
次の日、まだ昨日のほとぼりが冷めない私達は、RPGの世界の話でいっぱいだった。
今日は6年生最後の日ということで短学活が多い。そんな中、林道先生がパソコンを抱えてやってきた。
「坂木先生、見せたいものがあります」
何かを企む子供のように無邪気に林道先生は笑った。テレビを颯爽と剛は運んでくると、手早にパソコンをテレビに繋げた。
「生徒達から先生へのメッセージです!」
ぴっ、とリモコンをテレビに向けて発信した。一人一人、個性の表れる登場をし、メッセージを言っていく。坂木先生は嬉しそうに笑いながら、眺めていた。
ビデオが綺麗に終わると、教室は拍手で溢れかえった。
「わあ、嬉しいなあ。ありがとう皆さん」
坂木先生は嬉しそうに礼をした。
そのビデオメッセージが入ったDVDは坂木先生に渡された。
そのあとは、最後の日という事もあって、ビンゴ大会や色々な遊びをして楽しんだ。
小学校最後の給食も、噛み締めるようにして味わった。でもやっぱり卒業式の準備をしていると、どうも心寂しくなるものだった。
「…もう、卒業かあ」
絆がそう呟くと赤目はすかざず言葉を発した。
「そーんな、気に病むなって!もう会えない訳じゃ無いんだしさぁ!」
明るく笑う赤目の姿は眩しかった。
その言葉に、絆は背中を押された気がした。
「…ふふ、そうだね。」
そうして、6年生最後の一日は終わりを告げた。
赤目は手を振ると笑顔で穴に飛び込んでいった。絆は飛び込むことなく立ち止まった。
「絆?」
坂木先生はそう尋ねると、絆は笑って叫んだ。
「先生!!大好きでーーす!!」
絆は恥ずかしそうに、嬉しそうに笑っていた。
(芽依先輩の言ったこと、守ったよ!)
誇らしく絆はそう思うと、穴に飛び込んでいった。
「ふふ、なんだそれ」
坂木先生は照れ隠しのように笑った。
この場には坂木先生と林道先生が残った。どうしようもない空虚感と、全てが終わっても尚残る緊張感がまとわりついている。
「…はあ、全てが終わった」
坂木先生はそう呟くと、後ろから林道先生がひょっこりと顔を出した。
「先生、お疲れ様でした。結構長い物語でしたね。」
「そうですね、長かった。でも、俺も、皆も成長出来た良い経験だったかもしれません。」
坂木先生は凝り固まった体を伸ばしながら言った。その目は、何処か満足気だった。
「…先生、覚えてます?あの日死ぬ前に言った事。」
「えぇ、覚えてますよ。全てが終わったら、屋上でサイダーを飲もうって話でしょう?」
「…ふふ、良かった。じゃあ、行きましょう!皆が待ってる」
林道先生が坂木先生の手を引っ張ると、
真っ黒な穴の前に立つ。坂木先生は1度景色を見つめ「ありがとう。」と1つ礼をした。
「いっせーのでで、飛んでみようぜ?」
坂木先生は、あの時よりも幸せそうに笑った。___俺が見たかった、先生の本当の笑顔。
「いいですね、いきますよ!」
最後ぐらいはあの時以上の最高な笑顔で
『いっせーのーで!』
*
ぱちっ。
目が覚めるとそこは、見慣れた天井に、見慣れた部屋、自分の家だった。
なんか、長い夢を見ていた気がする。
花火は重い体を起こして立ち上がった。
カレンダーは3月14日水曜日。
ずっと身につけていたロケットペンダントは無かった
「おはよう、早く行かないと遅刻するよ」
母が居た。朝食をテーブルに綺麗に並べて、懐かしい顔で笑っている。そう言えば着ていたパジャマも、あの時のだ。この部屋の壁紙も、テレビも、まだ寝ている父も、あの時のままだ。
そうか、帰ってきたんだ。
強烈で、本能的な喜びが体を包んだ。
早く朝ごはんをかきこんで、すぐ様服を着替え、身支度し、家を出た。
「ああああああ、懐かしい、凄い…」
周りの景色が、世に言うファンタジーじゃない、ただの普通の景色だ。
木々が揺れ動いて、心地よい風が頬をくすぐる。いつもならどうとも思わない景色が全て輝いて見えた。興奮を抑えきれず走り出すと、アスファルトの硬い感触がまた帰ってきたと思わせる。いつもの待ち合わせ場所に行くと、遠くに夏目の姿が見えた。
「あ、夏目!夏目~~!」
うるさいぐらいに叫んで手を振った。
そんな私に夏目は気づいたのか、走ってこちらまで来てくれた。
「は、花火!久しぶり!久しぶり!」
興奮していたのは夏目も同じようで、
顔が赤くしてハイタッチをした。高鳴る鼓動を抑えながら、2人で学校へと向かった。
*
私達は学校に入ると懐かしい光景に涙ぐんだ。低学年の子は元気に先生に挨拶をしたり、ホールに飾られている生徒の作品も何処が懐かしい。階段を登り、6年2組の教室の前に私達は立った。少し、中がざわついていた。
「はよーございまー」
私は緊張を隠すように小さく挨拶をして入っていく。夏目もそれについていくと、他の皆と目が合った。
目を白黒とさせている皆の言いたいことは、何となく分かる。
「…覚えてる?」
友樹は恐る恐る私達に聞いた。
私達は顔を見合わせて
「「もちろん!!」」
と答えた。皆顔を真っ赤に染まらせて
「わあああああ!」と迷惑にならない程度に叫んだ。帰ってきたんだ。本当に帰ってきたんだ!と皆嬉しそうにハイタッチしている。
そんな事をしているうちに、朝自習の時間も終わりが近づいた。そろそろ、先生がやってくる。高鳴る鼓動を紛らわすかのように皆顔を見合わせた。
ガラッと扉の開く音が聞こえた。
『…!先生!!』
瞬時に皆がそう叫ぶと、坂木先生はきょとんとしながらも、笑った。
「ただいま。そして、おかえり」
坂木先生はそう言うと、皆感情を高ぶらせて叫んだ。「うるさい、うるさいよ」と注意しながら笑う先生も、何処か嬉しそうだった。
あのRPGの世界での事は私達以外覚えていないらしい。それでも、このクラスだけの秘密が出来て、嬉しかった。
その日、坂木先生は卒業までの2日間の中で思い出を沢山作ろう!と、色々な話をしてくれた。笑いあり、涙ありの先生の無駄話はやはり面白かった。
その後、林道先生も理科の授業にやってきた。「うわあ、久しぶりに見たなあこの感じ」と嬉しそうに話をしてくれた。
その後、林道先生からの提案で坂木先生に向けてビデオメッセージを撮ることにした。まだ不慣れな英語ででのメッセージを坂木先生に向けてカメラの前で言っていく。
「よし、後で先生が編集して、先生に見せよう!」
林道先生はそう言うとそそくさとカメラを確認していた。
そうして、私達の一日が終わった。
*
次の日、まだ昨日のほとぼりが冷めない私達は、RPGの世界の話でいっぱいだった。
今日は6年生最後の日ということで短学活が多い。そんな中、林道先生がパソコンを抱えてやってきた。
「坂木先生、見せたいものがあります」
何かを企む子供のように無邪気に林道先生は笑った。テレビを颯爽と剛は運んでくると、手早にパソコンをテレビに繋げた。
「生徒達から先生へのメッセージです!」
ぴっ、とリモコンをテレビに向けて発信した。一人一人、個性の表れる登場をし、メッセージを言っていく。坂木先生は嬉しそうに笑いながら、眺めていた。
ビデオが綺麗に終わると、教室は拍手で溢れかえった。
「わあ、嬉しいなあ。ありがとう皆さん」
坂木先生は嬉しそうに礼をした。
そのビデオメッセージが入ったDVDは坂木先生に渡された。
そのあとは、最後の日という事もあって、ビンゴ大会や色々な遊びをして楽しんだ。
小学校最後の給食も、噛み締めるようにして味わった。でもやっぱり卒業式の準備をしていると、どうも心寂しくなるものだった。
「…もう、卒業かあ」
絆がそう呟くと赤目はすかざず言葉を発した。
「そーんな、気に病むなって!もう会えない訳じゃ無いんだしさぁ!」
明るく笑う赤目の姿は眩しかった。
その言葉に、絆は背中を押された気がした。
「…ふふ、そうだね。」
そうして、6年生最後の一日は終わりを告げた。
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