上 下
1 / 1

ゴミ箱と世代交代

しおりを挟む
世代交代も近いもんだなあと思った。
いや、近いどころじゃない、もう世代交代だ。
陽の目を中心に浴びるのは、高3の私じゃなく下の子たち。それを影で支え、導いていけるのは導き、残せるものは残していかないといけない。

まあ、私も目立ちたがり屋なので陽の目を浴びれる機会があるならちゃっかり貰ってしまうだろう。

学校祭が近い。我が演劇部は学祭公演に向け稽古が始まった。学祭公演は、下の子中心で行う。私はその間大会に向けた台本作成委員会を行う。ただ1人でパソコンに向き合うだけだけど。

部室の隣のパソコン室で、1人、パソコンと睨めっこ。前公演で台本の完成が間に合わず、泣く泣くボツにされた台本を久しぶりに読み返して、「なんだこれは」とため息を着く。台本をしばらく置いておくこと、これがいかに大事で客観視出来るのかがよくわかった。

長いため息と一緒に、「こんなのを書いていたんだ…」と乗らない気分を帰るためにYouTubeで推しの動画を流す。

見入らないように、パソコンのすぐ下に置いた。見入った。下だもん。

最近踊り手にハマっている。音楽とダンスで1つのストーリーを表現し作り出す踊ってみた動画が、なかなか面白い。演劇に通づるものと、学びになるものが多くてそう言った面でもついつい見ちゃう。 

見入ってたら部活の時間も終わってしまうので、とりあえず見るのを止める。誰もいない部屋は静か。薄暗い、パソコンが無機質に並ぶ部屋で1人は…なんだか落ちつく。

…そこの貴方、1人は寂しいって言い出すと思ったでしょ。図星ですよ図星。

まあ、寂しいのも事実。だから、隣の部室に1番近いパソコンの席で作業をする。微かに後輩の声が聞こえてきて、やっぱり、"世代交代"を感じる。

もう私は用済みだなあ、なんてパソコンと睨めっこしていたら後輩がいそいそとやってきた。

「いいっすね、ここ」

雰囲気の事を言ってるんだろう。パソコンの並ぶ薄暗い部屋は、ハッカーみたいでかっこいい。
そしてパソコンの画面を見て

「…重い………」

と呟いてた。パソコンには私の死生観やら高校演劇の事やら色々殴り打ちしていた言葉の羅列。

「重いですよぉ」

自分でも何書いてんだ、と笑う。
すると、後輩もう1人も部屋に入ってきた。しばらくパソコン室をうろうろし、壁に貼られたプリントを読んだり、うろうろしたり、読んだり。しばらくしてから「ほら、戻ってやるよ!(稽古)」といそいそ帰っていった。

なんだか、その姿が可愛らしくて、後輩という生き物は愛おしいものだと改めて思った。そして、世代交代があろうがなかろうが、私は腐っても彼女らの先輩で、後輩は、腐ってても私は先輩なことに変わりはないんだなあ、としみじみしながら、またパソコンに向かった。




ゴミ箱に、世代交代が1つ。



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...