とあるクラスの勇者伝説

倉箸なーこ

文字の大きさ
9 / 11

毒を以て毒を制す

しおりを挟む
「…ちっ!せめて死者だけは出さないように頑張りますよ!」

安田先生はそう叫ぶと、毒々しい砲丸を作り上げ、思い切り天井目掛けて投げ飛ばした。それは天井を突き破り、大きな穴から空が顔をのぞかせた。充満する煙が薄くなっていく。

「君達、頑張れますか?」

意識のある4人に、安田先生は問う。
4人共、すぐさま頷いた。

「将太と絆は、皆の脈確認や安全確保を頼みます。椿先生と国木田先生は、俺と一緒にアイツを倒しましょう」

安田先生は手短に指示をすると、将太と絆は意識の無い先生や生徒の脈を確認し始めた。薄らながら、皆にちゃんと脈はあり、2人はほっと胸を撫で下ろした。

「空気穴…か、外に出れば良いんですか?」

椿先生は察したように訊ねた。安田先生はニヤリと笑う。

「流石だね椿先生。その通り!」

そう言って大きな穴まで飛び上がった瞬間、辺りの景色が一瞬にして変わった。無機質な階段の踊り場が、どこにでもある様な、教室へと変貌した。いや、見覚えのありすぎる、現実世界での3年A組だ。宙に浮いた体が、重力と共に下に落ちる。

「いって…!今変えるか!?卑怯だな全く…」

安田先生は腰を擦りながら呟いた。同じように、椿先生も国木田先生も痛そうに目を細め、将太と絆は生徒達と先生方の安全確認を行っている。

「ちょっと…14人俺たちで守り抜けるか…?」

翔太が、意識の無い14人を、壁によしかかるように寝かせながら呟いた。大人7人というだけでもしんどいのに、それに中学3年生7人をプラスされたら体力面的にも辛くなる。

「…俺達なら行けるだろ、期待に応えてやらねぇと」

絆は、意を決したような瞳で言った。
「そっか、天才だもんな!」と将太に自信が宿り始めた時、
絆と将太のすぐ後ろに、彼が現れた。彼は大振りに手を振り上げる。

「まっ…じか!」

将太は自分の持っていた杖で、殴り掛かりに来た彼の手を防御した。みし、と杖が軋む程の力を感じ、冷や汗が出る。

「…流石バスケ部。中々の力だねぇ」

彼はにやりと、安田先生をちょっと悪くしたような笑みで笑った。絆はすかさず彼の脛をねらい、蹴りを入れた。

「おらっ!」

「い”っ…で!!!」

彼は膝から崩れ落ちた。その瞬間に国木田先生が上から舞い込むように彼を蹴り飛ばした。

「お前の相手は俺達なんですよ!」

「くそ…!んな事知るか!だったらアイツら守り抜いてみろ!」

「言われなくても分かってますわ!」

彼は体制を整え、毒を作り出すと、弾幕の如く毒を撃ち放った。国木田先生は軽々しく毒玉を避けながら、左手にはめていた装具のストッパーを右手で外し、彼に狙いを定めて銃弾を数発撃ち放った。 

「どうせなら盛大にやるか!教室もろとも吹っ飛んじまえ!」

国木田先生はそう叫ぶと、手榴弾の安全ピンを素早く抜き取り、彼目掛けて放り投げた。
「皆伏せて!」と叫ぶと避難訓練のように机の下に隠れる。

「いやいやいや伏せで済むかコレ!?」

と、椿先生はすかさず生徒達の前に駆け出し、結界を貼った。
ドォォォン!と地鳴りと光が瞬く。
結界越しでもじんわりと熱が伝わって、絆はその威力に身を震わせた。

「さて!殺れましたか!?」

国木田先生は煙をかき分けながら言った。
「まぁ、これで殺れたらつまらないですがね!」と後付けのように笑う。薄れゆく煙に人影が見えてきて、やっと姿が確認出来るようになった時、皆の視界に映ったのは、傷一つ無く笑う彼だった。

「どうやら俺の能力では相性が悪いようだ」

国木田先生は、悔しそうに目をすぼめて言った。 

「相性以前の問題だけどな。淡白で面白味のない攻撃だ」

あんな爆撃をくらったにも関わらず、彼は淡々とそう言いながら、わざとらしくズボンのホコリを叩き落とした。

「相性か…松本先生のように、かさえ分かれば…」

絆は先程のことを思い出しながら呟いた。そう言えば如月先生は「水の匂いがする」って言っていたな。俺にはわからないけど。多分、鼻が人並み以上に良いのだろうか。

「…うーん、それは大丈夫だな。アイツは毒しか操れないよ」

国木田先生が言った。「…?なんで分かるんですか?」と絆は疑問を浮かべて訊ねた。

「先生ね、目が良いんだよ。目を凝らせば人の中を流れる物や、臓器の具合、細胞まで見れる。アイツの中には禍々しい毒しか流れていない。毒が血の役割さえしてる。毒で出来た人間かもねぇ」

国木田先生は赤い目を一瞬黄色くさせて、言った。

「俺の能力はなんだけどさぁ、鋼って確か毒には強かったはずなんだけど…何か違う毒なんだろうな」

「…あっ、なるほどなぁ!」

安田先生が、いきなり納得したように声を上げた。
皆が、「何があった」と安田先生を見る。
安田先生は、にやりと笑った。

「どっかのことわざであったじゃないですか、『毒を以て毒を制す』って…つまり…」

皆の空気がざわついた。
国木田先生の能力が効かなかったのも、彼が頑なにつまり

「…気づいたようだね。俺は制される毒の方だから、制すお前安田先生の方が強くなる。だけどお前らとだったら、何にでもなれる俺の毒の方が強くなる。だから先に弱っちいのから殺してやろうとしたのに…おもしくねぇな」

彼は、つまらなさそうに呟いた。

「それは悪かったな。でもこんな所で詰む訳にも行かねぇからぱっぱと終わらせてやりますよ」

安田先生は周りに毒を纏わせながら言った。
椿先生は、意識の無い14人に毒を吸わせないように魔法をかける。そして振り返った。

「安田先生、一思いに暴れてくださいな。こっちは大丈夫ですので」

椿先生は背中を押すように言う。

「…ありがとうございます!久しぶりに血が滾るもんだ!」

安田先生は、笑みを浮かべて飛び出した。




















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...