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毒を以て毒を制す
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「…ちっ!せめて死者だけは出さないように頑張りますよ!」
安田先生はそう叫ぶと、毒々しい砲丸を作り上げ、思い切り天井目掛けて投げ飛ばした。それは天井を突き破り、大きな穴から空が顔をのぞかせた。充満する煙が薄くなっていく。
「君達、頑張れますか?」
意識のある4人に、安田先生は問う。
4人共、すぐさま頷いた。
「将太と絆は、皆の脈確認や安全確保を頼みます。椿先生と国木田先生は、俺と一緒にアイツを倒しましょう」
安田先生は手短に指示をすると、将太と絆は意識の無い先生や生徒の脈を確認し始めた。薄らながら、皆にちゃんと脈はあり、2人はほっと胸を撫で下ろした。
「空気穴…か、外に出れば良いんですか?」
椿先生は察したように訊ねた。安田先生はニヤリと笑う。
「流石だね椿先生。その通り!」
そう言って大きな穴まで飛び上がった瞬間、辺りの景色が一瞬にして変わった。無機質な階段の踊り場が、どこにでもある様な、教室へと変貌した。いや、見覚えのありすぎる、現実世界での3年A組だ。宙に浮いた体が、重力と共に下に落ちる。
「いって…!今変えるか!?卑怯だな全く…」
安田先生は腰を擦りながら呟いた。同じように、椿先生も国木田先生も痛そうに目を細め、将太と絆は生徒達と先生方の安全確認を行っている。
「ちょっと…14人俺たちで守り抜けるか…?」
翔太が、意識の無い14人を、壁によしかかるように寝かせながら呟いた。大人7人というだけでもしんどいのに、それに中学3年生7人をプラスされたら体力面的にも辛くなる。
「…俺達なら行けるだろ、期待に応えてやらねぇと」
絆は、意を決したような瞳で言った。
「そっか、天才だもんな!」と将太に自信が宿り始めた時、
絆と将太のすぐ後ろに、彼が現れた。彼は大振りに手を振り上げる。
「まっ…じか!」
将太は自分の持っていた杖で、殴り掛かりに来た彼の手を防御した。みし、と杖が軋む程の力を感じ、冷や汗が出る。
「…流石バスケ部。中々の力だねぇ」
彼はにやりと、安田先生をちょっと悪くしたような笑みで笑った。絆はすかさず彼の脛をねらい、蹴りを入れた。
「おらっ!」
「い”っ…で!!!」
彼は膝から崩れ落ちた。その瞬間に国木田先生が上から舞い込むように彼を蹴り飛ばした。
「お前の相手は俺達なんですよ!」
「くそ…!んな事知るか!だったらアイツら守り抜いてみろ!」
「言われなくても分かってますわ!」
彼は体制を整え、毒を作り出すと、弾幕の如く毒を撃ち放った。国木田先生は軽々しく毒玉を避けながら、左手にはめていた装具のストッパーを右手で外し、彼に狙いを定めて銃弾を数発撃ち放った。
「どうせなら盛大にやるか!教室もろとも吹っ飛んじまえ!」
国木田先生はそう叫ぶと、手榴弾の安全ピンを素早く抜き取り、彼目掛けて放り投げた。
「皆伏せて!」と叫ぶと避難訓練のように机の下に隠れる。
「いやいやいや伏せで済むかコレ!?」
と、椿先生はすかさず生徒達の前に駆け出し、結界を貼った。
ドォォォン!と地鳴りと光が瞬く。
結界越しでもじんわりと熱が伝わって、絆はその威力に身を震わせた。
「さて!殺れましたか!?」
国木田先生は煙をかき分けながら言った。
「まぁ、これで殺れたらつまらないですがね!」と後付けのように笑う。薄れゆく煙に人影が見えてきて、やっと姿が確認出来るようになった時、皆の視界に映ったのは、傷一つ無く笑う彼だった。
「どうやら俺の能力では相性が悪いようだ」
国木田先生は、悔しそうに目をすぼめて言った。
「相性以前の問題だけどな。淡白で面白味のない攻撃だ」
あんな爆撃をくらったにも関わらず、彼は淡々とそう言いながら、わざとらしくズボンのホコリを叩き落とした。
「相性か…松本先生のように、何を中心的に操る人かさえ分かれば…」
絆は先程のことを思い出しながら呟いた。そう言えば如月先生は「水の匂いがする」って言っていたな。俺にはわからないけど。多分、鼻が人並み以上に良いのだろうか。
「…うーん、それは大丈夫だな。アイツは毒しか操れないよ」
国木田先生が言った。「…?なんで分かるんですか?」と絆は疑問を浮かべて訊ねた。
「先生ね、目が良いんだよ。目を凝らせば人の中を流れる物や、臓器の具合、細胞まで見れる。アイツの中には禍々しい毒しか流れていない。毒が血の役割さえしてる。毒で出来た人間かもねぇ」
国木田先生は赤い目を一瞬黄色くさせて、言った。
「俺の能力は鋼なんだけどさぁ、鋼って確か毒には強かったはずなんだけど…何か違う毒なんだろうな」
「…あっ、なるほどなぁ!」
安田先生が、いきなり納得したように声を上げた。
皆が、「何があった」と安田先生を見る。
安田先生は、にやりと笑った。
「どっかのことわざであったじゃないですか、『毒を以て毒を制す』って…つまり…」
皆の空気がざわついた。
国木田先生の能力が効かなかったのも、彼が頑なに安田先生に攻撃しなかったのもつまりそういう事だ
「…気づいたようだね。俺は制される毒の方だから、制すお前の方が強くなる。だけどお前らとだったら、何にでもなれる俺の毒の方が強くなる。だから先に弱っちいのから殺してやろうとしたのに…おもしくねぇな」
彼は、つまらなさそうに呟いた。
「それは悪かったな。でもこんな所で詰む訳にも行かねぇからぱっぱと終わらせてやりますよ」
安田先生は周りに毒を纏わせながら言った。
椿先生は、意識の無い14人に毒を吸わせないように魔法をかける。そして振り返った。
「安田先生、一思いに暴れてくださいな。こっちは大丈夫ですので」
椿先生は背中を押すように言う。
「…ありがとうございます!久しぶりに血が滾るもんだ!」
安田先生は、笑みを浮かべて飛び出した。
安田先生はそう叫ぶと、毒々しい砲丸を作り上げ、思い切り天井目掛けて投げ飛ばした。それは天井を突き破り、大きな穴から空が顔をのぞかせた。充満する煙が薄くなっていく。
「君達、頑張れますか?」
意識のある4人に、安田先生は問う。
4人共、すぐさま頷いた。
「将太と絆は、皆の脈確認や安全確保を頼みます。椿先生と国木田先生は、俺と一緒にアイツを倒しましょう」
安田先生は手短に指示をすると、将太と絆は意識の無い先生や生徒の脈を確認し始めた。薄らながら、皆にちゃんと脈はあり、2人はほっと胸を撫で下ろした。
「空気穴…か、外に出れば良いんですか?」
椿先生は察したように訊ねた。安田先生はニヤリと笑う。
「流石だね椿先生。その通り!」
そう言って大きな穴まで飛び上がった瞬間、辺りの景色が一瞬にして変わった。無機質な階段の踊り場が、どこにでもある様な、教室へと変貌した。いや、見覚えのありすぎる、現実世界での3年A組だ。宙に浮いた体が、重力と共に下に落ちる。
「いって…!今変えるか!?卑怯だな全く…」
安田先生は腰を擦りながら呟いた。同じように、椿先生も国木田先生も痛そうに目を細め、将太と絆は生徒達と先生方の安全確認を行っている。
「ちょっと…14人俺たちで守り抜けるか…?」
翔太が、意識の無い14人を、壁によしかかるように寝かせながら呟いた。大人7人というだけでもしんどいのに、それに中学3年生7人をプラスされたら体力面的にも辛くなる。
「…俺達なら行けるだろ、期待に応えてやらねぇと」
絆は、意を決したような瞳で言った。
「そっか、天才だもんな!」と将太に自信が宿り始めた時、
絆と将太のすぐ後ろに、彼が現れた。彼は大振りに手を振り上げる。
「まっ…じか!」
将太は自分の持っていた杖で、殴り掛かりに来た彼の手を防御した。みし、と杖が軋む程の力を感じ、冷や汗が出る。
「…流石バスケ部。中々の力だねぇ」
彼はにやりと、安田先生をちょっと悪くしたような笑みで笑った。絆はすかさず彼の脛をねらい、蹴りを入れた。
「おらっ!」
「い”っ…で!!!」
彼は膝から崩れ落ちた。その瞬間に国木田先生が上から舞い込むように彼を蹴り飛ばした。
「お前の相手は俺達なんですよ!」
「くそ…!んな事知るか!だったらアイツら守り抜いてみろ!」
「言われなくても分かってますわ!」
彼は体制を整え、毒を作り出すと、弾幕の如く毒を撃ち放った。国木田先生は軽々しく毒玉を避けながら、左手にはめていた装具のストッパーを右手で外し、彼に狙いを定めて銃弾を数発撃ち放った。
「どうせなら盛大にやるか!教室もろとも吹っ飛んじまえ!」
国木田先生はそう叫ぶと、手榴弾の安全ピンを素早く抜き取り、彼目掛けて放り投げた。
「皆伏せて!」と叫ぶと避難訓練のように机の下に隠れる。
「いやいやいや伏せで済むかコレ!?」
と、椿先生はすかさず生徒達の前に駆け出し、結界を貼った。
ドォォォン!と地鳴りと光が瞬く。
結界越しでもじんわりと熱が伝わって、絆はその威力に身を震わせた。
「さて!殺れましたか!?」
国木田先生は煙をかき分けながら言った。
「まぁ、これで殺れたらつまらないですがね!」と後付けのように笑う。薄れゆく煙に人影が見えてきて、やっと姿が確認出来るようになった時、皆の視界に映ったのは、傷一つ無く笑う彼だった。
「どうやら俺の能力では相性が悪いようだ」
国木田先生は、悔しそうに目をすぼめて言った。
「相性以前の問題だけどな。淡白で面白味のない攻撃だ」
あんな爆撃をくらったにも関わらず、彼は淡々とそう言いながら、わざとらしくズボンのホコリを叩き落とした。
「相性か…松本先生のように、何を中心的に操る人かさえ分かれば…」
絆は先程のことを思い出しながら呟いた。そう言えば如月先生は「水の匂いがする」って言っていたな。俺にはわからないけど。多分、鼻が人並み以上に良いのだろうか。
「…うーん、それは大丈夫だな。アイツは毒しか操れないよ」
国木田先生が言った。「…?なんで分かるんですか?」と絆は疑問を浮かべて訊ねた。
「先生ね、目が良いんだよ。目を凝らせば人の中を流れる物や、臓器の具合、細胞まで見れる。アイツの中には禍々しい毒しか流れていない。毒が血の役割さえしてる。毒で出来た人間かもねぇ」
国木田先生は赤い目を一瞬黄色くさせて、言った。
「俺の能力は鋼なんだけどさぁ、鋼って確か毒には強かったはずなんだけど…何か違う毒なんだろうな」
「…あっ、なるほどなぁ!」
安田先生が、いきなり納得したように声を上げた。
皆が、「何があった」と安田先生を見る。
安田先生は、にやりと笑った。
「どっかのことわざであったじゃないですか、『毒を以て毒を制す』って…つまり…」
皆の空気がざわついた。
国木田先生の能力が効かなかったのも、彼が頑なに安田先生に攻撃しなかったのもつまりそういう事だ
「…気づいたようだね。俺は制される毒の方だから、制すお前の方が強くなる。だけどお前らとだったら、何にでもなれる俺の毒の方が強くなる。だから先に弱っちいのから殺してやろうとしたのに…おもしくねぇな」
彼は、つまらなさそうに呟いた。
「それは悪かったな。でもこんな所で詰む訳にも行かねぇからぱっぱと終わらせてやりますよ」
安田先生は周りに毒を纏わせながら言った。
椿先生は、意識の無い14人に毒を吸わせないように魔法をかける。そして振り返った。
「安田先生、一思いに暴れてくださいな。こっちは大丈夫ですので」
椿先生は背中を押すように言う。
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