とあるクラスの勇者伝説

倉箸なーこ

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先生と生徒

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「皆ー!かかれぇ~い!」

どこぞのご隠居のように、椿先生は声を上げた。
絆は「よっしゃぁ!」と軽々しく飛び跳ねて彼へと向かった。
彼の毒玉の弾幕を、絆は黒板消し、将太は椅子で跳ね飛ばす。
だが彼もまた近くにあったバットで打ち返す。
「なんでバットあんだよ!!」と絆は困ったように眉を下げながら、まるでラリーのように毒玉を返し合った。
    
「てかさ、俺テニス苦手ー」

絆が椅子をぶんぶん振りながら言った。
そうは言いながらも、毒玉を彼が打ち返しずらい場所に返せてるあたり、運動神経が良い奴だと椿先生は笑った。

「じゃあ、バレーでもやる?」  

将太が言った。

「出来んの?」

絆は黒板消しで勢いよく打ち返してから訊いた。

「多分。椿先生レシーブ!」

「えぇっ!?」

将太はそういうと、打ち返ってきた毒玉を打ち返さずかわした。椿先生は瞬時に体勢を整えて、毒玉を綺麗に将太の元までレシーブした。

「先生ナイス!絆!」

将太は、机に飛び乗って、飛んできた毒玉を手で華麗に跳ね返した。

「うぉぉぉ!すげぇ!やってやるぞ!」

将太は後ろの方から助走をつけるため走る。
そして、大きく踏み込み、飛ぶ。ピューマのようなジャンプ力に、将太と椿先生は目を丸くした。

「うぉい!」

勢いよく直線を描いて毒玉は彼の近くに落ち爆発した。
いかにも体に悪そうなガス性の煙があたりに蔓延する。

「げほっ、ごほっ、うっ」

煙をかき分けながら彼は咳き込んだ。
よく見ると息も荒く、目も充血している。
足元がおぼつきながらも、彼は腕を振り上げ、毒玉を作り出そうとした。

その時、その場の空気が変わった。

「プロクルステスの寝台!」

椿先生がそう叫ぶと、彼の足元から大きい寝台が現れ、彼の手足首を拘束した。

「!?」

その途端、寝台は彼もろとも横に倒れ、それこそ、いかにもベットに寝っ転がるような体制になった。
…手足の拘束を除いては。

「うーん…お前、案外小さいな。よし、ぴったりにしよう」

椿先生は怪しげにそういうと、手足に絡みついていた金具がぐにゃりと形を変形させ、人間の手に成形した。
人の手は、じんわりと手足を伸ばしていく。

「!?なんだこれ、おい、なんだこれ」

だんだん人の手の、伸ばす力は増していき、人の体からはしてはいけない音が聞こえてきて、将太と絆は耳を塞いだ。椿先生の目が、ぎらりと赤色に光る。
少しずつだが、彼の体がの伸びていくのが嫌でもわかる。
彼の断末魔のような声が響き渡るとともに、姿もろもろはじけ飛んで消えた。

ゲームクリア!と頭上にテロップが浮き出した。

「あれ、倒せちゃった!やったね!将太に絆!」

椿先生が、屈託のない笑顔で振り返った。
先ほどまでの鋭い眼光は、温かい黄色へと戻っていた。

「先生、今のなに…?」

将太は少し怖気付きながら訊ねた。
絆も、顔には出さずとも、どこかおびえた表情をしている。

「ちょっと酷いことしちゃったね。なに、絶対に倒さなきゃいけない奴だったから、最終兵器として使ったんだ」

椿先生は優しい眼差しで、微笑んで言った。
何となく、それ以上深堀してはいけないような気がして、二人は静かに頷いた。

「そうだ、先生方と生徒たち、目が覚めたかな?様子を見に行こう」

椿先生は思い出したかのように呟くと、大きい船に向かって歩き出した。




「しかし…かたじけない」

「そんな、大丈夫ですよ」

国木田先生が申し訳なさそうに頭を下げた。
生徒たちも先生も、目が覚めたは良いものも、まだ毒が抜けずぼんやりとしている。
国木田先生も、その一人であるが、地べたに頭をこすりつけるように謝った。

「あいつの動きを見取っていたのに、体が追い付かなかった。生徒には手を出させないつもりでいたのに…」

ぎり、と国木田先生は歯を食いしばった。

「俺ら、戦う気満々でいたから別に良いのにー、なっ?」

そんな国木田先生の様子を見かねて将太が言った。

「おう。バチバチにやりあう気満々でした」

絆も言う。

「でもなぁ…先生である以上、生徒は守らないと…」

国木田先生がごねるようにそういうと、二人は目を合わせて

「「自分の身は自分で守れって言うくせに…」」

と呟いた。

「仕方ないでしょ!結局は自分の身は自分で守らなきゃいけないけど、教師として俺らが近くにいる限り、俺らは君たちを守らないといけないの。俺らの生徒である限り!」

国木田先生はぶっきらぼうに言った。

「そういうもんなんですか?」

絆は椿先生に問いかけた。

「まぁ、そういうもんだよね。目の前で生徒が死にそうになったら、自分が死んででも生徒を助ける先生が多いと思おうよ」

椿先生はのんびりとした声色で答えた。

「椿先生も、もし俺たちの誰かが死にそうになったら庇ってくれるんですか?」

将太が聞いてみた。椿先生は「難しい質問だな」と頭を悩ませた。

「俺は逃げるかなぁ」

矢部先生が、寝た態勢で眉間にしわを寄せながら呟いた。

「ちょっとショック…って矢部先生大丈夫ですか」

将太が矢部先生の元へ駆け寄って言う。

「俺は最強だから大丈夫…でもちょっと気持ち悪いから休憩」

苦しそうに唸り声をあげ、ぎゅっと目をしぼませたあと、ゆっくり目を開いた

「だってさぁ、仮に助けたとしたら、先生が目の前で自分をかばって死ぬんだぞ?それが嫌いな先生であろうが、好きであろうが、毎日顔を合わせた人が目の前で死んだら、結構精神に来るものがある」

安定しない視界の中、矢部先生は言った。
その言葉が、矢部先生の経験からくるものだと、将太は察しがついた。

「だから、みんな生きてるのが一番」

矢部先生の無気力な声。
それが将太の耳に木霊した。







    
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