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後日談(5)
後日談(聞き手・スーシェフ広瀬)
広瀬:今さらあの頃のこと蒸し返したって何にもならないだろ。俺は聞きたくない。
森川:それは解ってるよ。
広瀬:じゃあ何なんだよこの時間。
森川:あのさ。当時のことで、実はお前に言ってなかったことがあるんだ。
広瀬:その切り出しかた、嫌な予感しかしない。
森川:俺が北澤の部屋に通ってた頃さ。
広瀬:俺が北澤を呪い殺そうとしてた頃な。
森川:北澤とは、いつもいつも寝てばっかいた訳じゃないんだ。
広瀬:知らないよそんなこと。
森川:あの頃、俺ら物件探しで躓いてただろ。人脈も全然なかったし。お前が知ったら嫌な顔するだろうと思って黙ってたんだけどさ、シャリオドールの物件、紹介してくれたの北澤なんだよ。正確には物件のオーナーが北澤の知り合いだったんだけど。
広瀬:(沈黙)
森川:その頃から、ソムリエが必要になったら北澤を呼ぶって約束もしてた。
広瀬:(沈黙)
森川:それから、北澤が将来的には自分の店を持ちたいって話も聞いてた。
広瀬:ああ、それでお前、驚かなかったのか。
森川:まあね。斎藤くんと一緒にっていうのはさすがに驚いたけど、斎藤くんも本気みたいだし、止める理由ないよね。
広瀬:え? それ俺と同じ結論ってこと? 慰留はしない?
森川:うん。それでここからが本題なんだけどさ。
広瀬:まだ他に本題があるのか。
森川:シャリオドール、もう閉めちゃおうかと思ってて。
広瀬:は?
森川:北澤と斎藤くんが抜けるってだけの問題じゃないんだよ。倉田さんがそろそろ引退考えてて、それから瑞希さんのパティスリーを相原くんに継いで貰えないかって話があって。波多野さんも何でか解らないけど北澤の後任は嫌だって言い張ってるし。とりあえずお前の意見が聞きたいんだけど、俺はこの際シャリオドールはきっぱり閉めて、お前と二人で、最初にやったみたいな小さいビストロを、どこか他でやれないかなと思ってて。ここはちょっと広すぎるし、何なら北澤の気配みたいなのが付き纏うだろ。
広瀬:その計画、断る理由ない。っていうか俺がやりたかったの、まさにそれなんだよ。とりあえず今、お前のこと抱きしめていいか?
森川:それも、断る理由ないよね。
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