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第2章 冒険の旅へ

襲撃者との戦い

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「いっ……てええええぇぇぇぇぇぇ!!」


 自分が攻撃されていたという事実に気付くのにアルフは少しの時間を要した。
 脇腹に何かがめり込んだ事は分かるが、それが剣の鞘だと分かったのは数分後の事だ。
 だが、その数分の間に激しい攻防が繰り広げられた。
 アルフもこの1週間の間に様々なシチュエーションでレイクロスとバトルを繰り広げた、丸一日レイクロスがアルフの命を狙い続け、それから逃げ続けるなんて事もやった。
 

「死ねええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 アルフに鞘を投げつけた女は帯刀していた剣を抜き、アルフに向かって剣を振るう。
 

「……これは!?」


 アルフは痛みが走る身体を咄嗟に動かし、それを避ける。
 何者かに襲撃されているのは分かった、そして遠くから剣を振るう事で成り立つ技には一つ心当たりがある。
 周囲のエレメントが一ヶ所に吸い寄せられる。
 まだ敵の姿は見えないが、ほんの数秒でどんな相手なのかを理解した。


「聖剣技・烈空か!」


 眷属は特殊な魔導術式を展開する事で周囲に影響を与える魔導のフィールドを展開する事が出来る。
 剣は端的に言えば「近づいて斬る」ための道具だ。だが、眷属に近づけばそのフィールドの影響を受けてしまう。
 フィールドの影響を受けずに、フィールド諸共敵を斬るための技が聖剣技・烈空だ。
 

「まだまだぁ!!」
「クソッ!!」


 修練を積めば、烈空は連発出来るようになる。
 一撃目でフィールドを斬り裂き、二撃目でガードを崩し、三撃目で肉体を斬り裂く。
 聖騎士達に伝わるレオギアの伝承にはそのように烈空を使っていたと記されているのだ。


「こっちはまだこの剣に慣れてないんだぞ……!」


 アルフはレイクロスから教わった『戦闘モード』を試してみる。
 血中のエレメント素子を加速させ、属性エレメントへと変えていく。
 この戦闘モードでは属性エレメントをフレキシブルに変質させ、通常の魔導術よりも柔軟な戦闘が可能となるが。
 エレメントコードを記述する通常の魔導術とは異なり、精細なコントロールや高い威力の技は期待出来ない。
 

「抜刀しろ、アルフ・アークブラッド!」
「聖剣使ってるって事はアンタ、聖騎士か! ……裏切り者は許せないってか?」
「貴様……貴様は、お嬢様の心を……弄んでええええぇぇぇぇぇぇ!!」
「は?」


 なんの話をしているんだ、こいつは。
 ……などと考えている隙に、アルフは体勢を立て直して距離を詰める。
 纏うエレメントの属性は、風。風には物を運ぶ性質があるため、アルフの移動速度を飛躍的に高める効果があるのだ。
 というか、風のエレメントを纏っていなかったらアルフはモロに女の攻撃を受けていた。
 

「……あっぶな!?」


 女は聖剣の剣先から雷撃を放っていた。
 アルフは女の聖剣の刀身がエネルギーを纏い、放とうとしているのを感じたからステップを踏んでそれを回避した。
 

「抜刀しろと言っている!!」
「騎士なら人の戦い方にケチつけるなよ!」
「騎士なのは数年前までの話だ!」
「ちょ、ちょっと二人とも!!」


 リオナは先ほどから何かを叫んでいる。
 だが、腕が立つ上に手段を選ばない聖騎士との戦いの最中に人の言葉など聞いてはいられない。
 その上、戦闘モードというのは想定していた数倍は疲れる。


「抜刀しないのなら、そのまま殺す!」
「なんで抜刀して欲しいんだよ!?」
「お前の全力を見せろッ!!」


 アルフの腰から下げている剣はただのロングソードではない。
 魔女の城に安置されていた魔剣と呼ばれるものだ。
 魔剣は聖剣同様、契約の必要性がある。
 しかし、契約する上で資格などは必要なく誰でも魔剣を使うことが出来る。
 ただし、魔剣には大きなデメリットがある。
 それは——


「……怖いのか?」
「魔剣は誰でも扱える反面、生命力を剣に吸われる。使えば使うほど……一度死んだ身だ、死ぬのはもう怖くない」
「ならばその全力を見せろ!!」
「魔剣は強力過ぎる、相手を殺してしまうかもしれない」
「フッ……貴様……」


 女は不敵な笑みを浮かべた。
 直後、周囲の空間がビリビリと振動し始めた。
 エレメントの流れが乱れ、女を中心に臨界寸前のエレメントのヴォルテックスが発生している。
 

「こ、これ……やべぇよな!?」
「逃げろーー!!」


 喧嘩だ斬り合いだとアルフを覗き見していた野次馬達や、屋台主達が脱兎の如く逃げ出す。
 あの女は尋常ではない、ここにいたら巻き込まれると散り散りになっていく。


「アルフさん! その人を、シエノさんを怒らせたらダメです!!」
「シエノ……? この人がシエノ・ディープグラム!?」


 アルフは遠くで叫んでいるリオナの声がようやく届いた。
 今までリオナの声に耳を傾けている余裕がなかっただけなのだが、シエノというワードが耳に入ったことで反応した。
 まさかとは思っていたが……いや、だが。


「着くの早すぎだろ!!」
「このシエノ・ディープグラムに、勝てると……思っているのかああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 エレメントの奔流を刀身に集中させると、巨大な斬撃がアルフに襲いかかってくる。
 アルフは意を決し、魔剣に手をかけ……そして、抜刀した。


「目醒めろ、魔剣・ブラッドファングッ!!」
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