ゾンビ転生〜パンデミック〜

不死隊見習い

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Season2

死体愛好家ーNecrophiliaー

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 ネクロマンシー研究会のどこかにある薄暗い部屋。その真ん中で幼い少女が椅子に座り、回想にふけっていた。


 時はポラリスが酒場でアンデット騒動に巻き込まれた日の昼ごろまで遡る。


「リリン!!リリン・ザ・ネクロフィリアはどこだ!!」

 聞き慣れた怒号がこちらに近づいて来たと思えば部屋のドアが乱暴に開けられる。何人かの部下に止められながらも頭に血を上らせた老人が私の研究室に入り込んできた。

「アマデウスか。そんなに興奮するな。早死にするぞ」

 乗り込んできた老人はアマデウス・ファルコという。七英傑にも数えられる魔術師ギルドのマスターであり、名目上は私の上司にあたるのだろう。

「まあ座れ、茶でも淹れよう。ちなみに今の私の名はリリンではない。アリスだ。アリス・ザ・ネクロフィリア。この素体ボディに敬意を払え」

 私は誇らしげに胸に手を当てる。

「貴様、また死体を弄びおって……今度はこんなにも幼い少女を… …」
「ああ、前のエルフの青年も良かったがやはり私の魂と種族が一致しなければなかなか安定しないようだ。それにしても人というのは若ければ若いほどいいものだな。この肌のハリを見てくれ」

 私は生まれ持った素質タレントで死体に自分の魂を移すことができる。私は短命な人間に生まれながらもこの力で200年近く生きてこられた。

「……また攫ったのか……」

 アマデウスの頭にまた血が上っていく。頭の固い老人だ。まあ私の方がずっと年上なのだが。

「いわれなき汚名を着せないでくれたまえ。この素体はこの素体の親から買い取ったのだ。最初は小汚かったが風呂に入れ、髪をとかすとこんなにも綺麗になった。この子もさぞ喜んでいるだろう」
「……何を言おうがお前のやっていることは神への冒涜以外の何物でもない」
「ふん。つまらない男だな。それで今日は何の用だ。また街での我々の風評だとか倫理が何だとか言うつもりか」

 ネクロマンシー研究会は設立されてから色々と目をつけられていた。まったく、猿を実験台にして何が悪い。これではこんな小汚い貧民街に研究所を設けた意味がないではないか。

「街で暴動が起きている。話によると暴徒とは意志の疎通が取れずどんなに傷を負っても怯むことがないそうだ……まるでアンデットのようにな」
「ほう、ついに始まったか」
「やはりお前らか……!!」

 部屋中に甲高い音が響くと次々と魔法陣が展開されていく。アマデウスの仕業だ。

「まあ落ち着きたまえよ。今日は他にも客が来る予定なんだ。部屋を荒らさないでくれよ。……おや、丁度いらっしゃったか」
「!?あ、あなたは」

 部屋に訪問した人物を見てアマデウスは驚愕した。部屋に展開された魔法陣はその客人の力で次々と崩壊されていく。
 私はその隙を見逃さず腕から生やした数本の触手でアマデウスの体を貫いた。
 魔術師にしてはしぶとい男だ。アマデウスは胴に大穴を開けられてすら魔法を放とうとしている。しかし客人の力で魔法は放つことはできない。私は触手であと数回、奴の体を貫いてやるとさすがに動かなくなった。

「……よかったのかね」
「ああ、どうせこいつはあなたも始末するつもりだったでしょう。それにいい実験体が手に入った」

 アマデウスの体は非常に素晴らしい。あと70歳ほど若ければ私のものにしたものを。しかし彼の体で私の最高傑作が完成すると思うと胸が高鳴る。

「ところでついに始めたようだね。……約束はしっかりと守ってもらうぞ」
「ああ、そちらの思うような展開になんとかもっていこう。……全てはあの方の導きのままに」

 
「アリス様。侵入者です」

 部下の声にアリスは我に帰り、渡された水晶を覗き込む。そこにはポラリス、シリウス、そしてエストレアが映されていた。

「直にここを探し当てるだろう。迎撃の準備をしろ。ただし死体は出来るだけ傷つけるな」

 部下に指示を出すと再び水晶に魅入り、つぶやく。

「早くおいで。私のかわいいエストレア……」
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