9 / 83
四度目の世界
8.
しおりを挟む(わあ、すっごい見られてる!)
チラチラとした視線があちこちから感じる。平然と歩いていく龍鵬の背中を眺めながら歩くこと五分ほど経つが、会話という会話はなかった。
黒スーツに黒いサングラス。派手な柄のシャツに赤いネクタイ。茶色がかった黒髪は肩くらいまでの長さで、ひとつにまとめて結っている。見たまんまチンピラって感じだから一際目立つ。
「そんなに珍しいか?」
「えっ」
「そんなに見られると照れるんだが…」
ぽりぽりと頬を掻きながら桜華の方を見てくる。耳がほんのり少し赤くなっていて…この厳つさと図体に似合わず可愛いとか…これがギャップ萌え?ってやつだろうかと桜華は小さく呻いた。
「ごめんなさい。龍さんみたいな人、初めてで…。ゲームの中の人みたい」
とても萌えますなんて本人に言えず、カタコトになりながら思ったことをそのまんま言ってしまい、しまったと桜華は慌てて口をおさえた。
「ゲームか。〇〇シリーズはカッケェよなー」
「し…知ってる!2と3はやったよ!」
「渋いの知ってんのな。2の主人公、最後のやつは泣けるよな。最新のやつも面白いぜ」
もともとゲームは好きだった。久しぶりに懐かしいゲームの名前を聞いて嬉しくなった。話が通じるって素敵だ。
「ここだ、ここ」
龍鵬が店の中に入っていくので、桜華は後から着いて入って行く。
小さな細い階段を降りていくと、ごちゃっと並べられる沢山の品物。携帯やパソコン、音楽プレーヤー。電子系のパーツとか見たことも知らないやつもあった。
沢山のものが広いとはいえないフロアに、ぎゅうぎゅうに積み上げられている。
「客が来たぞ、兄貴」
龍鵬がカウンターの奥にいるスキンヘッドのおじさんに話しかけた。イスに座って新聞を読んでいたのか、ガサゴソたたみながら立ち上がると傍に寄ってくると桜華をチラッと見てから龍鵬を見てニヤニヤ笑った。
「龍鵬か。なんだ珍しく可愛い客だな」
「このお嬢さんにスマホ売ってくれ。俺が落としたの蹴って壊しちまった」
「災難だったな。どこのやつだ?」
「△△のとこのやつ契約してました」
「そのパソコン使っていいから契約してるところからSiM再発行してもらえ。対応してんのは…あったかな。見てくるから待ってろ」
カウンターから出て、店のフロアのダンボールやらを漁り始めたおじさん。桜華はあったイスに座ってパソコン画面を見て、SiMの再発行の手続きをすることにした。背後から龍鵬が覗き込んできて教えてくれた。
「桜華か、いい名前だな」
「字画多いので面倒ですけどね」
「わかる。俺もそうだ。その住所ってことは、この近くに住んでるのか?」
「はい。引越してきたんです」
「その辺、夜は気を付けろ。裏に入ると飲み屋が多いから酔っ払いが多い」
「え、やだなあ…コンビニ行けないじゃん」
気軽に買い物に行けないのは辛い。酔っ払いほど絡まれると面倒なものはない。どうせ酔ってるなら魔法使って成敗しちゃってもいいんだけど…成敗できる魔法なんて習得していただろうか?と桜華は首を傾げた。後で天津に聞いておくことにした。
「なんだ?一人暮らしか?」
「この前、両親が事故で亡くなって」
「そうか、そんで引越してきたのか。ガキなのに大変だな」
大きい掌がガシガシと頭を撫でてくる。
桜華のことをガキというが、龍鵬も歳が近い気がするんだけど?と桜華はムッスリと頬をふくらませた。
横を見たら、思ったよりも龍鵬の顔が近くにあって桜華は驚いたが、サングラスを外した龍鵬の瞳は青く輝いていて思わず見とれる。
「カラコン…?」
「ハーフだからだな」
「わあ、キレイ!」
「ッ…!」
龍鵬の瞳がビー玉みたいにキラキラしていて、目を覗き込んでしまった。すると龍鵬の顔がみるみる赤くなっていき、両肩を掴まれて身を離された。
「お、男はオオカミなんだ。そんな無防備に近付くんじゃねーよ」
「オオカミ…」
桜華は龍鵬の場合は大型犬のような気もするけど…?と思ったが黙っておくことにした。
「△△なら、使えるやつはこれぐらいだな。最新のは取り寄せれば手に入るぞ」
おじさんが戻ってくると、ダンボールから色々と取り出してきたものをカウンターの上に、ガサガサと置いた。思っていたよりも種類が多い。どれがいいのか分からないので手に取って見てみる。
「どれがいいんだろう」
『調べましょうか?』
天津が聞いてきたので首を振った。スマホがない今、天津に話しかけるのは二人がいるから無理だ。
「新しいやつは、んー。こんな感じだな。この順で、これはお勧めできん」
「そんなもん売ってるなよ」
迷っている桜華を見かねて、おじさんがわかりやすいように順番に並べてくれた。どれも画面が大きいし軽くて使いやすそうだ。
「電話とかカメラあんまり使わないし…音楽聴いてられるやつ」
「なら、これとこれだな。色は白、黒、赤、青」
「こっちかな…白いので」
「それじゃあ、そいつで用意してくるから待ってな」
本当にサクッと決まってしまった。でも値段とか書いてなかったことに大丈夫なのか不安で龍鵬のほうをみたら、桜華が何が言いたいのか気付いたらしく、ニッと笑って「心配すんな」と言うと、わしゃわしゃと乱暴に頭を撫でられた。
10
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる