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第01話 世界一平和な逆襲(前)
07.第四夫人・フラム
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ヴァンが真っ先にやるべきことは妻の一時避難だった。自宅にいたヴァンは八人に分身し、八人の妻に一対一で護衛につく。そしてテレポートでそれぞれを安全な場所に連れて行った。海外に所有している別荘である。
「わぁ。あのねぇ、別荘って久しぶりに来たねぇ」
第四夫人・フラムは呑気に室内を見渡していた。一応は緊急事態であるにも関わらず、のほほんとした空気である。
「ヴァン君、まだお腹は空いてない? えぇっと、材料だけ用意してくれたらねぇ、こっちでも作れると思うの」
フラムは第三夫人・シュリルワと共に本日の夕食当番を務めていた。ニットの上に羽織ったフェミニンなエプロンは、彼女の豊満な身体を隠しきれない。ゆるく巻いた髪をハーフアップにしてお料理の準備は万端といったご様子だ。愛らしい困り眉と少し垂れた大きな目からは聖母のごとき慈愛が放たれている。「帰宅したらキッチンにいてほしい妻」を想像すれば世界中の男がこのフラムをそのまんま思い浮かべるだろう。
「ありがとな。でも大丈夫だ。今は隠れていよう」
「隠れる? えぇっと、ここにいれば安全なんじゃないの?」
「俺が持ってる不動産は政府に把握されてるだろうから、こっちにも良からぬ輩が来るかもしれないんだ。誰が来ようがすぐ倒すけど、君の顔を見られるだけでも困るからな」
「う~ん、そっかぁ……」
「……まあ、まずないだろうけどな」
海上に孤立する島国であるウィルクトリアから海外までの超長距離テレポートができるファクターはヴァンしかいない。ヴァンが所有する別荘は数十軒に及ぶため、事前にあたりをつけて張っておくのも困難だ。
「でも、隠れるってどうしたらいいの? わたしねぇ、隠れんぼはすっごく下手だったの」
ぼーっとした天然さんのフラムらしい発言にヴァンは若干ニヤけつつ、有効策を告げる。
「布団の中にでも入ってればいいさ。……俺と一緒にな!」
実に頭脳明晰な作戦だとヴァンは自負していた。妻の姿を隠せるしくっついてガードできる。何より、ベッドの上で二人じっとしていることになれば、そんなのもうイチャイチャするくらいしかすることがない。ヴァンは妻の避難を名目に、八人の妻全員をベッドに引っ張り込もうとしていた。
「……ヴァン君? あのねぇ、今はそれどころじゃないと思うの」
「うっ……!」
フラムはほっぺを膨らませる。ふわふわした彼女にも魂胆がバレているということは、他の別荘でも妻たちに苦言を呈されているだろう。だが構わない。実際護衛策として上々のはずだ。
「ちょ、長期戦になるかもしれないからな。楽な場所で寝っ転がっていた方がいいぞ?」
「う、う~ん、そっかぁ……」
どうにか説き伏せることに成功し、ヴァンはフラムの手を引っ張ってベッドまでお連れした。並んで寝転がり、布団を頭まで被る。そして彼女の顔を胸元に迎え入れ、ギュッと彼女を抱きしめた。
「……確かにこれならねぇ、わたし安心かも」
「だろ?」
ご理解していただけたようで何より。あとは本国の自宅に誘拐犯が侵入してこないか警戒しているのみだ。あっちには魔法で透明になった分身を三百人配置しておいたので侵入と同時に退治である。
「ヴァ、ヴァン君……、だ、ダメだってばぁ……」
ただ待っていても退屈なので、ヴァンは早速猫耳を触っていた。夫婦がベッドの中で密着しているのだからやることは一つだろう。フラムはモゾモゾと顔を上げ、ヴァンの目を正面に見据える。
「あのねぇ、今は我慢して? わたしもするから」
一応、ヴァンだってこの状況で最後まで至るつもりはない。わずかでも誰かが侵入してくる可能性があるのだから。だが今の一言はヴァンを加速させた。抵抗する彼女を押さえて、唇を合わせる。
「だ、ダメぇ……。したくなっちゃうでしょう?」
わざとやってるのかと疑うくらいヴァンを刺激してくる。ヴァンは自分に言い聞かせるように、
「ちょっとだけだよ。ちょっとだけ」
「う、うん……」
フラムの身体から力が抜けていく。ヴァンは心の中で「ほどほどで止まれ」と念じながら何度もフラムのぽてっとした唇を貪った。一言で彼女の魅力を表すなら、「柔らかい」だ。雰囲気も、身体も、香りも、全てが柔らかい。永遠に抱きしめていたくなる。
────突然、フラムが顔を話し、「良いこと思いついた」と言わんばかりの表情を向けてきた。
「こうやってねぇ、わたしたちがすぅっごく仲良しだってところを見せたら、誘拐なんて諦めてくれないかなぁ?」
「い、いや、見せる気か?」
誘拐犯に最中を見せつける。……そりゃあ愕然とはするだろうが、いくらなんでも大胆すぎる。
「わ、わたしったら、何言ってるのかしらぁ……!」
フラムは自分の発言が恥ずかしくなったようで、顔を真っ赤にして縮こまった。相変わらず天然さんである。
「…………見せつける?」
その時、ヴァンの背筋に電流が走る。奇しくもフラムの言葉がヒントになった。
「そうだ……。見せてやればいいんだ。国民に」
「ヴァ、ヴァン君⁉︎ あのねぇ、そんなのわたし恥ずかしくて死んじゃうと思うの! せ、せめて服は着たままでいい? わたし今スカートだから────」
「ち、違うよ。そういうことじゃない。……思いついたんだ。ギャフンと言わせる方法を」
残念だがイチャイチャは後回しだ。総理の企みを逆手にとって民意を彼から剥ぎ取る最高の作戦ができた。
「え……? ど、どうするの?」
ヴァンは勝利を確信し、得意げに宣言した。
「成功させるんだ。……誘拐を」
ヴァンが真っ先にやるべきことは妻の一時避難だった。自宅にいたヴァンは八人に分身し、八人の妻に一対一で護衛につく。そしてテレポートでそれぞれを安全な場所に連れて行った。海外に所有している別荘である。
「わぁ。あのねぇ、別荘って久しぶりに来たねぇ」
第四夫人・フラムは呑気に室内を見渡していた。一応は緊急事態であるにも関わらず、のほほんとした空気である。
「ヴァン君、まだお腹は空いてない? えぇっと、材料だけ用意してくれたらねぇ、こっちでも作れると思うの」
フラムは第三夫人・シュリルワと共に本日の夕食当番を務めていた。ニットの上に羽織ったフェミニンなエプロンは、彼女の豊満な身体を隠しきれない。ゆるく巻いた髪をハーフアップにしてお料理の準備は万端といったご様子だ。愛らしい困り眉と少し垂れた大きな目からは聖母のごとき慈愛が放たれている。「帰宅したらキッチンにいてほしい妻」を想像すれば世界中の男がこのフラムをそのまんま思い浮かべるだろう。
「ありがとな。でも大丈夫だ。今は隠れていよう」
「隠れる? えぇっと、ここにいれば安全なんじゃないの?」
「俺が持ってる不動産は政府に把握されてるだろうから、こっちにも良からぬ輩が来るかもしれないんだ。誰が来ようがすぐ倒すけど、君の顔を見られるだけでも困るからな」
「う~ん、そっかぁ……」
「……まあ、まずないだろうけどな」
海上に孤立する島国であるウィルクトリアから海外までの超長距離テレポートができるファクターはヴァンしかいない。ヴァンが所有する別荘は数十軒に及ぶため、事前にあたりをつけて張っておくのも困難だ。
「でも、隠れるってどうしたらいいの? わたしねぇ、隠れんぼはすっごく下手だったの」
ぼーっとした天然さんのフラムらしい発言にヴァンは若干ニヤけつつ、有効策を告げる。
「布団の中にでも入ってればいいさ。……俺と一緒にな!」
実に頭脳明晰な作戦だとヴァンは自負していた。妻の姿を隠せるしくっついてガードできる。何より、ベッドの上で二人じっとしていることになれば、そんなのもうイチャイチャするくらいしかすることがない。ヴァンは妻の避難を名目に、八人の妻全員をベッドに引っ張り込もうとしていた。
「……ヴァン君? あのねぇ、今はそれどころじゃないと思うの」
「うっ……!」
フラムはほっぺを膨らませる。ふわふわした彼女にも魂胆がバレているということは、他の別荘でも妻たちに苦言を呈されているだろう。だが構わない。実際護衛策として上々のはずだ。
「ちょ、長期戦になるかもしれないからな。楽な場所で寝っ転がっていた方がいいぞ?」
「う、う~ん、そっかぁ……」
どうにか説き伏せることに成功し、ヴァンはフラムの手を引っ張ってベッドまでお連れした。並んで寝転がり、布団を頭まで被る。そして彼女の顔を胸元に迎え入れ、ギュッと彼女を抱きしめた。
「……確かにこれならねぇ、わたし安心かも」
「だろ?」
ご理解していただけたようで何より。あとは本国の自宅に誘拐犯が侵入してこないか警戒しているのみだ。あっちには魔法で透明になった分身を三百人配置しておいたので侵入と同時に退治である。
「ヴァ、ヴァン君……、だ、ダメだってばぁ……」
ただ待っていても退屈なので、ヴァンは早速猫耳を触っていた。夫婦がベッドの中で密着しているのだからやることは一つだろう。フラムはモゾモゾと顔を上げ、ヴァンの目を正面に見据える。
「あのねぇ、今は我慢して? わたしもするから」
一応、ヴァンだってこの状況で最後まで至るつもりはない。わずかでも誰かが侵入してくる可能性があるのだから。だが今の一言はヴァンを加速させた。抵抗する彼女を押さえて、唇を合わせる。
「だ、ダメぇ……。したくなっちゃうでしょう?」
わざとやってるのかと疑うくらいヴァンを刺激してくる。ヴァンは自分に言い聞かせるように、
「ちょっとだけだよ。ちょっとだけ」
「う、うん……」
フラムの身体から力が抜けていく。ヴァンは心の中で「ほどほどで止まれ」と念じながら何度もフラムのぽてっとした唇を貪った。一言で彼女の魅力を表すなら、「柔らかい」だ。雰囲気も、身体も、香りも、全てが柔らかい。永遠に抱きしめていたくなる。
────突然、フラムが顔を話し、「良いこと思いついた」と言わんばかりの表情を向けてきた。
「こうやってねぇ、わたしたちがすぅっごく仲良しだってところを見せたら、誘拐なんて諦めてくれないかなぁ?」
「い、いや、見せる気か?」
誘拐犯に最中を見せつける。……そりゃあ愕然とはするだろうが、いくらなんでも大胆すぎる。
「わ、わたしったら、何言ってるのかしらぁ……!」
フラムは自分の発言が恥ずかしくなったようで、顔を真っ赤にして縮こまった。相変わらず天然さんである。
「…………見せつける?」
その時、ヴァンの背筋に電流が走る。奇しくもフラムの言葉がヒントになった。
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「ヴァ、ヴァン君⁉︎ あのねぇ、そんなのわたし恥ずかしくて死んじゃうと思うの! せ、せめて服は着たままでいい? わたし今スカートだから────」
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