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第03話 ショーほど悲惨な商売はない
08.あなたの子どもを産ませて
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***
ヴァンが戸惑っているのもお構いなしに、サリエはスピーチを始めた。
『裏でヴァン様のお話は聞かせていただきました。実にナンセンス。ナンセンスですわっ! ヴァン様のされていることはまるで筋が通っておりません!』
サリエは険しい表情で言い立てた。ヴァン[テツカ]は状況が飲み込めず、曖昧に聞き返すことしかできなかった。
『えっと、……はい?』
『確かに、現体制は不安定です。ヴァン様が数々の活動をされていること自体はすごく評価しているのですよ』
『あ、ありがとうございまず』
随分上からだが、褒められた。なんだ? じゃあ何しに来たんだ?
『ですがヴァン様。やはりビースティアとのご結婚はやはりおかしいですわよ。この国が自立しようがしまいが、スナキア家という軍事力は必要です。例え影響力が下がろうと、力が落ちようと、あるに越したことはないものですわ』
『……』
どれだけヴァンが理屈をこねようと、正しい未来を示そうと、この国がスナキア家を失っていい理由にはならない。どうやらそれが彼女の主張らしい。「スナキア家がいないと困る」を解消した後も、スナキア家が有用なことは変わりない。……実際これにはヴァンも同意だ。
『ヴァン様、なぜビースティアとの結婚を?』
結局この話かとヴァン[テツカ]は顔をしかめ、慌てて穏和な表情を作り直す。
『僕はビースティアしか愛せないからです』
『ナンセンス! ナンセンスですわ!』
しかしいくらヴァン[テツカ]がサリエに対して融和的に接しようと、あちらはヴァンを敵対視しているようだった。流石、ドレイクの妹だった。もしかしたらおままごとの件を根に持っている可能性もある。
ヴァンがファクターと結ばれようと後継はできない。それどころか国民は後継を期待し、今まで通りの暮らしができるぞと浮かれ、国家改革なんて忘れてしまうだろう。よってビースティアとの結婚で国民にプレッシャーをかけるのは最適解だ。
しかし、そんな事情は丸々言えない。この場でヴァンは「ビースティアが好きだから!」とごねることしかできないのだ。反論の手立てがなく、どうしようもなく写りが悪い。テツカ様に続いて厄介な話題を振ってきた。……しかし、わざわざサリエに言わせる意味は?
『ヴァン様、実は私ご結婚についてこれ以上とやかく言うつもりはありませんの』
サリエは微笑みながら告げた。
『……?』
予想外の発言。サリエの目的は別にある……?
『もうこの際、ご結婚はどうぞお好きにしてください。ヴァン様が強情なのはもう重々理解しました。ですが、ヴァン様の子どもは必要です』
サリエは深く息を吸い、ゆっくりと吐く。
『遺伝子提供のご協力を。────私がヴァン様の子を産みます』
『……!』
ヴァン[テツカ]は息を飲む。対照的にざわめきが大きくなる観覧客。国中のお茶の間も騒ぎになっているだろう。
そして、国家緊急対策室も。
「ヴァン、聞いたか」
ドレイクは冷たい声で問いかける。
「これでもお前は動かないか?」
「……!」
「妹が言い出したことだ。お前の結婚を崩せないのなら、せめて子どもだけでも残そうと……。我が妹ながら強い女だ。お前のことなど何とも思っていないとは言いながら、使命を感じて動いている」
ドレイクの表情は苦渋に満ちていた。彼にとっては望ましい方法ではなかったことが伺える。物憂げに画面に映るサリエを見つめていた。
『後継さえ生まれればもう誰もヴァン様の無益なご結婚を咎めませんよ。ヴァン様も奥様もこれで安心して暮らせるはずです。国民にとってもスナキア家にとっても有意義な提案ではありませんこと?』
サリエはこれをぶつけにきたのだ。この国で最も優秀と思われるファクターの女性がヴァンの子を産む。国民の心は踊る。
ドレイクは解説する。
「モデルの仕事の延長でこの番組からオファーがあったらしい。国民の多くが注目する番組だ。妹はこの場を利用することにした。衆人環視のもとでこの国難に対する最高の解決策を提示する。これはそういう筋書きのショーなんだよ」
そしてドレイクは説明役としてヴァンと共に視聴していたようだ。
「ちなみにテツカ様は思いっきりお前のアンチだ。自分にも言いたい放題やる時間をくれと言っていたそうだ」
「えー……?」
テツカ様は本筋とは関係なかったらしい。サリエが発案したのであれば総理の仕込みでもない。安心したような恐ろしいようなである。この国は政府が動かなくても民間レベルでヴァンに嫌がらせを仕掛けてくるってことだ。国家改革の道はまだまだ長い。
「妹の言う通り、お前にとっても悪い話じゃないだろう? お前が妻にこだわっているのはもう充分過ぎるほど分かった。……その妻を守ってやれ、ヴァン。国中から後継を求められていながら叶わないなど、お前の妻はさぞ辛い思いをしているはずだ。そこから解放されるんだぞ?」
「……!」
サリエの提言に乗っても妻は解放はされないのだ。遺伝子提供でサリエとの間に子どもができたとて、その子はスナキア家の力を継承できない。ただただサリエとその子の人生が犠牲になるだけだ。
しかし、それは言えない。遺伝子提供というサリエの提言を蹴るには、継承条件とは別の、国民が納得する理由がいる。「やらなきゃこの国が滅びるんですけど?」という主張すら打ち倒せるような、強い理由。────そんなものはない。
画面の中でサリエが問う。
『断る理由、ございませんよね? 奥様が大事と言うのなら、私が奥様を救って差し上げます』
観覧客からの喝采。きっと全国のテレビの前の民衆も同様だ。
『……もし、ヴァン様側には断る理由がないにも関わらずお渋りになるなら、私奥様方を疑いますよ?』
『何……?』
『奥様方が嫌がるから、という理由でヴァン様が身動きが取れずにいるのではないかと考えてしまいますわ』
『……!』
それはマズい……! 「遺伝子提供という全てが解決する方法を妻が拒否している。多分嫉妬とかそんな理由で」。そんな疑いをかけられたら妻の立場は今よりも悪くなる。
『私かねてからおかしいと思っていたのです! ヴァン様はかつて素晴らしい英雄でしたのに、結婚を機に人が変わってしまわれました! きっと奥様のせいなのです! 奥様のせいでヴァン様は歪んでしまわれました!』
『お、おい! 妻を侮辱す────』
ヴァン[テツカ]の抗議を遮るようにサリエは言い募る。
『だ、だって……! 昔のヴァン様は優しくてカッコ良くて素敵でしたもん……! 絶対おかしい……!』
ぎゅっと拳を握ってプルプルと震え出す。
『ん……⁉︎』
『昔おままごとをしてくれたときだって、ヴァン様はあえて私に男性の役ばかりをやらせて見識を深めてくださったんです! 何たる思慮深さでしょう!』
『えぇ……?』
『ヴァン様は変な女に捕まっちゃって操られてるだけ! 絶対そうなんです! 私がヴァン様を助けて差し上げますから!』
『えぇ…………⁉︎』
この感じ。まさか────。
国家緊急対策室にいるヴァンは突然鳴り響いた衝撃音に背筋を伸ばす。ドレイクが机を思いっきり叩いた音だった。
「ヴァン……! 勘違いするなよ!」
ドレイクがまるでツンデレのようなセリフを吐いた。
「い、妹は俺の前では確かに言ったんだ! お前など何とも思っていないと! いいな⁉︎」
「は、はい……!」
そうは言われても、ヴァンは鈍感ではない。妻が八人いるだけにそれなりに女性慣れはしているつもりだ。彼女はおそらく……そういうことだ。そして、彼女こそ、嫉妬とかそんな理由で動いているのではなかろうか。
『ヴァンお兄ちゃ、あ、ヴァン様は! ぜ、絶対間違ったことをしない人なんです! だから絶対奥様がおかしい!』
感情的になり、どんどんボロが出ている。ヴァンに美醜は分からないが、彼女が目に涙をためて頬を赤らめていることくらいは分かる。多分世間からしたら相当可愛い状態のはずだ。ドレイクが壁をガンガンぶん殴っているのがその証拠。
ヴァンは妻を守るため、「遺伝子提供は拒否するし、それは妻ではなくヴァンの意思である」と証明しなければならない。だがサリエはヴァンに対してアレであり、「絶対に妻が悪い」と言い張る状態にある。そして国民はサリエの味方だ。
────これ、詰んでいないか? ヴァンの額に汗が伝う。
『ビースティアのくせにヴァン様と結婚しちゃう神経からそもそもおかしいんです! み、身の程を知るべきですわ! ヴァン様は本来私のような優秀なファクターと結ばれるべきですのに! 私ヴァン様に見合う女性になりたくていっぱいいっぱい頑張ったんですよ⁉︎』
すっかり昂ったサリエは気持ちを全く隠せていない。彼女はその勢いで本格的に妻を叩き始めた。
『本当に最低! 傾国の魔女たちですわ! ナンセンスですわ! 大方国中に批判されているのも子どもができないのも悲劇のヒロインぶるにはちょうどいいのでしょう⁉︎』
『……! おい! いい加減にしろサリエ!』
思わず声を荒げる。聞き捨てならない。今の言葉、妻がどれだけ傷つくか。彼女たちはコアの継承条件という秘密をヴァンと共に抱え、世界の終末を回避するため、妻が複数いるという不遇に耐えてでもヴァンを支えているこの国の真の英雄だ。
しかしそれは言えない。言えない限り、サリエの口も止まらない。
『ヴァン様の奥様は最低の悪女です! このままスナキア家の血が途絶えれば全国民が死ぬんですよ⁉︎ それすらわからない愚図なのです! ですが私はそんな愚図さえ救ってみせます! 遺伝子提供という方法で!』
観覧客から歓声と拍手が巻き起こった。妻がボロクソに貶されている。国民はそれに賛同している。全国放送で。しかも妻が観ている前で。
『ヴァン様! これが民衆の声です! 私の提案をどうか受け入れてください!』
妻を傷つけるのだけは絶対に許せない。だがこの状況。一体どうすればいいのか。
ああ、妻が心を痛めていなければいいが────。
ヴァンが戸惑っているのもお構いなしに、サリエはスピーチを始めた。
『裏でヴァン様のお話は聞かせていただきました。実にナンセンス。ナンセンスですわっ! ヴァン様のされていることはまるで筋が通っておりません!』
サリエは険しい表情で言い立てた。ヴァン[テツカ]は状況が飲み込めず、曖昧に聞き返すことしかできなかった。
『えっと、……はい?』
『確かに、現体制は不安定です。ヴァン様が数々の活動をされていること自体はすごく評価しているのですよ』
『あ、ありがとうございまず』
随分上からだが、褒められた。なんだ? じゃあ何しに来たんだ?
『ですがヴァン様。やはりビースティアとのご結婚はやはりおかしいですわよ。この国が自立しようがしまいが、スナキア家という軍事力は必要です。例え影響力が下がろうと、力が落ちようと、あるに越したことはないものですわ』
『……』
どれだけヴァンが理屈をこねようと、正しい未来を示そうと、この国がスナキア家を失っていい理由にはならない。どうやらそれが彼女の主張らしい。「スナキア家がいないと困る」を解消した後も、スナキア家が有用なことは変わりない。……実際これにはヴァンも同意だ。
『ヴァン様、なぜビースティアとの結婚を?』
結局この話かとヴァン[テツカ]は顔をしかめ、慌てて穏和な表情を作り直す。
『僕はビースティアしか愛せないからです』
『ナンセンス! ナンセンスですわ!』
しかしいくらヴァン[テツカ]がサリエに対して融和的に接しようと、あちらはヴァンを敵対視しているようだった。流石、ドレイクの妹だった。もしかしたらおままごとの件を根に持っている可能性もある。
ヴァンがファクターと結ばれようと後継はできない。それどころか国民は後継を期待し、今まで通りの暮らしができるぞと浮かれ、国家改革なんて忘れてしまうだろう。よってビースティアとの結婚で国民にプレッシャーをかけるのは最適解だ。
しかし、そんな事情は丸々言えない。この場でヴァンは「ビースティアが好きだから!」とごねることしかできないのだ。反論の手立てがなく、どうしようもなく写りが悪い。テツカ様に続いて厄介な話題を振ってきた。……しかし、わざわざサリエに言わせる意味は?
『ヴァン様、実は私ご結婚についてこれ以上とやかく言うつもりはありませんの』
サリエは微笑みながら告げた。
『……?』
予想外の発言。サリエの目的は別にある……?
『もうこの際、ご結婚はどうぞお好きにしてください。ヴァン様が強情なのはもう重々理解しました。ですが、ヴァン様の子どもは必要です』
サリエは深く息を吸い、ゆっくりと吐く。
『遺伝子提供のご協力を。────私がヴァン様の子を産みます』
『……!』
ヴァン[テツカ]は息を飲む。対照的にざわめきが大きくなる観覧客。国中のお茶の間も騒ぎになっているだろう。
そして、国家緊急対策室も。
「ヴァン、聞いたか」
ドレイクは冷たい声で問いかける。
「これでもお前は動かないか?」
「……!」
「妹が言い出したことだ。お前の結婚を崩せないのなら、せめて子どもだけでも残そうと……。我が妹ながら強い女だ。お前のことなど何とも思っていないとは言いながら、使命を感じて動いている」
ドレイクの表情は苦渋に満ちていた。彼にとっては望ましい方法ではなかったことが伺える。物憂げに画面に映るサリエを見つめていた。
『後継さえ生まれればもう誰もヴァン様の無益なご結婚を咎めませんよ。ヴァン様も奥様もこれで安心して暮らせるはずです。国民にとってもスナキア家にとっても有意義な提案ではありませんこと?』
サリエはこれをぶつけにきたのだ。この国で最も優秀と思われるファクターの女性がヴァンの子を産む。国民の心は踊る。
ドレイクは解説する。
「モデルの仕事の延長でこの番組からオファーがあったらしい。国民の多くが注目する番組だ。妹はこの場を利用することにした。衆人環視のもとでこの国難に対する最高の解決策を提示する。これはそういう筋書きのショーなんだよ」
そしてドレイクは説明役としてヴァンと共に視聴していたようだ。
「ちなみにテツカ様は思いっきりお前のアンチだ。自分にも言いたい放題やる時間をくれと言っていたそうだ」
「えー……?」
テツカ様は本筋とは関係なかったらしい。サリエが発案したのであれば総理の仕込みでもない。安心したような恐ろしいようなである。この国は政府が動かなくても民間レベルでヴァンに嫌がらせを仕掛けてくるってことだ。国家改革の道はまだまだ長い。
「妹の言う通り、お前にとっても悪い話じゃないだろう? お前が妻にこだわっているのはもう充分過ぎるほど分かった。……その妻を守ってやれ、ヴァン。国中から後継を求められていながら叶わないなど、お前の妻はさぞ辛い思いをしているはずだ。そこから解放されるんだぞ?」
「……!」
サリエの提言に乗っても妻は解放はされないのだ。遺伝子提供でサリエとの間に子どもができたとて、その子はスナキア家の力を継承できない。ただただサリエとその子の人生が犠牲になるだけだ。
しかし、それは言えない。遺伝子提供というサリエの提言を蹴るには、継承条件とは別の、国民が納得する理由がいる。「やらなきゃこの国が滅びるんですけど?」という主張すら打ち倒せるような、強い理由。────そんなものはない。
画面の中でサリエが問う。
『断る理由、ございませんよね? 奥様が大事と言うのなら、私が奥様を救って差し上げます』
観覧客からの喝采。きっと全国のテレビの前の民衆も同様だ。
『……もし、ヴァン様側には断る理由がないにも関わらずお渋りになるなら、私奥様方を疑いますよ?』
『何……?』
『奥様方が嫌がるから、という理由でヴァン様が身動きが取れずにいるのではないかと考えてしまいますわ』
『……!』
それはマズい……! 「遺伝子提供という全てが解決する方法を妻が拒否している。多分嫉妬とかそんな理由で」。そんな疑いをかけられたら妻の立場は今よりも悪くなる。
『私かねてからおかしいと思っていたのです! ヴァン様はかつて素晴らしい英雄でしたのに、結婚を機に人が変わってしまわれました! きっと奥様のせいなのです! 奥様のせいでヴァン様は歪んでしまわれました!』
『お、おい! 妻を侮辱す────』
ヴァン[テツカ]の抗議を遮るようにサリエは言い募る。
『だ、だって……! 昔のヴァン様は優しくてカッコ良くて素敵でしたもん……! 絶対おかしい……!』
ぎゅっと拳を握ってプルプルと震え出す。
『ん……⁉︎』
『昔おままごとをしてくれたときだって、ヴァン様はあえて私に男性の役ばかりをやらせて見識を深めてくださったんです! 何たる思慮深さでしょう!』
『えぇ……?』
『ヴァン様は変な女に捕まっちゃって操られてるだけ! 絶対そうなんです! 私がヴァン様を助けて差し上げますから!』
『えぇ…………⁉︎』
この感じ。まさか────。
国家緊急対策室にいるヴァンは突然鳴り響いた衝撃音に背筋を伸ばす。ドレイクが机を思いっきり叩いた音だった。
「ヴァン……! 勘違いするなよ!」
ドレイクがまるでツンデレのようなセリフを吐いた。
「い、妹は俺の前では確かに言ったんだ! お前など何とも思っていないと! いいな⁉︎」
「は、はい……!」
そうは言われても、ヴァンは鈍感ではない。妻が八人いるだけにそれなりに女性慣れはしているつもりだ。彼女はおそらく……そういうことだ。そして、彼女こそ、嫉妬とかそんな理由で動いているのではなかろうか。
『ヴァンお兄ちゃ、あ、ヴァン様は! ぜ、絶対間違ったことをしない人なんです! だから絶対奥様がおかしい!』
感情的になり、どんどんボロが出ている。ヴァンに美醜は分からないが、彼女が目に涙をためて頬を赤らめていることくらいは分かる。多分世間からしたら相当可愛い状態のはずだ。ドレイクが壁をガンガンぶん殴っているのがその証拠。
ヴァンは妻を守るため、「遺伝子提供は拒否するし、それは妻ではなくヴァンの意思である」と証明しなければならない。だがサリエはヴァンに対してアレであり、「絶対に妻が悪い」と言い張る状態にある。そして国民はサリエの味方だ。
────これ、詰んでいないか? ヴァンの額に汗が伝う。
『ビースティアのくせにヴァン様と結婚しちゃう神経からそもそもおかしいんです! み、身の程を知るべきですわ! ヴァン様は本来私のような優秀なファクターと結ばれるべきですのに! 私ヴァン様に見合う女性になりたくていっぱいいっぱい頑張ったんですよ⁉︎』
すっかり昂ったサリエは気持ちを全く隠せていない。彼女はその勢いで本格的に妻を叩き始めた。
『本当に最低! 傾国の魔女たちですわ! ナンセンスですわ! 大方国中に批判されているのも子どもができないのも悲劇のヒロインぶるにはちょうどいいのでしょう⁉︎』
『……! おい! いい加減にしろサリエ!』
思わず声を荒げる。聞き捨てならない。今の言葉、妻がどれだけ傷つくか。彼女たちはコアの継承条件という秘密をヴァンと共に抱え、世界の終末を回避するため、妻が複数いるという不遇に耐えてでもヴァンを支えているこの国の真の英雄だ。
しかしそれは言えない。言えない限り、サリエの口も止まらない。
『ヴァン様の奥様は最低の悪女です! このままスナキア家の血が途絶えれば全国民が死ぬんですよ⁉︎ それすらわからない愚図なのです! ですが私はそんな愚図さえ救ってみせます! 遺伝子提供という方法で!』
観覧客から歓声と拍手が巻き起こった。妻がボロクソに貶されている。国民はそれに賛同している。全国放送で。しかも妻が観ている前で。
『ヴァン様! これが民衆の声です! 私の提案をどうか受け入れてください!』
妻を傷つけるのだけは絶対に許せない。だがこの状況。一体どうすればいいのか。
ああ、妻が心を痛めていなければいいが────。
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