ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第04話 一家総出の救出作戦

05.卑猥な医務室

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 ***

 ヴァン[エル]はエルリアを連れて医務室にやってきた。体育館から発見した毛布を重ねていくつか簡易ベットを制作済み。さらに────。

「あ、キティアさんもう買ってくださったんですね!」

 そこにはすでに諸々の市販薬、包帯やガーゼ、それらを切るハサミなどの備品まで揃っていた。買い出し班キティアからのお届けものだ。

「ティアが『これが最優先』って言ってな。充分過ぎる量があるはずだが、足りなかったらすぐ連絡してくれと」
「フフ、さすがですわね。あ、ハサミが左利き用ですね。助かります」
「……」
「あとは……、手を洗える場所があると良いのですが、さすがにそれは贅沢ですわね……」

 清潔な水は何かと必要になるだろう。ヴァンは思案する。

「魔法でいくらでも出せるが……どうだろう?」
「そ、それってヴァン様の体液になるんでしょうか? わたくしは何でも<検閲されました>できますが……」
「い、いや綺麗な水……のはずだ。でも不気味がられるだろうな」

 ただでさえ魔法慣れしていない人たちが相手なのだ。そんな得体の知れない水はビビられる可能性が高い。ファクターの魔法は謎に包まれているため、ヴァン自身も無から水を生み出す原理が分かっていない。
 一歩外に出れば雪解け水はいくらでもある。しかしそちらも清潔とは言えないだろう。となれば────。

「水は家の水道から運んで……水道でも作ってみるか。いや、でも仕組みを知らないな……」
「あ、でしたらわたくしの部屋の本棚に資料がありますよ。わたくし『花嫁修行・211』にて水道管の修理を身につけたので」
「お、おう」

 流石は嫁サイボーグだった。ヴァンは即座に分身を増やしてテレポート。本棚を探してみる。

「どのあたりにある?」
「えっと、おそらく書庫に入ってすぐ左側の棚の『生活専門書』のコーナーに。タイトルは失念してしまいましたがそれっぽいのを探していただけると」

 ヴァンは自宅の分身に伝える。あちらでさらに分身して探したらしく水道工事の専門書にすぐにたどり着いた。早速中身を読み漁り、水道の仕組みを即座に把握した。あとはバリアで再現するだけだ。

「蛇口はこうで……タンクとはこう繋がっていて……タンクには家の水道から出した水を運んで……」

 不手際で避難所が水浸しになってはたまらないので、一つ一つじっくり確認しながらバリアで水道を再現していく。シンクと排水溝まで整え、無事完成である。試しに蛇口を捻って動作確認も済ませた。

「す、すごいですわね。これ全部のお部屋に作るっていうのは厳しいでしょうか?」
「あ、確かにあると便利だな。……あ、いや」

 そのときちょうど飲水について検討を進めていたらしいヴァン[ティア]からの連絡が入った。

「……それはやめておこう。ペットボトルで用意した方がいいとティアが」
「……? よく分かりませんが、キティアさんの判断なら安心ですね」

 ヴァンは事情を説明しようと思ったが、エルリアは仔細を聞かずとも納得したようだった。

「ヴァン様、実際お怪我されてる方はどれくらいいらっしゃるんですか?」
「今ここに居る人たちは目に見えた怪我はなかったよ。重傷者はウィルクトリアの病院に運んでるしな。だが呼びかけたら出てくるかもしれないから館内放送を────」

 言いかけたそのとき、大ホールにいるヴァン[ミオ]が放送を始めた。ついでにこちらの用件も伝えてもらうべく、魔法で連絡を取った。

『また、簡易的なものですが医務室もご用意しました。もし怪我をされている方や体調が優れない方がいればご利用ください』

 ヴァン[ミオ]がすぐに対応してくれた。あとは待ち構えるだけだ。

「えっと、ヴァン様。ここまでしてもらって申し訳ないのですが、女性が来られるかもしれないのでヴァン様は……」

 エルリアが躊躇いがちに進言すると、案の定医務室に女性がやってきた。怪我の手当てとなれば服を脱ぐケースもあるかもしれない。それに、ヴァンは居るだけでプレッシャーをかけてしまう存在だ。ヴァンは席を外すことにした。

「俺は壁の外で給湯器になってくるよ。困ったら声かけてくれ」
「ま、まあ……。スナキア家当主様の魔法がまさかそんなことに……」

 水道の機構をバリアで再現しても自動で水を温める機能は作れなかった。ヴァンが随時魔法で熱する形となる。世界最強の魔導師が担当するには細かすぎる仕事だ。しかし大事な妻の手を冷水で震えさせるわけにはいかない。

「何だか、聞けば聞くほど魔法って便利ですわね。<検閲されました>でも色々応用できそうな気が……」
「や、やめとけ」

 エルリアが隠語を放ったため、訪れた怪我人の女性がギョッとしていた。ヴァンは咳払いを一つ置き、退出する。

「じゃああとは頼んだぞ、『七つの海より広き心を持つ者』」
「……ヴァン様? おふざけでしたら引っかきますわよ?」

 エルリアはいつものお上品な微笑みを崩してヴァンに怪訝な瞳を向けた。人前だから名前で呼ばないようにしただけなのに。そして数字で呼びたくなかっただけなのに。

 何にせよこれで医務室の設置は完了。ヴァンは壁の外でホッと一息つく。待機しているだけで暇なので、他のヴァンの動向を確認する。加勢が必要な場所があったら分身を増やして駆けつけるつもりだ。

 ふと、あるヴァンから連絡が届く。

(こちら、あー……、ヴァン[X]と呼称する。ちょっとやることができた)
(こちらヴァン[エル]。何か手伝うか?)
(いや、問題ない。報告だけさせてくれ。俺はある極秘任務に取りかかる。詳細は明かせないが、危険な仕事ではないから心配しないでくれ)

 ヴァン[エル]はその奇妙な報告を訝しみ、腕を組んだ。

(俺が俺に話せない理由は?)

 あちらもこちらもヴァンである。極秘もクソもない。

(気遣いだ。俺への。そして妻への)
(……?)
(あ、サボってるわけじゃないぞ。本当に大事な仕事なんだ。もし人手が足りない場所があればこちらからも分身を割ける。いつでも連絡してくれ。あと、そちらの情報は随時送ってほしい。特に妻の動向は)

 ヴァン[X]とやらはそう言い残し、交信を断った。

 意味不明である。だが「妻への気遣い」ということなら何も問題ないだろう。ヴァン[エル]は気にせず、大人しく給湯器になりきることにした。
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