ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第04話 一家総出の救出作戦

13.このための強さ

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 避難所のある学校の裏手には山々が並んでいる。ここミカデルハ市を他の地域と隔絶させている原因だ。傾斜はきつく、普段から人が立ち入るのはあまり好ましくないほど。その上本日は大雪である。

「こ、こいつは……」

 ヴァンは麓から山を見上げる。雪の津波が木々を薙ぎ倒しながら地上に迫る。最前線の雪は次々と味方を集めて厚みを増し、爆風のような雪けむりを撒き散らす。禍々しさを孕んだ轟音がしんと冷えた空気を伝う。

 放っておけばものの二十秒後には避難所を襲撃するだろう。大自然は脅威。人間にはなす術もない。しかしヴァンはただの人間ではない。全世界の軍から総攻撃を受けても耐えうる最強の魔導師だ。

「バリア展開……!」

 ヴァンは防御魔法で待ち構える。その規模は広大。避難所、山際の家々の前に衝立を作る程度ではなく、山を丸ごと薄赤い半透明のドームで囲った。一粒の雪すら漏らさない。────これ以上、この街の人たちに辛い思いはさせられない。

 雪崩は恐ろしい。標高、傾斜、雪の状態によってその衝撃は大きく左右されるが、高速道路を走る無数のトラックが途切れなくラッシュをかけてくる程度だと思って間違いない。

(援護要請! 雪崩を止める! 余力がある俺は避難所に来てくれ!)

 ヴァンは全分身に交信する。現在ヴァンはここミカデルハ市だけではなくガミラタ国内全土で救助活動を続けており、分身の数は十万を超える。ここにいるヴァンは十万分の一程度の魔力しか割り当てられていないことになる。三万分の一の状態でウィルクトリア全軍の攻撃を耐えた経験を鑑みると問題はないはずだが、ミスは絶対許されないこの状況では余裕を持っておきたい。

 次々と各分身がこのヴァンに集結してくる。三千分の一程度まで回復しただろうか。魔力が溢れ出るようだ。これなら守り切れる。それに、住民を怯えさせないように一工夫する余力もできた。

 ヴァンは展開したバリアを微調整し、一切の光を遮って漆黒に染め上げる。住民には見せることすらしない。さらに音への防御力も極限まで高めると、唸り声を上げていた雪崩が凪の如く大人しくなった。

 ヴァンはバリア内部に自衛と飛行だけ可能な程度の僅かな魔力を割いたヴァン[観測]を送り込み、随時雪崩の動きを報告させる。

(バリアとの衝突まで、三、二、一……)

 カウントダウンを受け、ヴァン[バリア]は集中力を高めて待ち構える。

 ────衝撃。

「……クッ!」

 脅威的な重さ。しかし耐えられないほどではない。

「うおおおおおおお……!」

 思わず漏れる咆哮。最前線の襲来は抑え込んだ。遅れて次々と押し寄せる雪の群れによって増す重量をヴァンは懸命に受け止めた。十数秒後、ヴァン[観測]から報告。

(雪崩の動きが止まった。もう大丈夫だ)

 ヴァン[バリア]はホッと息を吐く。制圧完了だ。ヴァン[観測]を回収し、一人に戻る。

「みんな、終わったぞ!」

 ヴァンが避難所にいる妻たちに向けて声を張ると、内部から八人がぞろぞろと現れた。全員、山を覆う暗黒のドームを見て目を見開いていた。

「山ごといったのねぇ……すごいわヴァンさん」

 ミオがもはや呆れてしまうとばかりに肩をすくめた。ヴァンは褒められたのが嬉しくて存分にニヤけた。こういうことに自分の強さを使えるなら、スナキア家に生まれて良かったなんてらしくない思いを抱ける。

「これで被害はない。……ただ、雪をどうするかな」

 次の課題は堆積した雪の処理だ。バリアと接した部分は十数メートルの高さまで積み上がった雪がもたれかかっている。あまりに莫大な量だ。

「魔法で溶かすか……? いや結局水の処理に困るか。いっそ蒸発するほど熱するってのも……いや、木が燃えてしまうな」

 エルリアが良いこと思いついたとばかりに手を胸の前で合わせた。

「ヴァン様、また蛇口を作ってみてはいかがですか? 飲むのはちょっとアレですが、生活用水には使えるでしょうし!」
「……! なるほど」

 雪自体は上手く使えば有用なものだ。無限にあることは悪いことではない。問題は先ほどキティアが水道の設営に苦言を呈した理由だが────。

「ヴァンさん、これ透明にもできます?」

 キティアが尋ねる。彼女も同じことを考えていたらしい。ヴァンはバリアを調整し、透明度を高めた。盛り上がった雪が避難所からも明らかになる。

「……これなら取り合うのもバカらしくなるな」

 いくら使ったってなくなりはしないだろう。

 ヴァンは早速蛇口を大量に生成した。そしてバリアを少し温め、接する部分がゆっくりと溶け出す仕組みにした。

「それでも流石に多すぎるだろうし見栄えも威圧感があるから、ある程度は俺が除雪しておこう」

 手に持てるだけ持ってテレポートで海にでも捨ててこよう。地道な作業だが、数千人でやればすぐ減らせるだろう。

「さあ、今度こそ俺たちの仕事は終わりだな」

 ヴァンは全員に笑顔を向ける。スナキア家の災害救助作戦は大成功だった。

「うん。お家に帰ろっ。ヒューはもう眠たくなってきたよ……っ」

 ウィルクトリアはもう夜の十時を回った。疲れていることだし、ゆっくり休みたいところだろう。だがヴァンは、彼女たちをこのまま連れ帰る気はなかった。

 先ほど援軍を要請したとき、何をしていたのか不明のヴァン[X]も合流した。彼の記憶が今のヴァンにはある。

「家よりいい場所があるんだ」

 ヴァンは意味ありげに告げ、八人を攫う。
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