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1章 葉月と樹
葉月・・・語る。
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「久住 樹が好きなんだろう?だが、兄貴は、由梨奈にまだ惚れてる。」
弟久住さんのその眼の鋭さに、言葉を返す事ができず、私は逃げるように一歩後ろへと下がったが、軽く頭を横に振り笑った。
弟久住さんの顔が困惑した顔で、固まったように足が止まり
「なんで、なんで笑ってる?!笑える事じゃないだろう!!」
「ですよね…でも」
「でも…なんだよ。」
「久住さんの心は…久住さんだけのものだから…。弟久住さんが勝手に、久住さんが由梨奈さんを好きだというのは、なんだか違う気がします。由梨奈さんを好きなのか、今何を考え、何をしようとしているのかは…久住さん、本人しかわからないことです。なのにコンビニの裏で私達が、どうこう言っているのが、なんだか可笑しくなっちゃって…。」
弟久住さんは苦虫をかみつぶしたような顔で私を見ると
「なに…言ってるんだよ。お前、あいつを好きなんだろう。なのに、なんで笑える。何でだよ!」
「私はただ…久住さんが顔をくしゃくしゃに笑う顔が見たいんです。」
「えっ?」
「初めてあった時、泣いていたから…ううん、泣いている事もわからないくらい、傷付いた心を抱えていたから…もうあんな顔を見たくないんです。」
「泣いていた?あいつが?」
そう言って、弟久住さんは俯くと
「あいつも…泣くのか…。頭が良くて、容姿端麗で、望んだ物は簡単に手に入れるようなあいつが…?あんなに恵まれている奴がか?」
「恵まれている?久住さんが?幼い頃、両親と引き離され、久住本家に連れて来られた久住さんがですか?あなたが生まれ、久住本家で居場所を無くした久住さんがですか?10年前、ようやく愛情を見つけ、好きだった人の中に、自分の居場所を見つけたのに…その好きな人が来なかった駅で、彷徨い歩き、支えていたものがなくなった久住さんがですか?!!」
「おまえ…」
「どこが恵まれているんですか!支えていたものを失ったあの喪失感を…あなたは知らないから…。」
「俺だって!いつもあの出来すぎるあいつに親の愛情も、人からの賛美も…そして…好きな人も…すべて盗られて、苦しくて、悲しくて堪らない思いを味わったんだ!」
「…苦しみや悲しみを感じる間はまだ…生きているわ。」
「…なんだよ。それは…」
「支えていたのものを失った時は…心はなんにも感じない。」
そうだ、なんにも感じなかった。
あの雨の中で知らない男に、押し倒されたのに…恐怖さえも感じなかった。
あの時母が…小さくなって箱に入った母が、私の腕の中から、落ちて行かなければ、私はこの現実の世界に戻って来れなかった。
「なに偉そうに言ってんだよ。尻に火が付いてるくせして。」
そう言って、クスリと笑うと…
「偉そうに仰る高宮 葉月嬢、いったいどうされるんですか?自分の父親が王様で、おまけにあの国は、政変で失脚したはずの王様の兄一家がはびこり、復権を狙っているらしいぜ。お前を担ぎ出してなぁ。国民が納得できるやり方で、今回は王位を盗りたいらしい。そしてうちの婆さんだ。」
弟久住さんの言葉に、私はハッとした。そうだ、そうだった。
「聞かせろよ。またありがたい話にして聞かせろよ。どうするんだ、この状況をどうするんだよ。」
・
・
・
どうしたらいいのかなんて、わからなかった。ただ、弟久住さんの言葉に、カチンときて
「だいたい血に拘る久住家も!王政でもないに、王位に拘る…その…ウッ…何とか国も、時代遅れよ!いったい何時代の話って感じ、バカバカしい。そんな人たちとは係わり合いになりたくないので、私は今まで通りに生きて行きます、以上!」
「…はぁ?」
間の抜けた弟久住さんの声に、突然パチパチと拍手が重なり、私と弟久住さんが、何事かとお互い顔を合わせた時だ。
「アハハ…さすが…姫君はいうことが違う。」
と楽しそうに弾んだ声が聞こえて、積み重なったダンボールの間から出て来た、その声の持ち主は、赤い髪の間から見える緑の瞳で私を見ると
「やっと見つけた。僕のお姫様。」と言って、呆然としている私に、悠然と微笑みかけた。
弟久住さんのその眼の鋭さに、言葉を返す事ができず、私は逃げるように一歩後ろへと下がったが、軽く頭を横に振り笑った。
弟久住さんの顔が困惑した顔で、固まったように足が止まり
「なんで、なんで笑ってる?!笑える事じゃないだろう!!」
「ですよね…でも」
「でも…なんだよ。」
「久住さんの心は…久住さんだけのものだから…。弟久住さんが勝手に、久住さんが由梨奈さんを好きだというのは、なんだか違う気がします。由梨奈さんを好きなのか、今何を考え、何をしようとしているのかは…久住さん、本人しかわからないことです。なのにコンビニの裏で私達が、どうこう言っているのが、なんだか可笑しくなっちゃって…。」
弟久住さんは苦虫をかみつぶしたような顔で私を見ると
「なに…言ってるんだよ。お前、あいつを好きなんだろう。なのに、なんで笑える。何でだよ!」
「私はただ…久住さんが顔をくしゃくしゃに笑う顔が見たいんです。」
「えっ?」
「初めてあった時、泣いていたから…ううん、泣いている事もわからないくらい、傷付いた心を抱えていたから…もうあんな顔を見たくないんです。」
「泣いていた?あいつが?」
そう言って、弟久住さんは俯くと
「あいつも…泣くのか…。頭が良くて、容姿端麗で、望んだ物は簡単に手に入れるようなあいつが…?あんなに恵まれている奴がか?」
「恵まれている?久住さんが?幼い頃、両親と引き離され、久住本家に連れて来られた久住さんがですか?あなたが生まれ、久住本家で居場所を無くした久住さんがですか?10年前、ようやく愛情を見つけ、好きだった人の中に、自分の居場所を見つけたのに…その好きな人が来なかった駅で、彷徨い歩き、支えていたものがなくなった久住さんがですか?!!」
「おまえ…」
「どこが恵まれているんですか!支えていたものを失ったあの喪失感を…あなたは知らないから…。」
「俺だって!いつもあの出来すぎるあいつに親の愛情も、人からの賛美も…そして…好きな人も…すべて盗られて、苦しくて、悲しくて堪らない思いを味わったんだ!」
「…苦しみや悲しみを感じる間はまだ…生きているわ。」
「…なんだよ。それは…」
「支えていたのものを失った時は…心はなんにも感じない。」
そうだ、なんにも感じなかった。
あの雨の中で知らない男に、押し倒されたのに…恐怖さえも感じなかった。
あの時母が…小さくなって箱に入った母が、私の腕の中から、落ちて行かなければ、私はこの現実の世界に戻って来れなかった。
「なに偉そうに言ってんだよ。尻に火が付いてるくせして。」
そう言って、クスリと笑うと…
「偉そうに仰る高宮 葉月嬢、いったいどうされるんですか?自分の父親が王様で、おまけにあの国は、政変で失脚したはずの王様の兄一家がはびこり、復権を狙っているらしいぜ。お前を担ぎ出してなぁ。国民が納得できるやり方で、今回は王位を盗りたいらしい。そしてうちの婆さんだ。」
弟久住さんの言葉に、私はハッとした。そうだ、そうだった。
「聞かせろよ。またありがたい話にして聞かせろよ。どうするんだ、この状況をどうするんだよ。」
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どうしたらいいのかなんて、わからなかった。ただ、弟久住さんの言葉に、カチンときて
「だいたい血に拘る久住家も!王政でもないに、王位に拘る…その…ウッ…何とか国も、時代遅れよ!いったい何時代の話って感じ、バカバカしい。そんな人たちとは係わり合いになりたくないので、私は今まで通りに生きて行きます、以上!」
「…はぁ?」
間の抜けた弟久住さんの声に、突然パチパチと拍手が重なり、私と弟久住さんが、何事かとお互い顔を合わせた時だ。
「アハハ…さすが…姫君はいうことが違う。」
と楽しそうに弾んだ声が聞こえて、積み重なったダンボールの間から出て来た、その声の持ち主は、赤い髪の間から見える緑の瞳で私を見ると
「やっと見つけた。僕のお姫様。」と言って、呆然としている私に、悠然と微笑みかけた。
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