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第二章 10年前の恋
私は高宮 葉月。
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「私は…」
瞬きもせず、じっと見つめるその目が恐くて、声が出なかった。
その人は、クスリと笑うと、自称王子様に視線を移し
「殿下、感謝いたします。」
「久住のものから、感謝される覚えはない。」
「いいえ、殿下がレディ・ウェンデイに接触して頂けたから、それはもう簡単に、彼女の素性がわかったわけですから。」
自称王子様は、舌打ちをすると
「Wendyに、なにようだ。」
「私、助けに参りましたのよ。」
「…助け?」
「えぇ、このままだと…レディ・ウェンディは、ウッドフォード国の次の王位を狙う方々の、贄になりそうなんですもの。そんな目にならないように、遠縁にあたる久住家が守ってあげたくて…」
「笑わせるなよ、久住のばーさん。あんただって、ハイエナじゃないか!?Wendyを使って、ウッドフォード国から何を盗るつもりだよ。」
目の前で繰り広げられる言い争う声が…だんだんと遠くなってゆく。
勝手に、勝手に…私の名前を変えないでよ。私は…ウェンディじゃない。私は…
「私は…」
「私は…葉月だから…」
と言った声は、小さくて掠れていたが、2人は驚いたように、私を見た。
「Wendy…?」
「レディ・ウェンディ?」
勝手に私をそう呼ばないで、お母さんは、私を葉月って呼んでいたんだもの、だから私は葉月以外の名前はないもん。
…私は高宮 葉月だもん。
「私は高宮 葉月です。ウェンデイじゃありません!」
その人はクスクスと笑い出し
「あらあら、レディ・ウェンディはまだわかっていらっしゃらないようね。」
《恐くなんかない。》
何度も心の中で叫び、私はぎゅっと手を握り締めた。
でも、言葉が浮かばない。
なにか…なにか言わないと…この人に飲み込まれる。
負けない。絶対負けたくない。
「…どういう意味ですか?」
「価値よ。」
「価値?」
「そう…あなたの価値よ。小国とはいえ、豊かな地下資源と温暖な気候に恵まれ、ヨーロッパではリゾート地としても有名なウッドフォード国のあなたは正統な後継者、そして世界最大の企業グループである久住グループの血もその体に流れる…あなたは尊い血筋なの。名門、そして権力を欲する者にとってはあなたを誰もが欲しがるわ。」
「何を…言っているんですか?例え、私にその血が流れていたとしても、私自体はなんにも力はないんですよ。」
「ほんとわかっていないわね。女は血筋なの。その尊い血を後の世代へと繋げるのが仕事。王家にしろ、久住のような名門にしろ、同じように人の上に立つものは、庶民と同じでは威厳がないの。成り上がりはお金で、庶民と差をつけ、ひれ伏せようとするけど…庶民が本当にひれ伏すのは、尊い血筋の者にだけ。あなたにはそれがあるの。」
女は子供を生むための道具だから…血筋さえ良ければ良い…って言ってる?それに私が当てはまるから、名門、そして権力を欲しいと思っている人にとっては、私は良い物件ってこと?
《庶民が本当にひれ伏すのは、尊い血筋の者にだけ。》って…何それ?
私の頭の中で、水戸 黄門のご一行が印籠を出す映像が流れた。
私は顰めた顔で
「それ…いいです。私はいりません。」
「あなたって人は…」
睨むように私を見つめるこの女性に、恐くて声は出なかったけど、視線だけは逸らさないでいた。
お店の中の誰もが口を開かなかった。
沈黙を破ったのは…
「婆様。あなたこそわかっていない。」
と言って、ゆっくりとした足取りでお店に入ってきた人。
その姿が揺らいで見えたけど、間違いない。私を守るって言ってくれた人だ。
「…久住さん…。」
私の声に久住さんは、目を伏せ…
「昨日の今日でカッコ悪いけど…でも…」
と言って顔を上げ、口元に綺麗な弧を描き
「君を守りたいから…カッコ悪くてもいいや思ったんだ。」
晴れやかにそう言って破顔すると…
「間に合ったかい?葉月ちゃん。」
私は何度も何度も頷き、溢れてくる涙を袖で拭いながら、
「はい!」と力強く返事をした。
久住さんは微笑んで、私から…あの女性に、久住 華子さんに視線を移し
「婆様のその価値観には、もううんざりです。これ以上、その価値観で人の人生を振り回すのなら…俺は許さない。」
「どういう意味?」
「言葉通りです。久住 華子さん。」
「樹?!」
「あなたを久住から、追い出す。」
それは…私が知っている久住さんではなかった。
瞬きもせず、じっと見つめるその目が恐くて、声が出なかった。
その人は、クスリと笑うと、自称王子様に視線を移し
「殿下、感謝いたします。」
「久住のものから、感謝される覚えはない。」
「いいえ、殿下がレディ・ウェンデイに接触して頂けたから、それはもう簡単に、彼女の素性がわかったわけですから。」
自称王子様は、舌打ちをすると
「Wendyに、なにようだ。」
「私、助けに参りましたのよ。」
「…助け?」
「えぇ、このままだと…レディ・ウェンディは、ウッドフォード国の次の王位を狙う方々の、贄になりそうなんですもの。そんな目にならないように、遠縁にあたる久住家が守ってあげたくて…」
「笑わせるなよ、久住のばーさん。あんただって、ハイエナじゃないか!?Wendyを使って、ウッドフォード国から何を盗るつもりだよ。」
目の前で繰り広げられる言い争う声が…だんだんと遠くなってゆく。
勝手に、勝手に…私の名前を変えないでよ。私は…ウェンディじゃない。私は…
「私は…」
「私は…葉月だから…」
と言った声は、小さくて掠れていたが、2人は驚いたように、私を見た。
「Wendy…?」
「レディ・ウェンディ?」
勝手に私をそう呼ばないで、お母さんは、私を葉月って呼んでいたんだもの、だから私は葉月以外の名前はないもん。
…私は高宮 葉月だもん。
「私は高宮 葉月です。ウェンデイじゃありません!」
その人はクスクスと笑い出し
「あらあら、レディ・ウェンディはまだわかっていらっしゃらないようね。」
《恐くなんかない。》
何度も心の中で叫び、私はぎゅっと手を握り締めた。
でも、言葉が浮かばない。
なにか…なにか言わないと…この人に飲み込まれる。
負けない。絶対負けたくない。
「…どういう意味ですか?」
「価値よ。」
「価値?」
「そう…あなたの価値よ。小国とはいえ、豊かな地下資源と温暖な気候に恵まれ、ヨーロッパではリゾート地としても有名なウッドフォード国のあなたは正統な後継者、そして世界最大の企業グループである久住グループの血もその体に流れる…あなたは尊い血筋なの。名門、そして権力を欲する者にとってはあなたを誰もが欲しがるわ。」
「何を…言っているんですか?例え、私にその血が流れていたとしても、私自体はなんにも力はないんですよ。」
「ほんとわかっていないわね。女は血筋なの。その尊い血を後の世代へと繋げるのが仕事。王家にしろ、久住のような名門にしろ、同じように人の上に立つものは、庶民と同じでは威厳がないの。成り上がりはお金で、庶民と差をつけ、ひれ伏せようとするけど…庶民が本当にひれ伏すのは、尊い血筋の者にだけ。あなたにはそれがあるの。」
女は子供を生むための道具だから…血筋さえ良ければ良い…って言ってる?それに私が当てはまるから、名門、そして権力を欲しいと思っている人にとっては、私は良い物件ってこと?
《庶民が本当にひれ伏すのは、尊い血筋の者にだけ。》って…何それ?
私の頭の中で、水戸 黄門のご一行が印籠を出す映像が流れた。
私は顰めた顔で
「それ…いいです。私はいりません。」
「あなたって人は…」
睨むように私を見つめるこの女性に、恐くて声は出なかったけど、視線だけは逸らさないでいた。
お店の中の誰もが口を開かなかった。
沈黙を破ったのは…
「婆様。あなたこそわかっていない。」
と言って、ゆっくりとした足取りでお店に入ってきた人。
その姿が揺らいで見えたけど、間違いない。私を守るって言ってくれた人だ。
「…久住さん…。」
私の声に久住さんは、目を伏せ…
「昨日の今日でカッコ悪いけど…でも…」
と言って顔を上げ、口元に綺麗な弧を描き
「君を守りたいから…カッコ悪くてもいいや思ったんだ。」
晴れやかにそう言って破顔すると…
「間に合ったかい?葉月ちゃん。」
私は何度も何度も頷き、溢れてくる涙を袖で拭いながら、
「はい!」と力強く返事をした。
久住さんは微笑んで、私から…あの女性に、久住 華子さんに視線を移し
「婆様のその価値観には、もううんざりです。これ以上、その価値観で人の人生を振り回すのなら…俺は許さない。」
「どういう意味?」
「言葉通りです。久住 華子さん。」
「樹?!」
「あなたを久住から、追い出す。」
それは…私が知っている久住さんではなかった。
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