魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第0章 始まりの戦い

第十九話 硬い敵

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「またシミュレータですか。」

 クロノスのコックピットにいつも通りいたアルバートはその声に顔を上げる。

「エチュード少佐。」
「あまりエミリア様に構わないとどうなっても知りませんよ?」

 チクリと嫌味を言われる。

「それは分かっていますが、いざというときのためにも力は必要ですし。」
「それについては否定しません。」

 いざというときにエミリアを守ってもらわないと困るというのは彼女も同意見であった。

「それよりも大尉からなにか言われたのですか?」
「いえ、直接あなたに言えとかは言われていませんが、ただかなり不満が溜まっていそうでしたので。」

 やっぱり発端はエミリアかとため息をつく。

「いいんですよ。たまにはほっとけば。」
「エミリア様は幼年学校のときからシミュレータばかりで遊んでくれないと仰ってましたが。」
「……。」

無言の沈黙が続く。

「後でちょっと様子を見に行きます。」
「そうしてください。」

 エマソンはそう言うと自分の持ち場に戻ろうとする。

「あ、そういえばエイブラウ大佐から少尉に伝言です。」
「隊長がですか?」
「今度またマリノアス基地に攻撃を仕掛けることになります。そのときエミリア様と敵の防空設備を破壊してもらうので、対空砲火を避けられるようにしておけとのことです。」
「分かりました。」
「それじゃあ、私はこれで。」

 エマソンが去ったのを確認するとアルバートはため息をついた。

「エミリアにシミュレーションやらせながら機嫌取ればいいか。」



「帝国もよくも飽きずにマリアノス基地に攻撃しますね。」
「まぁあそこが一つの要衝だからね。」

アインはヴィエント・バラノフの部屋でコーヒーを飲んでいた。彼女を助けて以来、アインは彼女と行動を共にせざるを得なくなることが多かった。
 そのせいでアズリトから睨まれることが増えたがアインにはどうすることもできなかった。
 それにアイン自身、彼女と過ごすのは割と心地よかったりもした。

「でしたら自分たちが常駐してた方が良かったりするのではないでしょうか?」
「それなら大丈夫よ。新型のアスピドケロンがいるから。」
「なんですか? その機体。」
「亀みたいに硬いやつ。」

 亀みたいに硬いって、なんなんだろうとアインは思う。

「辛うじて動くことが可能な重装甲のキャスターよ。まぁ言うならば戦車みたいなの。確かキャスターの攻撃なら大気圏内なら理論上全ての兵器は無効化できたはずだし。」

 まぁ例外はあるけどとヴィエントは付け加えるとコーヒーを飲む。

「そんなに硬いんですか?」
「まず、通常の装甲だけで艦砲射撃にも耐えられる。そこにキャスターの防壁が加わればどんなものでも耐えられるみたいよ。」
「パイロットの消耗とかはどうなんですか?」
「それもそこまで大きくないみたい。まず動かないからそんなにエネルギーも使わないし、基地からも直接給電しているから。」
「それにしてもすごい発想ですね。動かさないで攻撃をさせるとか。」
「ただデメリットはコストがね……。一気でデュラハン四十機くらいするみたいよ。」
「大隊一個クラスですか。」
「まぁどこまでやれるのか見ものね。」

 そう告げるヴィエントの瞳は少し楽しみそうだった。



『小隊各機、今回の目的はあくまで揚陸部隊の支援だ。敵の撃滅ではない。そこを決して忘れるなよ。特にアークウィン少佐とデグレア少尉。君たちは敵の撃墜経験は豊富だが実戦での支援任務はあまりない。あまり敵機の撃墜ばかりに気を取られるなよ?』

 ブライムからの指示にアルバート達はうなづきながら攻撃を始める。

『アル、私たちはエリア24を攻撃するわ。付いてきて。』

 先行するエミリアのクロノスの後を付いていく。基地に接近すると対空砲火が激しくなり、反撃が凄いため中々近寄れない。しかし、決して不可能ということではなかった。

『爆撃用意。』

 エミリアの指示に従い、クロノスの機体の向きを地面に対し水平にする。そして機体前面にブサイクな形ではあるが取り付けられているウェポンラックのハッチを展開する。

『爆撃開始!』

 その指示に合わせて無誘導弾による爆撃を始める。
 一列辺り七個、それを互い違いにしながら五十列にも及ぶ爆弾の投下を始める。
 何割かは防衛装置によって撃ち落されるがそれでも少なくない数が防衛施設に着弾する。
 多数の防空設備とともに、こんかいターゲットであった対艦砲も煙に包まれている。

「やったか?」

 アルバートは機体の高度を少し落とす。
 その時基地の路面にあるエレベーターが動く。

『まだ来るみたいね。』
「みたいですね。攻撃は?」
『一応私たちの目的は基地の防衛設備の破壊よ。出てくるものが防衛設備なら破壊対象だしそうでないなら上からの判断を仰ぐわ。』

 そのときレーダーに魔術反応が現れる。

「敵キャスター反応。」
『少し待ってて。』

 エミリアはそう言って司令部と確認をとるのでその間にアルバートはそのキャスターを注意深く見守る。

「新型機か。だがあの形は……。」

 アルバートがそのキャスターをよく見るとその機体は普通とは違う形だった。
 まるで足が無く亀のような、一昔前の駆逐戦車のような機体だった。

「データにはなんの情報も無いな。」

 各部にどんな武装があるか確認をする。そのときだった。機体にロックオンされたというアラートが鳴り響く。そして亀のような新型であるアスピドケロンの各部に搭載されている砲口が光る。

「プラズマライフル持ちか。」

 すぐに回避行動をとる。その次の瞬間、クロノスのすぐ横を、全幅が十メートル程度あるキャスター数機を飲み込める太さのプラズマの筋が走る。

『少尉!』
「問題はありません。ただ……。」

 あれは今までの機体とは違う。その予感がアルバートにはあった。



「無駄無駄! この機体には普通の攻撃なんて効かないわよ!」

 ヘンリッヒは叫びながらトータスのプラズマライフルを連射する。

「しかも電力は基地につながれているのよ!」

 何発も攻撃をする。だがその攻撃はアルバート達に被弾することは無かった。

「それにしてもラッキーだったわ。まさかこんなに早く会えるとは思っていなかったわぁ! アルバート・デグレア!」

 そう興奮気味にヘンリッヒは叫ぶ。

「私に仲間殺しをさせたこと、存分に公開させてやるわ!」
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