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第一章 再び始まった戦争
第十八話 襲撃(2)
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エミリアは目の前の光景を直視するのが辛かった。
アルベルト・シュタイナーは巨大なサイボーグと殴り合っていた。
小柄な青年が何度もボロボロにされながら彼女を守るために立ち向かう。そんな光景は今まで何回か見てきた。だからこそエミリアはもういいと思うものの、彼の気迫がその言葉を発することを許さない。
しかしそんな彼も何回か地面にたたきつけられると、立ち上がるまで時間がかかる。その間にサイボーグがエミリアに拳銃を向けようとする。しかしその前に立ち上がったアルベルトは拳銃の銃身をもって強引に軌道を変える。そのまま彼は敵の膝にナイフを突き立て、体勢を崩させた後馬乗りになってひたすらに殴り込んでいた。
そんなことをしたところで強化外骨格を埋め込まれたサイボーグに効果があるはずはなかった。実際対サイボーグ用の装備がなければ彼らを倒すことはできない。
エミリアはそれが分かっていたからこの場でどう逃げるかを考えていた。そして彼が彼女を置いて逃げても責めることはできないと、そう考えていた。
それでも彼は拳を血まみれにしながらもひたすら殴りかかっていた。
しかし一方的にやられているわけもなくアルベルトは再び壁にたたきつけられていた。それでもなおアルベルトはすぐに立ち上がり、手近に武器になりそうなものでなぐりかかる。そしてサイボーグが姿勢を崩す度に馬乗りになって彼は殴り続けていた。彼の様子はとうに限界など超えているように彼女には見えた。
しかしその執念が事態を変えた。サイボーグの口周りの骨格が少し歪んだ。アルベルトはそれを当然見逃さず巨漢の口に銃身をねじ込む。普段であればそんなものは強化された顎によって粉々に噛み砕かれていた。しかし、アルベルトの執拗な打撃によって、銃を破壊するほど強い力で銃身を噛むことは既に不可能であった。
そのまま彼は躊躇うことなく引き金を引いた。乾いた音と共にサイボーグはその機能を停止した。
アルベルトは立ち上がるとサイボーグの頭を蹴り死んだことを確認する。そしてゆっくりとエミリアの方を向く。
「大丈夫ですか。」
そう聞いてくる彼の方が大丈夫ではなかった。
「え、えぇ。あなたのおかげで大丈夫よ。」
「そうですか。なら、良かった。」
アルベルトは近くにある壁にもたれ掛かり、ゆっくりと座る。
「早く、安全な場所に逃げた方がいいですよ。自分ももう限界ですし。」
アルベルトはそう言うと目を閉じる。
「シュタイナー少尉!」
エミリアが呼び掛けるも彼はそれに応答はしなかった。そして彼女の声に合わせてサイボーグがもう一体すぐに現れる。
彼女は彼を守ろうとその体を抱いて自分の体を盾にするようにした。
しかし、その瞬間背後からの軽い足音と共にサイボーグの頭を蹴飛ばすものがいた。
*
「今の声、大佐の声です!」
エミリアを探していたアルバートは一緒に探してくれているイオクにそう伝える。
イオクはそう聞くと声のした方に長い栗色の髪をなびかせながら走り出す。
アルバートも彼の後ろを走り、エミリアがいる場所に走った。
イオクは敵を確認するなりすぐに拳銃を撃つ。しかし金属の甲高い音と共に銃弾が弾かれる。
「サイボーグタイプか。」
アルバートは対サイボーグ用の装備を持っていなかったため、どうするべきか考える。
その瞬間にイオク・リャーエフは対サイボーグ用のレーザ銃を取り出し巨漢の心臓にレーザを一秒程度照射した。高出力のレーザは骨格などを破壊することは無いが、血液を沸騰させ人工血液がサイボーグの各所から漏れ出すと倒れた。
それにアルバートは全く対応できなかった。
「やっぱりこれ使うと暑いなぁ。」
イオクはサイボーグが停止したか確認するため、その頭を小突きながら愚痴を吐いていた。
「大丈夫ですか、アークウィン大佐? ってシュタイナー準尉!?」
緊張感の無い声でイオクは帝国語でエミリアに対してそう訪ねた。しかし、血塗れになっているアルベルトを見るや否やそう叫ぶ。
「早く彼を医務室に。」
エミリアの言葉にイオクは頷くと彼を背負い、戦闘箇所がないところを選びながら医務室に向かった。
*
「司令。」
イオクは立ち上がると軽くユリアに対して敬礼をする。
「少尉の容態は?」
「命に別状はありません。サイボーグを殴って頭突きして。医者の話では今日明日様子を見ればそれで良いとのことです。」
その言葉と共にユリアはアルベルトが入っている病室のドアを不躾に開ける。薬品の臭いと共に明るく彩られた室内の椅子に座っている人間が振り返る。
「エミリア・アークウィン大佐。」
金髪の女性に対してユリアは言葉を詰まらせるように言う。
「ユリア・ベッソノワ准将。」
エミリアは座っていた椅子から立ち上がると彼女の方を見て、深々と頭を下げる。そのドレスは血まみれであったが、怪我はないのか処置などを受けてはいなかった。
「この度はありがとうございました。」
「いえ、私は別に何も。」
そう答える他なかった。
「ですが、リャーエフ少佐やシュタイナー少尉のお陰で私が助かったことは事実です。」
「そうですか。本人たちにもそう伝えておきます。きっと喜ぶでしょう。」
「それと部外者の私がこのような差し出がましいことかもしれませんが、少しシュタイナー少尉とお話をしてみてはいかがでしょうか。」
「彼がなにか不満でも言っていましたか?」
ユリアはエミリアの一言に顔を強張らせながらも剣呑とした声でエミリアに聞き返してしまう。その彼女の言葉にエミリアは怯むことなく、言葉を続けた。
「いえ、本人の口から直接なにかを聞いた訳ではありません。ただ、私の思い過ごしならばいいのですが、昔彼によく似た人がいました。今の少尉の様子がその人が思い詰めている時の様子と似ていたので。」
アルベルトになにか不利益なことが起こらないよう、エミリアは言葉を選びながらユリアに現状をそっと伝える。
「そうですか、分かりました。時間が出来次第そのようにします。」
それがユリアが今ここで答えられる精一杯の回答であった。そしてその一言だけで病室から出ていく。
その胸中には色々な物が渦巻いていた。
アルベルト・シュタイナーは巨大なサイボーグと殴り合っていた。
小柄な青年が何度もボロボロにされながら彼女を守るために立ち向かう。そんな光景は今まで何回か見てきた。だからこそエミリアはもういいと思うものの、彼の気迫がその言葉を発することを許さない。
しかしそんな彼も何回か地面にたたきつけられると、立ち上がるまで時間がかかる。その間にサイボーグがエミリアに拳銃を向けようとする。しかしその前に立ち上がったアルベルトは拳銃の銃身をもって強引に軌道を変える。そのまま彼は敵の膝にナイフを突き立て、体勢を崩させた後馬乗りになってひたすらに殴り込んでいた。
そんなことをしたところで強化外骨格を埋め込まれたサイボーグに効果があるはずはなかった。実際対サイボーグ用の装備がなければ彼らを倒すことはできない。
エミリアはそれが分かっていたからこの場でどう逃げるかを考えていた。そして彼が彼女を置いて逃げても責めることはできないと、そう考えていた。
それでも彼は拳を血まみれにしながらもひたすら殴りかかっていた。
しかし一方的にやられているわけもなくアルベルトは再び壁にたたきつけられていた。それでもなおアルベルトはすぐに立ち上がり、手近に武器になりそうなものでなぐりかかる。そしてサイボーグが姿勢を崩す度に馬乗りになって彼は殴り続けていた。彼の様子はとうに限界など超えているように彼女には見えた。
しかしその執念が事態を変えた。サイボーグの口周りの骨格が少し歪んだ。アルベルトはそれを当然見逃さず巨漢の口に銃身をねじ込む。普段であればそんなものは強化された顎によって粉々に噛み砕かれていた。しかし、アルベルトの執拗な打撃によって、銃を破壊するほど強い力で銃身を噛むことは既に不可能であった。
そのまま彼は躊躇うことなく引き金を引いた。乾いた音と共にサイボーグはその機能を停止した。
アルベルトは立ち上がるとサイボーグの頭を蹴り死んだことを確認する。そしてゆっくりとエミリアの方を向く。
「大丈夫ですか。」
そう聞いてくる彼の方が大丈夫ではなかった。
「え、えぇ。あなたのおかげで大丈夫よ。」
「そうですか。なら、良かった。」
アルベルトは近くにある壁にもたれ掛かり、ゆっくりと座る。
「早く、安全な場所に逃げた方がいいですよ。自分ももう限界ですし。」
アルベルトはそう言うと目を閉じる。
「シュタイナー少尉!」
エミリアが呼び掛けるも彼はそれに応答はしなかった。そして彼女の声に合わせてサイボーグがもう一体すぐに現れる。
彼女は彼を守ろうとその体を抱いて自分の体を盾にするようにした。
しかし、その瞬間背後からの軽い足音と共にサイボーグの頭を蹴飛ばすものがいた。
*
「今の声、大佐の声です!」
エミリアを探していたアルバートは一緒に探してくれているイオクにそう伝える。
イオクはそう聞くと声のした方に長い栗色の髪をなびかせながら走り出す。
アルバートも彼の後ろを走り、エミリアがいる場所に走った。
イオクは敵を確認するなりすぐに拳銃を撃つ。しかし金属の甲高い音と共に銃弾が弾かれる。
「サイボーグタイプか。」
アルバートは対サイボーグ用の装備を持っていなかったため、どうするべきか考える。
その瞬間にイオク・リャーエフは対サイボーグ用のレーザ銃を取り出し巨漢の心臓にレーザを一秒程度照射した。高出力のレーザは骨格などを破壊することは無いが、血液を沸騰させ人工血液がサイボーグの各所から漏れ出すと倒れた。
それにアルバートは全く対応できなかった。
「やっぱりこれ使うと暑いなぁ。」
イオクはサイボーグが停止したか確認するため、その頭を小突きながら愚痴を吐いていた。
「大丈夫ですか、アークウィン大佐? ってシュタイナー準尉!?」
緊張感の無い声でイオクは帝国語でエミリアに対してそう訪ねた。しかし、血塗れになっているアルベルトを見るや否やそう叫ぶ。
「早く彼を医務室に。」
エミリアの言葉にイオクは頷くと彼を背負い、戦闘箇所がないところを選びながら医務室に向かった。
*
「司令。」
イオクは立ち上がると軽くユリアに対して敬礼をする。
「少尉の容態は?」
「命に別状はありません。サイボーグを殴って頭突きして。医者の話では今日明日様子を見ればそれで良いとのことです。」
その言葉と共にユリアはアルベルトが入っている病室のドアを不躾に開ける。薬品の臭いと共に明るく彩られた室内の椅子に座っている人間が振り返る。
「エミリア・アークウィン大佐。」
金髪の女性に対してユリアは言葉を詰まらせるように言う。
「ユリア・ベッソノワ准将。」
エミリアは座っていた椅子から立ち上がると彼女の方を見て、深々と頭を下げる。そのドレスは血まみれであったが、怪我はないのか処置などを受けてはいなかった。
「この度はありがとうございました。」
「いえ、私は別に何も。」
そう答える他なかった。
「ですが、リャーエフ少佐やシュタイナー少尉のお陰で私が助かったことは事実です。」
「そうですか。本人たちにもそう伝えておきます。きっと喜ぶでしょう。」
「それと部外者の私がこのような差し出がましいことかもしれませんが、少しシュタイナー少尉とお話をしてみてはいかがでしょうか。」
「彼がなにか不満でも言っていましたか?」
ユリアはエミリアの一言に顔を強張らせながらも剣呑とした声でエミリアに聞き返してしまう。その彼女の言葉にエミリアは怯むことなく、言葉を続けた。
「いえ、本人の口から直接なにかを聞いた訳ではありません。ただ、私の思い過ごしならばいいのですが、昔彼によく似た人がいました。今の少尉の様子がその人が思い詰めている時の様子と似ていたので。」
アルベルトになにか不利益なことが起こらないよう、エミリアは言葉を選びながらユリアに現状をそっと伝える。
「そうですか、分かりました。時間が出来次第そのようにします。」
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