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異世界で彼の国は強く生きる

第3話 陣営

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・視点切り替え「日本外交情報省」

それは……
魔王陣営だった。
「まさかこんなことになるとはな……」
俺は執務室で頭を抱えていた。というのも今俺の目の前には書類の山があるからだ。これは先日の会議の結果である。まぁ結論としては
・日本と魔族間で不可侵条約を結ぶこと
・日本と魔王国は秘密の同盟関係になること
・魔王国は日本から技術提供を受けること となった。
そして現在俺は魔族の技術顧問としての仕事があるためにここへ来たわけだが、まずいことになった。
何せ今まで見たことのないような技術が沢山あるのだ。
特に錬金術など、地球の科学技術を大幅に超えるレベルであった。さらに魔道具という魔力を流すことで様々な事象を引き起こすことができるアイテムもあるらしい。
はっきり言って地球よりも遥かに進んだ文明を持つ異世界の技術を流されて大丈夫なのか?
と思うかもしれないが、実はそうでもないのだ。
確かに技術力や資源などで劣っている部分もあるが、逆に言えばそれだけなのだ。
むしろこちらの方が進んでいない分野も多いため、お互い足りない部分を補える理想的な状態になっている。
つまり、俺たち日本人にとって最も馴染みのある言葉で表現するならwin-winの関係だ。
なので今のところは問題ないと思っている。
それに魔王国側のメリットについても考えている。
例えば、魔族は人間に比べて身体能力や寿命が高い分どうやら人口が増加しすぎていて、一番大きいものは食料の問題であった。
そのため、食料自給率を上げることは急務であったのだが、この魔王国全土で作物を育てるのは非常に難しい土壌で、とてもじゃないが現実的ではなかったそうだ。
そこで日本の農作物を輸入することでこの問題は解決した。
その対価として魔王国は鉱山などの鉱物資源なども非常に豊富なため、これを日本に輸出することになった。
このようにお互いに不足しているものを補えれば良いと考えている。
他にも問題はいくつかあった。
まずは軍事面だ。
魔王国は20年前に誤解が誤解を招いたせいで全世界と戦争しており、最初は優勢であったが徐々に劣勢に切り替わり、12年前に魔王国が無条件降伏をしたがその際に植民地を全て失い、戦力が弱小国並になり、戦争に巻き込まれでもしたら一瞬で崩壊するほどであった。
そこで軍事力の強化が必要になったのだが、ここで問題となったのは予算だ。
というのも元々この国の財政はあまり芳しくなかったらしく、このままでは国民全員飢え死にしてしまうほどギリギリの状態であり、そこに加えて賠償金の支払いもあったために余計に金が必要だった。
しかし、日本はこの世界の国家と比べてもトップレベルの経済・軍事力を持っており、経済的にも余裕があったため、日本政府は、同盟国である魔王国に資金援助を行うことを決定し、会議が終わった。
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