生命環状線

積雪

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生命環状線

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 目を開くとそこは広い駅のホームだった。なんのへんてつもないどこにでもあるホームだった。
 「…ここは?」
 「旅のスタート地点です。あなたはここから電車に乗って過去を旅します。過去に行ってもあなたは死んでいるので誰にも見えませんし誰に話しても返事はかえってきません。」
 「へぇーなるほど。では、電車はいつ来るんですか?」
  「もう間も無く来ますよ。耳を澄ましてみてください。」
言われた通りに耳を澄ましてみるとかすかに警笛の音と線路を走る車輪の音が聞こえる。どこから来るんだろう。
 「さぁ来ました。右上の空をみてください。」
言われた方向を見てみるとそこには大きな列車が私のすぐそばまで迫って来ていた。そして私の目の前の線路に降り立った。
 「この列車は生命環状線と言います。あなたのように自ら命を捨てるもの、または幸せに亡くなり自分の過去を振り返りたい者のために存在する列車です。」
 「で、この列車で過去に行けということですね?」
 「はい。察しがいいのはさすがですね。」
神は優しく微笑んだ。そして一言。
 「蘇生できるもできないもあなた次第です。ではいってらっしゃい。」
と言った。そして私は列車に乗り込んだ。

 列車に乗るとそこは懐かしい景色が広がっていた。
 「ふふっ。驚きましたか?この列車は乗る者に合わせてその人の懐かしむような車内に切り替わります。懐かしいですか?あなたがよく乗っていた列車ですよね。」
私が死ぬ日にも乗っていた列車の構造だ。でも私以外に乗っている人はいない。
 「列車の中には食堂や寝室もございます。乗っているのはあなたと運転手だけです。それほど気を使うこともないでしょう。それとあなたのこれからの行き先は全て運転手に伝えてあります。あなたはその間好きなように過ごしてください。それでは。」
そういうと神は私の目の前から姿を消した。そして運転席から私よりはるかに年下そうな子供が出て来た。そして私の前に立ち子供のような甲高い声でこう言った。
 「この度この列車の運転をさせていただきます!カンタです!これから長い付き合いになると思いますがどうぞよろしくお願いします!」
 「あなたが運転するの?危なくない?ていうかあなた何歳なの?」
私は突然出て来たカンタを疑心暗鬼の目でジロジロ見ていた。
 「僕は10歳です!ですがあなたが死ぬ数十年前には死んでいるので僕の方が先輩ですね!運転のことなら心配しないで!これでも10年以上はこの列車で運転してるんですよ?」
カンタは私の心を見透かしていた。こんな幼い子が私よりもずっと長く死後の世界で暮らしているなんて。この子はなんで死んでしまったんだろう。そんなことを考えていた。カンタは車掌室に入り、
 「では行きましょう。貴方の過去へ。」
と言った。
そして列車はゆっくりと汽笛を鳴らし空に向かって走り出した。
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