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第4話 自由と拘束
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朝、玄関のドアを開けると、外の空気がいつもと違うのを感じた。
陰鬱な風が吹いている。
景色がやられている。そう思った。
布夜は下を向いて目を閉じ、まだ上りきらない陽光を閉ざした。
五感を切り替える。
無言の意気で周囲を薙ぎ払うと何処かでそれが妨げられる。
仕方なく、そのまま破壊のチャンネルへと回した。
無口でかげの薄い高校生を閉じ、夜兎を出した。
はっきりと、その姿を捉えることができたようだ。
声が聞こえる。
生きとし生けるものへ――。
予想した通り、悪魔の声だ。
――生きとし生けるものへ、何だ。
心で罵声を打ち込んだ。
しかし声は変わらず、次々と漏れてくる。
生きとし生けるものへ――。
「黙れ」
声でそれを砕こうとした。
しかし、当たらない。逃げるようにして地面を摺っている。
直接、叩き込んだ方が早い。
目を開けてそれを砕くために破壊衝動を高めていく。
来ないで――。
来ないで――。
生きとし生けるものへ。
通学途中の道路の脇に石が積まれており、その石の裏にどうやらそれが張り付いているようだった。
目の前に立ち、その石を見下ろす。
見ないで――。
見ないで――。
生きているみなさん……へ。
ゴッ、
石が砕ける音がした。
積み石を潰すようにして砕いた。
同時にそこに入っていた悪魔も破壊した。
どうやらここに石を積んで誰かが願いを込めていたようだ。
それを残らず砕いた。
酷く消極的な願いだったようだ。
弱々しく不安定に積まれていたその石の残骸から「たすけて」というような最後の煙が上るのが見えた。
悪魔の断末魔の声だ。
――たすけてじゃないだろう、神さま。
最後の石片を砕いて土を平らに戻した。
街の通りには春の風が吹き、木立が揺れ始めた。
信号が赤から青に変わった。
通りを行く人たちの会話が煩く聞こえる。
どうやら撃滅したようだ。
布夜はそのまま払った石くずの跡に、そばにあった大きな石塊を突き立てた。
通学途中の子どもたちが、それを見て面白そうに指を差して笑っている。
すぐ近くを通る女子学生も思わず驚いて立ち止まった。
「神なんていないよ」
布夜の言動は今日はこれだけだった。
◆ ◆ ◆
この世界には悪魔と呼ばれる存在がいる。
悪魔は長年に渡り、人々を苦しめる不知火の一つとされてきた。
人々は、悪魔を払う術を求めた。
退魔の力を求めた。そして高めた。
しかし誰も壊すことはしなかった。
不知火は信仰の対象となる場合も多いからだ。
天罰を怖れ、神を怖れ、誰も壊せなかった。
壊してはいけない。
殺してはいけない。
――ではどうすればいいんだ?
誰も答えられなかった。
正解がわからなかった。
この世界には答えが存在しない。
本物がわからない。
それが答えだと、人は信じた。
自由がなかった。
それがこの星の拘束だった。
陰鬱な風が吹いている。
景色がやられている。そう思った。
布夜は下を向いて目を閉じ、まだ上りきらない陽光を閉ざした。
五感を切り替える。
無言の意気で周囲を薙ぎ払うと何処かでそれが妨げられる。
仕方なく、そのまま破壊のチャンネルへと回した。
無口でかげの薄い高校生を閉じ、夜兎を出した。
はっきりと、その姿を捉えることができたようだ。
声が聞こえる。
生きとし生けるものへ――。
予想した通り、悪魔の声だ。
――生きとし生けるものへ、何だ。
心で罵声を打ち込んだ。
しかし声は変わらず、次々と漏れてくる。
生きとし生けるものへ――。
「黙れ」
声でそれを砕こうとした。
しかし、当たらない。逃げるようにして地面を摺っている。
直接、叩き込んだ方が早い。
目を開けてそれを砕くために破壊衝動を高めていく。
来ないで――。
来ないで――。
生きとし生けるものへ。
通学途中の道路の脇に石が積まれており、その石の裏にどうやらそれが張り付いているようだった。
目の前に立ち、その石を見下ろす。
見ないで――。
見ないで――。
生きているみなさん……へ。
ゴッ、
石が砕ける音がした。
積み石を潰すようにして砕いた。
同時にそこに入っていた悪魔も破壊した。
どうやらここに石を積んで誰かが願いを込めていたようだ。
それを残らず砕いた。
酷く消極的な願いだったようだ。
弱々しく不安定に積まれていたその石の残骸から「たすけて」というような最後の煙が上るのが見えた。
悪魔の断末魔の声だ。
――たすけてじゃないだろう、神さま。
最後の石片を砕いて土を平らに戻した。
街の通りには春の風が吹き、木立が揺れ始めた。
信号が赤から青に変わった。
通りを行く人たちの会話が煩く聞こえる。
どうやら撃滅したようだ。
布夜はそのまま払った石くずの跡に、そばにあった大きな石塊を突き立てた。
通学途中の子どもたちが、それを見て面白そうに指を差して笑っている。
すぐ近くを通る女子学生も思わず驚いて立ち止まった。
「神なんていないよ」
布夜の言動は今日はこれだけだった。
◆ ◆ ◆
この世界には悪魔と呼ばれる存在がいる。
悪魔は長年に渡り、人々を苦しめる不知火の一つとされてきた。
人々は、悪魔を払う術を求めた。
退魔の力を求めた。そして高めた。
しかし誰も壊すことはしなかった。
不知火は信仰の対象となる場合も多いからだ。
天罰を怖れ、神を怖れ、誰も壊せなかった。
壊してはいけない。
殺してはいけない。
――ではどうすればいいんだ?
誰も答えられなかった。
正解がわからなかった。
この世界には答えが存在しない。
本物がわからない。
それが答えだと、人は信じた。
自由がなかった。
それがこの星の拘束だった。
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