最強武器【地烈ダガー】もうあとがなかった少年は戦列の最後尾でそれを手にする

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第6話 来訪者

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 あれから一か月ほどが過ぎた。
 村の中は相変わらず閑散としていた。
 焦げた家の跡がまだあちこちに残って見える。家を作り直すのは簡単ではない。ましてや気分が落ち込んでいる状態で、いつも以上に働かなければいけない現状に村の人たちも追い込まれていた。事件の詳細も明らかになっておらず、不安を抱えたままの村人も多い。
 ギルドの休憩室で火を焚いてみんなでそれを囲んでいると、子供たちがいらない本などを探して持ってきた。火種にするためだ。あるものは何でも使う。村に一軒だけあった宿屋の部屋も全て避難所にされているようだった。
 俺の家は村の端の方にあったので無事だった。作業場もあり、道具も揃っているため女たちも手伝いで入り込み、村の男たちの工場になっている。

 俺がギルドの外に出て焚き木を集めてこようとしたとき、事務室の中から一人の女性のギルド員に呼び止められた。そろそろ少し遠くの町に出向いて冒険者の仕事を再開してはどうか、というものだった。村にあった貨幣は底を尽き、他所からものを買うこともできなくなってしまったから、出稼ぎに行ってほしい、ということなのだろう。
 しかし、それだと働き手が一人減ってしまう。親を失った子も多い。寒さと食糧不足で衰え始めた村人も段々増えてきていた。少し考える、とだけ言って俺は外に出た。

 季節はまだ冬に入ったばかりだ。これからの寒さと飢えに耐えられるだろうか。
 頼りは村長の家にあるわずかばかりの魔道具だ。外灯石や燃石などが少しだけあるらしい。
 自然魔法は自然物にその力を込めることでエネルギー源として保つことができるものがある。しかし、高度な技術を要する上に、値段も張る。それに永遠にそのエネルギーを取り出せるわけでもない。

 やはり出稼ぎにいくしかないだろうか。

 この村はもう長くいるから俺のこともよくわかってくれているが、こんな殺しもできないやつが外で受け入れてくれるかわからない。

 冒険者になるにはいくつか条件がある。
 俺は運よく生まれながらにしてその条件だけはクリアしていたから、簡単な手続きだけで冒険者になれた。それは父に感謝しなければならない。体も丈夫だった。母さんにも感謝だ。苦労をかけ続けてしまった。俺と同い年くらいのやつはみんな狩りに出て村の役に立っていたが、俺はいつも薪を割るだけだった。

 そんなことを考えながら森の中で乾いた木の枝を拾い集めていると、段々日も暮れて風も冷たくなってきた。俺は森を出てギルドの建物に戻ろうとした。
 すると村の中の少し開けた場所で、見慣れない一人の男が立ち止まっている姿を見つけた。
 下を向いて何かを見ている。地面と何かを持った手を見比べているように見えた。確か、あそこは俺が魔物を葬った場所だ。あの後、崩れた人形はそのままにされ、念のため誰も立ち入らないように柵が立てられていた。
 時間が経った今はもう柵も取り外されているが、その焦げた跡に誰かが好んで立ち入るということはなかった。そのこともあったからその男の姿はすぐに俺の目に留まった。
 男は手に持っていたものを外套のポケットに仕舞うと、その場でしゃがんで何かを拾ったように見えた。あそこには人形の残骸しかないはずだが、何を拾ったんだろう。

 すると男はこちらに気づき、立ち上がり俺の方へと歩いてきた。

 男の歩く姿は冒険者特有のものだった。それもかなり位の高いオーラを放っている。少なくともこの村でこれほどのものは見たことがない。傍目に見てそれがはっきりとわかった。
 男は俺の前に来ると声をかけてきた。

「すまないが、村のギルドに案内してくれないか」

 俺はギルドは一月前に閉鎖したことを伝え、その上でその理由と冒険者も全員死んだことを伝えた。
 男が出して見せたギルドカードには男の名前とランクAの表記があり、俺はそのときは疑うことなく事実を話した。
 しかし一つだけ、村を襲った魔物は冒険者たちと相打ちのような形で死んだと、嘘の説明をした。俺が一人で倒したと言ってもどうせ信じはしないと思ったし、実際それに近いようなものだと俺の中では受け止めていたからだ。
 男はそれには何も言わずにただ小さな布の袋を俺に渡しただけでその場を去っていった。去り際に、「すまなかった」と一言だけ言った。

 一体何がすまなかった、なのだ。

 袋の中には金貨が十枚ほど入っていた。それを確認したとき、男の姿はもうどこにも見えなくなっていた。
 俺は何かどす黒いものが腹の底から込み上げてくるのを感じた。

 何だ、あの男は一体何を知っているのだ。まるで村が何かの犠牲になったかのような口振りだ。
 一体何の犠牲になったのだ――。

 ギルドカードには、浅田影郎あさだかげろうと書いてあった。
 所属ギルドには月影と書いてあり、その紋章も記されていた。

 月影――。

 東方の都の名前だ。父が在籍していた町でもある。

 俺の中で今までにないほどの複雑な感情が沸きだしていた。激しい衝動にも駆り立てられた。
 確認しなければならない――。

 自分の目で、全てを。
 やらなければいけないと思った。

 そうして俺はその日、月影へと旅立つことを決めた。
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