冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています

朱音ゆうひ@4月1日新刊発売!

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 二十六歳の私――果絵かえは、弁護士の宝凰寺ほうおうじ 颯斗はやとさんと契約をした。
 
 契約は、私の側に都合がいい内容ばかり。
 
 颯斗さんには想い人がいるので、想い人と結婚できるようになった時のことを考え、『子作りをしない。好きな人と結婚できるようになったら離婚する』という条件も足してもらった。

 決まった後は話は高速で進み、数日後には高級ホテルのアトリウムラウンジで、ご家族に紹介された。

 挨拶する相手は、颯斗さんのご両親とお兄さんのはず。でも、現地には他にも人がいた。
 壮年の男女と、着物姿の二十代くらいの女性。全員、目を見開いて驚いた顔をしている。

「紹介するよ。結婚を前提にお付き合いしている俺の彼女だ」

 仕事が接客業なので、お客様だと思って微笑む。
 
 長く接客仕事をしていると、「このお客様はこんな風に接すると喜ぶ」「この接し方であれば、よほどのモンスターカスタマーでなければ合格」「この接し方は危険」という自信や肌感覚が身に付く。
 
 今、私の肌感覚は――「お客様は悪い意味で驚いている」と警鐘を鳴らしていた。
 
 こんな時は……私にできる対応をして、返ってきたリアクションに対して上席の指示を仰いだりしつつ、対応する。
 
「初めまして、夏樹 果絵と申します」
 
 シックなワンピースに身を包んで挨拶すると、様々な声が同時に上がった。

「へえ~、可愛いじゃないか颯斗。この子が噂のずっと想ってた子?」 

 好意的に声をかけてくるのは、颯斗さんのお兄さんだ。
 
「どういうこと? 聞いてないわ!」
「宝凰寺さん? ご子息はうちの娘にベタ惚れだと仰っていましたよね?」
 
 着物の女性と、彼女の両親らしき男女が、颯斗さんのご両親に険悪な声をあげる。
 颯斗さんのご両親は嘘をついて強引に縁談を進めようとしていたらしい。

 颯斗さんは彼らに紙を広げて見せた。

「そうそう。婚姻届も今朝書いてきたんだ。結婚式の準備はじっくりすることにして、先に籍を入れるよ」
「……もういいです!」
  
 着物の女性が顔を赤くして、颯斗さんに平手打ちしようとする。
 それを両親が抑えて、引きずるようにして帰っていった。
 
「彼女は評判通りのようですね。さすが父さんが無理やり結婚させようとするだけある」
「よし。颯斗も相手を連れてきたことだし、父さん母さんは撤収だね。あとは任せて」
  
 颯斗さんが冷ややかにコメントすると、お兄さんが楽しそうに笑ってご両親を追い払った。
 
 これ、きっと、お見合いだったんだ。
 お見合いの場に彼女を連れて行って、ぶち壊したんだ……。
 
 口角を勝ち誇るようにあげた颯斗さんを見上げる私に、居残った颯斗さんのお兄さんが声をかけてきた。

「心配してたんだけど、よかったよ。颯斗のことをよろしく」
「は……はい」
「参考までに聞くけど、本当に愛し合ってる仲なのか? 颯斗のことだから……見合いを壊すために偽物の恋人役を連れてきた可能性もありそうだ」

 お兄さんは鋭かった。
 
 颯斗さんが「まさか」と笑い飛ばすのに調子を合わせながら内心でハラハラしていると、反応する暇もなく颯斗さんが身を屈めて、頬に口付けをしてきた。

 触れられた頬から、じわりと熱が広がっていく。
 
「兄さん。俺に断りなく果絵に話しかけないでくれないか。俺が嫉妬するから」
「ははっ、そうか。それはすまん。お前が言ってた『一途に想ってる子』なんて嘘だと思ってたからさ」
 
 お兄さんは私たちに好意的で、騙すのが申し訳ない気がした。

   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆

 「指輪を用意したよ。改めてプロポーズさせてくれ。俺は君を愛している。結婚してほしい」
「契約の印ですね。憧れてましたけど、こんな形で指輪を填めることになるとは思いませんでした」
 
 颯斗さんが指輪ケースから指輪を出して私の左手の薬指に填めてくれる。
 指輪はキラキラと輝いていて、綺麗だ。
 
「似合ってる」

 颯斗さんは私の手を軽く掬い上げ、神聖な儀式のようにキスをした。
 唇を肌につけたまま、まっすぐに突き刺すような視線を注がれる。
 その眼差しには、情熱が溢れ出ていた。

 ――こんな瞳で見つめられたら、心を掴まれてしまう。
 
 一挙一動、目を惹く彼の魅惑的な行為に、ときめいてしまった。
 
 その日のうちに入籍して、結婚生活は始まった。
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