悪辣王の二人の娘 ~真実を知った聖女は悪を討つ~

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます

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5、鬼謀のアイオナイト

369、うれしいこころが、わかります。かなしいきもちも、わかります。

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 ――後日。
 世界が雪融けを迎えた春のよき日に、二人は大陸中から集まった人々に祝福され、ありったけの友人知人に見守られて結婚式をあげた。

 * * *

 魔法による光の花、自然の花びら、紙でつくられた紙吹雪が舞う会場で、十七歳のフィロシュネーは新郎にエスコートされながら、可憐に歌声を響かせた。
 
「♪うれしいこころが わかります」

 高く澄んだ声は、はしゃぐようにメロディを紡ぐ。

 移り気な空の青チェンジリング・ブルーの瞳は、細やかにその色彩を変えていく。

 空の青アザーブルー学徒の青アカデミーブルー風翔ける青エアウェイブルー

 水平線の淡青ホリゾンブルー春の霧の青エイプリル・ミスト青国の青ロイヤルブルー

「♪かなしいきもちが わかります」 

 喜びの感情を響かせて、フィロシュネーはおひさまのように明るく笑った。

「♪ありがとう」   

 ありったけの感謝の気持ちをこめて歌い上げれば、たくさんの人々の拍手と声援が音の波となって、この世界がとびっきり温かで、とっても賑やかなのだと教えてくれた。

 ――頭上を鳥が群れて飛んでいく。
 
 空は青くて、雲はまっしろだ。
 じっと見ていると雲はすこしずつ移動していて、世界が動いている感じがする。

 地面にはたくさんの石があって、緑の植物が生えていて、名前があったりなかったりする花々が寄り添い、太陽の方向を向いている。

 透明な空気は皆の間にいつも満ちていて、虫も植物も動物も人間も、空気を吸って、吐いて、生きている。
 そんな世界に、自分もまた、生きている。
 
「おめでとうございます、フィロシュネー様!」
「お幸せに……!」
 
 声に頷いて、フィロシュネーは愛しい彼を見上げた。

「ノイエスタル様、おめでとうございます」
「サイラス様……」

 ああ、さげすまれることなく、光あふれる世界で人間として祝福されている彼が、ここにいる。
 
 ――それは、とっても幸せな結末だ。フィロシュネーはそう思った。
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