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放課後のチャイムが鳴る。
教室を出て、横目に見る廊下の窓からはとっくに散った桜の木が青々と茂っている。
僕が表見高等学校に入学してからひと月が経っていた。
早足で玄関に向かう。逃げなくては。今日こそは早く家に帰って寝たい。
「いた!四十万くん~」
捕まってしまった。
「今日も来てくれるんだよね!嬉しいよぉ~」
部長。にこやかな表情とは裏腹に強い力で腕を掴まれ、半ば、いやかなり強引に、僕は今日も「オカルト研究部」に足を運ぶ流れとなってしまった。
「いやいや僕はとても嬉しいよ!こんなに熱心な部員が来てくれるなんて!…ごほ、」
なんと埃っぽい部室だろう。倉庫と何ら変わりない。許可は降りているのだろうか。
「今日も校内のパトロールをするよ!幽霊バスターズ!ってね!」
部長、もとい穂村先輩はノリノリで黒板に“幽霊バスターズ”と大きく書いた。
「さぁ!行くよ!」
突っ立っていた僕の腕を再び掴み、部室を出る。
僕はこのひと月、ずっとこの先輩に振り回されている。パトロールと言いながら、やっていることはこの学校の部活動の最低人数である三人目を探すためのスカウトだ。
誰に声をかけても厄介者を見る目で、「四十万、がんばれよ」と励ましの言葉をかける者さえいた。
「どうせ3人めなんて見つかりゃしませんよ。諦めたらどうすか」
「そういう意思の弱いものに幽霊はとりつくんだぞ!!」
「は、はぁ……」
なんという意志の強さだ。そりゃ、幽霊も寄り付かないだろう。
しばらく歩き回り、校庭の端からあたりを見回す。
「暇そうなやつ、いないかなぁ……」
僕はもう疲れきっていた。ただでさえ広い校内を、もう4周はしただろう。これを毎日だ。ずっと帰宅部だった僕には厳しすぎる。
「はぁ……」
ふと視線を落とすと、側溝になにか……赤い箱が落ちていた。10センチあるかどうかのとても小さい箱だ。僕はなぜか強く惹きつけられた。
「……先輩、あれ」
先輩がうん?と言いながらそれに気づき、歩み寄る。
「……箱だねぇ」
「……箱ですね」
少しの沈黙のあと、先輩が側溝の蓋に手をかけ、ふんっと引っ張る。しかし蓋は動く気配がない。隣に腰を下ろし、一緒に引っ張ってみる。
「むんむ……!!」
「ふんぐ……!!」
一向に動く気配がない。よく見ると、隣の蓋とネジで繋がっていた。
「ネジ、ありますね」
「ネジか!ネジなら……ドライバーが、部室の……」
「取ってきます!」
僕は急ぎ足で部室に戻った。いつの間にか空が綺麗な赤オレンジになっていた。
部室に着く。あたりを探していると、ロッカーの上に工具箱があるのを見つけた。
「あれか……!」
工具箱はかなり重たく、たくさんの工具が入っている。なぜか焦燥感が頭を支配し、かき回すように工具箱を漁る。久々の面白い事態に、好奇心が膨れ上がっていた。
「あった!」
ドライバーを握りしめ、部室を後にする。
何者かの視線を一瞬だけ感じた。
「はぁ……はぁ……ありました!!」
「ナイスだよ四十万くん!」
ドライバーを先輩にパスすると、先輩は鼻息を荒くしてネジを緩め始める。
「赤い箱、、誰かの落し物かなぁ、こんなところに」
「うーん、いつからこんなものが……」
ネジが全て外され、いざ蓋が開けられる。
息を呑む。先輩が箱を取り出す。
「……なんだろう?何も書いてないですね」
「んん、開かない……?」
『カエシテ』
後ろからの気配に、二人の動きが止まる。
『ソレハ』
ゆっくりと振り返る。背中を悪寒が走る。間違いなくこれは……
『アタシノ!!!!!!!!!!!!!!』
幽霊だ。
教室を出て、横目に見る廊下の窓からはとっくに散った桜の木が青々と茂っている。
僕が表見高等学校に入学してからひと月が経っていた。
早足で玄関に向かう。逃げなくては。今日こそは早く家に帰って寝たい。
「いた!四十万くん~」
捕まってしまった。
「今日も来てくれるんだよね!嬉しいよぉ~」
部長。にこやかな表情とは裏腹に強い力で腕を掴まれ、半ば、いやかなり強引に、僕は今日も「オカルト研究部」に足を運ぶ流れとなってしまった。
「いやいや僕はとても嬉しいよ!こんなに熱心な部員が来てくれるなんて!…ごほ、」
なんと埃っぽい部室だろう。倉庫と何ら変わりない。許可は降りているのだろうか。
「今日も校内のパトロールをするよ!幽霊バスターズ!ってね!」
部長、もとい穂村先輩はノリノリで黒板に“幽霊バスターズ”と大きく書いた。
「さぁ!行くよ!」
突っ立っていた僕の腕を再び掴み、部室を出る。
僕はこのひと月、ずっとこの先輩に振り回されている。パトロールと言いながら、やっていることはこの学校の部活動の最低人数である三人目を探すためのスカウトだ。
誰に声をかけても厄介者を見る目で、「四十万、がんばれよ」と励ましの言葉をかける者さえいた。
「どうせ3人めなんて見つかりゃしませんよ。諦めたらどうすか」
「そういう意思の弱いものに幽霊はとりつくんだぞ!!」
「は、はぁ……」
なんという意志の強さだ。そりゃ、幽霊も寄り付かないだろう。
しばらく歩き回り、校庭の端からあたりを見回す。
「暇そうなやつ、いないかなぁ……」
僕はもう疲れきっていた。ただでさえ広い校内を、もう4周はしただろう。これを毎日だ。ずっと帰宅部だった僕には厳しすぎる。
「はぁ……」
ふと視線を落とすと、側溝になにか……赤い箱が落ちていた。10センチあるかどうかのとても小さい箱だ。僕はなぜか強く惹きつけられた。
「……先輩、あれ」
先輩がうん?と言いながらそれに気づき、歩み寄る。
「……箱だねぇ」
「……箱ですね」
少しの沈黙のあと、先輩が側溝の蓋に手をかけ、ふんっと引っ張る。しかし蓋は動く気配がない。隣に腰を下ろし、一緒に引っ張ってみる。
「むんむ……!!」
「ふんぐ……!!」
一向に動く気配がない。よく見ると、隣の蓋とネジで繋がっていた。
「ネジ、ありますね」
「ネジか!ネジなら……ドライバーが、部室の……」
「取ってきます!」
僕は急ぎ足で部室に戻った。いつの間にか空が綺麗な赤オレンジになっていた。
部室に着く。あたりを探していると、ロッカーの上に工具箱があるのを見つけた。
「あれか……!」
工具箱はかなり重たく、たくさんの工具が入っている。なぜか焦燥感が頭を支配し、かき回すように工具箱を漁る。久々の面白い事態に、好奇心が膨れ上がっていた。
「あった!」
ドライバーを握りしめ、部室を後にする。
何者かの視線を一瞬だけ感じた。
「はぁ……はぁ……ありました!!」
「ナイスだよ四十万くん!」
ドライバーを先輩にパスすると、先輩は鼻息を荒くしてネジを緩め始める。
「赤い箱、、誰かの落し物かなぁ、こんなところに」
「うーん、いつからこんなものが……」
ネジが全て外され、いざ蓋が開けられる。
息を呑む。先輩が箱を取り出す。
「……なんだろう?何も書いてないですね」
「んん、開かない……?」
『カエシテ』
後ろからの気配に、二人の動きが止まる。
『ソレハ』
ゆっくりと振り返る。背中を悪寒が走る。間違いなくこれは……
『アタシノ!!!!!!!!!!!!!!』
幽霊だ。
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