ぽんっ。

⭐︎男

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ぽんっ。

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ぽんっ。
あなたを見ている
ぽんっ。
あなたを見ている
「行ってきます」
ぽんっ。
「ただいま」
ぽんっ。
あなたは外出する時、帰ってきた時 必ず私の頭を叩く

「やったぁ!念願の一人暮らしいぃ♪」
私もこの日この部屋へ来た。。新生活の始まり。。どうかあなたが幸せに暮らせますように

「ただいまぁ」
ぽんっ。
おかえりなさい
「あ、お母さん?今帰ってきた。うん、良い会社だよ雰囲気も良いしやっていけそう。うん、やっと受かった
デザイン会社だから頑張るよ。え?お米送ったぁ?お母さん大変なんだからそんな気使わなくて良いよ。
でもありがとうお母さん。。」
新生活のスタートは良さそう。。頑張って   

「ただいまぁ、疲れたぁ」
ぽんっ。
おかえりなさい
「ずっと座ってるから足パンパン。あっ、もしもし高崎さんどうしました?明日の待ち合わせ7時に変更ですか?大丈夫です!高崎さん、明日宜しくお願いします!」
お疲れ様。。体に気をつけて頑張って

「ただいまぁ、やったぁ!」
ぽんっ。
おかえりなさい。ご機嫌のお帰り
「飲み過ぎたぁぁ、いひひひひ、初めてのデザイン契約成立!おめでとう私ぃぃ、明日も頑張るぃ。。Zzzzz」
おめでとう。。廊下で寝て風邪ひかないように。。おやすみ

「ただいまぁ」
ぽんっ。
おかえりなさい。・今日も一日お疲れさま
プシュ。ごくごくごく
「はぁぁぁ、やっぱりハイボール最高!あぁごめんごめん里見。ハイボールのあまりの美味さに里見の存在消えてたわ。。それでね、営業の高崎さんいるじゃん?私 高崎さん良いなって思ってて。・今私のデザインの営業担当をしてもらってるんだけど、『クライアントに最高のものをご提供できる様に私も全力でサポートしますので頑張っていきましょう』って言ってくれて。色々アドバイスくれて。。クライアントとの交渉の日、私緊張でガクガクで全然喋れなかったんだけど、高崎さんが私がこだわったとこ、テーマに対するデザイン性、このデザインを通じて私が伝えたかったことを高崎さんが全部綺麗に整えて伝えてくれて。。
高崎さんすごいなぁって。。高崎さんのプロの仕事に自分の甘さもすごく感じて。。うん、そうそう高崎さん褒め上手なのよぉぉ!なんだけど締めるとこは締める。だけどそれも棘が全然無くていつのまにか締められてたみたいな。。気付かされてたみたいな。。
そんな感じでいつのまにか好きになってた。。え?4つ上だから26じゃない?彼女?分かんない、いるかも。。
いても不思議じゃないし。。里見はどうなのよ?総務の保井さんと食事したって聞いたけどどうなのよぉ?
今日は喋ってもらうわよぉぉ♪」
あなたが嬉しいと私も嬉しい

「ただいまっと」
ぽんっ。
おかえりなさい。。お疲れ気味の軽いぽんっ。。

プシュ。ごくごくごく
「はぁぁ、生き返るう、あ~あ、良いレイアウトが思い浮かばないなぁ。。何かないかなぁ。。もぐもぐ、エビマヨうまっ!。。あれ?高崎さんからLINEだ。。えぇ!?明後日食事っ!?うそっ!?
なぁんだ打合せかぁ。。でも一緒に食事できる。。。これは。。ある意味チャンス?彼女がいるいないくらいはいけるの?。。彼女いるいないを聞くってこと自体、あなたに好意持ってますよってことになっちゃうんじゃない?
そんなの気付かれたらこれから仕事しにくいじゃんか。。そしたら聞けるわけないじゃん。。うぅぅ。。」
人生色々あるよね。・あなたが苦しいと私も苦しい。・

「ただ。。いま。。」
ぽんっ。
おかえりなさい。。今までで一番思いぽんっ。もはやぼんっ。

「もしもし里見?今日高崎さんと打ち合わせで食事してきたんだけど、食事も終わる頃に「真野さんはパートナーいますか?」って聞いてきて、焦って食べてたパスタが詰まっちゃって
「えふぃっ?い、いないでふっ!」てなっちゃって。。
「えぇ、真野さん大丈夫ですか?タオルどうぞ。。真野さんはパートナーって言い方どう思いますか?僕はなんか硬いなぁって思うんですけど真野さんはどうですか?」
って聞かれて「わ、私もパ、パートナーって言い方には違和感を感じていますぅ」ってどもっちゃって。。。
っていうか高崎さんはなんで私にパートナーいるって聞いたんだろ?私が聞きたかったのに。。
え?。。確かに。。パートナーの言い方にフォーカスしてたから普通に出た質問ってこと?もう何なのか全然分かんないからモヤモヤがずっとモヤモヤで。。高崎さんにどういう意味だったんですかって聞けるわけもないし。。で?里見は?保井さんとどうなったの?。。。ええ!?付き合ってるのぉぉ!?
何で言わないのよぉぉ!おめでとおぉぉお里見ぃぃ!」
あなたにも幸せが訪れますように

「ただいま。。」
ぽんっ。
おかえりなさい。。力無いぽんっ。
「もしもし里見?聞いてよぉ。。 いきなり高崎さんが私の担当外れて違う人になったんだけど、里見何か
知らない?ゲンナリなんだけど。。。仕事はもちろんちゃんとやるよ。。でも何でだろ?嫌われたのかな。。」
あなたが不安だと私も不安。。

あなたがお休みの日。・・
ブウウウウン、ブウウウウン、ブウウウウン
「うぅん、もしもしぃぃ。。あぁ里見?おはよう、えぇ。。?寝てた。。
何?朝から。・え?た、高崎さんが転勤っ!?秋田にっ!?ほんとにっ!?。。だから担当外れたんだ。。
転勤か。。じゃぁ仕方ないか。。え?LINE?はぁ?いきなりしたら変じゃん。。うん。。
それなら変じゃないか。。分かった。。送ってみる、ありがとね里見。。
じゃあまた明日会社で。。うん。。」
「ええ。。ほんとに大丈夫かなぁ。。」
『高崎さんお久しぶりです。秋田への転勤の話を聞きました。短い期間でしたが担当して頂いてありがとうございました。高崎さんと仕事をさせて頂いて、この仕事の厳しさ、自分の甘さ、そして改めてデザインの楽しさを教えて頂きました。高崎さんに出会えて本当に良かったです。秋田に行っても体に気をつけて頑張って下さい』
「。。。送信。。ふぅぅぅ。。まだ手が震えてる。。。やばい。。」
あなたが良い休日を過ごせますように。。

その日の夜・・・
「あ。。高崎さんからLINEだ。。あぁぁ。。見れないぃぃ。。怖いい。。・ふぅふぅ。。心を落ち着けて。。
はい!『お疲れ様です。急に転勤が決まってしまいバタバタとしていてご連絡遅れてしまい申し訳ありませんでした。私の方こそありがとうございました。日々、真野さんの成長していく姿に荒削りだけれどもその斬新な発想の数々に毎日驚かされ続け、自分の営業歴5年の中で一番大変な担当でした。。それと同時に一番楽しい担当でした。真野さんを売れなければ私のせいだと思って毎日必死で。。でも毎日わくわくしてました。これからの営業に活かしていきたいと思います。本当にありがとうございました。秋田に移るまで2週間あるので真野さんの都合が良ければ打ち合わせで使用していたイタリアンに行きませんか?あそこのピザとパスタ大好きなので最後に食べたいなと思って。スケジュールは真野さんに任せます』
「うぅぅぅ。。うぐっ。。うぐぅぅ。。うぅぅぅ。高崎さぁぁん。。うわあああああああああああああああん!」
いっぱい泣いていいよ。・・あなたが悲しいと私も悲しい。・。

「ただいまぁ」
ぽんっ。
おかえりなさい。・まだ顔腫れてる。・泣き過ぎ。。
「もしもし里見?うん、そう今週土曜に高崎さんと食事するよ。。するけど私 絶対、絶対泣いちゃうよ。。
どうしよう。。ええ?泣いた勢いで告るぅ?で、できるわけないじゃん!泣きながら告る奴なんてヤバすぎるでしょうよ。。断った方が良かったかなぁ。。」
今日は泣かないで。・・おやすみ。。。

「ただいまぁ」
ぽむんっ。
おかえりなさい。。今日は長めのぽむんっ。。
『。。里見。。うん。。1週間後には秋田に行くって。。ううん、全力で泣いたけど告ってないよ。。したかったけど。。先に高崎さんから告白してきたから。。。。。そうなのぉぉ!私、高崎さんに告られたのぉぉ!
信じられるぅぅぅ!?未だに信じらんないんだけどぉぉぉ!私といると楽しいって!友達から宜しくお願いしますってぇぇぇぇ!!こんな事あるぅぅぅ!?私嬉しくて嬉しくて涙が止まらなくて。。鼻水も止まらなくて。。
周りの人も心配するくらい泣いちゃって、化粧も取れちゃってぐしゃぐしゃになった最低な私は
「ごぢらごぞよろじぐおねがいじまずぅぅぅだがざぎざぁぁぁぁん」って言ったら。。
高崎さんはハンカチで私の涙と鼻水を拭ってくれた。。。なんて最悪の出だし。。。
だったけど。。高崎さんは私の涙と鼻水を拭いながら笑顔で『あはははは、最高の出だしですね』って。。
なんか変な感じで付き合うことになっちゃったんだけど。。うん、そう、パートナーいますか?って聞いた時には気になってたみたい。。でもすぐ東京、秋田の遠距離になっちゃうからお互い頑張っていこうねって。。
明後日休みだから熱海、箱根にドライブに行こうって決まって。。里見ありがと。。里見がいなかったらどうなってたか。。持つべきは同期入社『河合里見』ありがとおぉ!またハイボールバー行こうよ!うん、じゃあねぇ、おやすみぃ♪」
あなたが嬉しいと私も嬉しい。。ゆっくりおやすみ。。

次のお休みの日。。
「えーと忘れ物ないよね?車だから飲み物とちょっとした食べ物ある方がいいよね?チョコレートとクッキーと。。。高崎さんチー鱈好きかなぁ?。。あ、高崎さん。。もしもし高崎さん!おはようございます!え?うちのマンションのエントランスに着いたんですか?分かりました!すぐ下に降りますね!
一応、チー鱈持ってこっと、食べたいし。。傘は。。要らないか。。オッケー!じゃあ、いってきます!」
ぽんっ。
いってらっしゃい。・ 素敵な1日を。。
あなたが幸せだと私も幸せ。。

「お姉ちゃんここに住んでたんだね、宮崎から遠いねぇ」
「誰に似たのか部屋がすごく綺麗、さすがデザイナーね」
「思ってたより広いね、東京だからもっと狭いと思ってた」
「そうね、部屋探しも全部自分でやるって言って心配してたけど良い部屋見つけてたんだね」
「お母さん。。カレンダー。。『10月18日 高崎さんと箱根、熱海』花丸付いてる。。お姉ちゃん楽しみにしてたんだね」
「そうね。。参列に来てくれた同僚の河合さんが話してくれたけど、高崎さんと付き合って3日目だったんだって。。楽しみで仕方なかったと思う。。初めてのデートだったって。。まさか2人ともあんな事故に巻き込まれるなんてね。。。」
「。。あれ?お母さん テーブルに封筒置いてある」
「封筒?」
「1。。2。。3。。4。。5万円入ってる。。。お母さん?」
「。。結衣が入社してから半年間、毎月5万円送金してくれてて。。東京は物価も高いし給料も多くないから要らないって言ったけど、母子家庭なのにお母さんも体調崩して大変だろうし、何よりまだ高校生の舞の為に使ってって。。舞は大学行きたいのに金銭面で諦めようとしてるって。。舞には好きな道に進んで欲しいって。。だから残った分は貯金してって。。結衣も大変だったろうに。。」
「お姉ちゃん。。。お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「舞泣かないでよ。。あんたが泣いたら私も止められなくなっちゃうじゃない。。?? カエルのぬいぐるみ?結衣カエルなんて好きだった?」
「。。カエル?。。お姉ちゃん前からカエルグッズ集めてたよ。たまたま見かけて何で集めてるの?って聞いたら。。『カエルのフォルムも好きだけど、カエルを家に置いておくと必ず家に戻ってくるんだって。。必ず家に帰るって。。おまじないみたいなもんだけどねって。。。お姉ちゃん。。死んじゃったら帰って来れないじゃない!うわぁぁぁぁん」
「。。そうだったのね。。あなたがずっと結衣を見てくれていたのね。。ありがとう。。」
ぽんっ。
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