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イエローヘブン

はじめまして

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どこにでもあるヒト気のない、商店街の端っこに、ポツンとある店。

「メンズショップ・イエローヘブン」
定休日はないが、来る客もない。

びっくりするほど年代物の服を売っているブティック。
レディースも少し扱っているが、「メンズショップ」
これは、店主の趣味による。

店主は大柴カツ子。年齢不詳。本人はガンとして言わない!
毎日、念入りに化粧し、12色クレヨンのような色の服を着てすっとぼけているが、多分50は越えている。

本日、そのカツ子の店「メンズショップ・イエローヘブン」
の前はあふれんばかりのパトカーで、商店街は久々の人だかりだった。

「カツ子!何があった!」

「あ、葉ちゃん。ドロボーが入った。」

「店にか?」

「うん。」

「は・・・取るものなんてないだろ。こんなきったない店。」

「それが今日に限ってあったんだよね・・・」

「なに?」

「お金。」

「いくら?」

「一千万」

「い・・・なんで?まさか!お前、強盗してきたんじゃないだろうな。」

「ちげーよ。預かった金だよ。この仕事は受けないつもりだったのに・・・
やらなきゃならなくなったじゃねえか・・・あ、ったく!ついてねえ。」

カツ子は商店街のど真ん中で大の字になって寝転んだ。

そりゃあ一千万もの金を盗まれたらカツ子のような相当に肝の座った女でも狼狽えて当然。話ができるだけいいほうだ。

「女だろ。もっときれいな言葉使えよ。」

「美人は何しても許されるんだよ。ほっといてくれ。」

「美人?どこにいるんだ。最近見たこともねぇ。まさか、お前か?・・・・そういえばお前、小奇麗な格好してるじゃないかどうしたんだ。」

「俺と一緒だった。」

大和八太郎 55歳が葉一に言った。体が大きく年の割には逞しく張った筋肉。
セーターに薄手のジャンパーと言う格好だったが、その眼光の鋭さで警察関係者だと言うことはすぐにわかった。

「デート・・・?な訳ないか・・・ひょっとして、警察に捕まったとか。」

 
「ちょっと、行方不明の女の子の話を聞いていただけだよ。」

大和八太郎は不貞腐れて道端で転がっているカツ子を上を跨いで葉一の隣にわざわざやって来た。

わざわざやってきて葉一の正面に立ってそういうと、意味なく手を差し出したので、葉一はとりあえず握手した。

「それって・・・例のあれか?」

「葉ちゃんが例の・・・なんていうと、ちょっとぞくっとしちゃうね・・・」

カツ子はすくっと勢いよく立ち上がり、葉一に体を擦り付けると葉一は、アもスもなく思い切りカツ子を殴り飛ばした。カツ子は少しよろめいたが、平然と前髪をなおし葉一を見て薄笑いをうかべた。

気味の悪い女だと思いながらも、葉一はカツ子から目を離すことができなかった。

が、二人の関係に嫌悪感はあれど、恋愛感情などは一切ない。断じてない!
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