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イエローヘブン
第一の災難
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そして、行くところのない可哀そうな葉一は、心理学教室の太田と名乗る助教授に拾われた。
彼と葉一は同級生だった。しかも、幼馴染だった。
だが、葉一は友達だと思ったことは一度もなく、幼馴染と言われても、記憶にすら留めてもおらず、ただのおせっかいな奴、程度にしか思っていなかった。
葉一は大学には残りたかったが、物理ができなくなった自分に、価値を見出せず自暴自棄になっていた。
そもそも、心理学など全くの興味もなく、大学に来ても何をするでもなく屋上でただ、たばこを吸っているだけの日々を漫然と過ごしていた。
そして、突如、死のう!と考えた。
ここの屋上から飛び降りれば死ねるかも!と考えて手すりに足を掛けた時、なぜが真正面からへんな女が現れた。
そう、今まさに葉一が乗り越えようとしている柵を越えて屋上へとやって来たのだ。
「よっこらしょっと!」
葉一は驚いた。
いや、その状況を目の当りにしたら、葉一だけではない、ふつうは誰でも驚く。
だって、そこは8階建ての屋上。よじ登って来るにしても、這い上がって来るにしても高すぎるだろ・・・
そしてその見事に派手な身なりにも相当驚いた。
「ねえ、あんた、トイレってどこ?」
「はぁ?・・・」
「トイレ!こっちだって聞いたんだけど。」
「トイレなら、あの扉を入って・・・階段を下りて・・・左。」
「そ、サンキュ!」
女は校舎の中へ走って行った。
葉一はしばらく呆然と、その女が股間を抑えて校舎の中へ飛び込んで行く姿を目で追いかけた。
その後、あの女とその件についてしばし考えては見たが、ハッとして、その後を追いかけた。
理屈のわからない事は嫌いだ。
女がトイレに飛び込むのを見届け、トイレの前で待った。延々と1時間半待った。
が、女は出てこなかった。
意を決して女子トイレに飛び込んだ。が、人の気配はなかった。
葉一は幻とか超常現象なるものは一切信じない!目に見えるものだけがすべてで、その女が自分の前にさっと現れパッと消えたことがどうしても納得できなかった。
幸薄そうなか細い女なら幽霊などと言って、(まあ、納得は行かないにしろ、)気持ちを落ち着かせることもできただろうが、今時どこで買ったかわからないようなスゲー派手でサイケデリックな服を着た中年のおばさんが「よっコラショ」と現れて、自分にトイレの場所まで聞いて、そんな存在感のある物体を洋一の脳裏で幽霊と位置付けるにはいささか無理が生じた。
そんなこんなを考えていたらどうしても気になって、所在を確かめたくなった。
「多分まだ近くにいるはず。」
なんとなくだがそう思った葉一は、大学中を走り回って探した。
あの派手な服装なのだから、遠目で見ても絶対!わかる。
そうだ!時計台だ!双眼鏡を持って時計台に行ってみよう!あそこから見渡せば、近辺一帯は見えるはず!そう考え、双眼鏡を取りに心理学教室に戻ると、そこにその派手なおばさんがいた。
「あ!すごいカツ子さんの勝ちだ!」
血相を変えて部屋に戻ってきた葉一の姿を見て太田が手を叩いて喜んだ。
「じゃあ1万円。」
「毎度アリ!またな!」
「待てよ!」
その派手な女が部屋を出て行こうとしたのを葉一は止めた。まあ、当然そうなる。
この女に会ってからの一連の状況が全くと言っていいほど、理解できていないし、太田の喜んでいる姿も、太田との関係も一切、飲み込めない。
「説明・・・してほしいんだー。」
「当たり前だろ!」
満面の笑みの太田に渙発入れずにそう言った。
彼と葉一は同級生だった。しかも、幼馴染だった。
だが、葉一は友達だと思ったことは一度もなく、幼馴染と言われても、記憶にすら留めてもおらず、ただのおせっかいな奴、程度にしか思っていなかった。
葉一は大学には残りたかったが、物理ができなくなった自分に、価値を見出せず自暴自棄になっていた。
そもそも、心理学など全くの興味もなく、大学に来ても何をするでもなく屋上でただ、たばこを吸っているだけの日々を漫然と過ごしていた。
そして、突如、死のう!と考えた。
ここの屋上から飛び降りれば死ねるかも!と考えて手すりに足を掛けた時、なぜが真正面からへんな女が現れた。
そう、今まさに葉一が乗り越えようとしている柵を越えて屋上へとやって来たのだ。
「よっこらしょっと!」
葉一は驚いた。
いや、その状況を目の当りにしたら、葉一だけではない、ふつうは誰でも驚く。
だって、そこは8階建ての屋上。よじ登って来るにしても、這い上がって来るにしても高すぎるだろ・・・
そしてその見事に派手な身なりにも相当驚いた。
「ねえ、あんた、トイレってどこ?」
「はぁ?・・・」
「トイレ!こっちだって聞いたんだけど。」
「トイレなら、あの扉を入って・・・階段を下りて・・・左。」
「そ、サンキュ!」
女は校舎の中へ走って行った。
葉一はしばらく呆然と、その女が股間を抑えて校舎の中へ飛び込んで行く姿を目で追いかけた。
その後、あの女とその件についてしばし考えては見たが、ハッとして、その後を追いかけた。
理屈のわからない事は嫌いだ。
女がトイレに飛び込むのを見届け、トイレの前で待った。延々と1時間半待った。
が、女は出てこなかった。
意を決して女子トイレに飛び込んだ。が、人の気配はなかった。
葉一は幻とか超常現象なるものは一切信じない!目に見えるものだけがすべてで、その女が自分の前にさっと現れパッと消えたことがどうしても納得できなかった。
幸薄そうなか細い女なら幽霊などと言って、(まあ、納得は行かないにしろ、)気持ちを落ち着かせることもできただろうが、今時どこで買ったかわからないようなスゲー派手でサイケデリックな服を着た中年のおばさんが「よっコラショ」と現れて、自分にトイレの場所まで聞いて、そんな存在感のある物体を洋一の脳裏で幽霊と位置付けるにはいささか無理が生じた。
そんなこんなを考えていたらどうしても気になって、所在を確かめたくなった。
「多分まだ近くにいるはず。」
なんとなくだがそう思った葉一は、大学中を走り回って探した。
あの派手な服装なのだから、遠目で見ても絶対!わかる。
そうだ!時計台だ!双眼鏡を持って時計台に行ってみよう!あそこから見渡せば、近辺一帯は見えるはず!そう考え、双眼鏡を取りに心理学教室に戻ると、そこにその派手なおばさんがいた。
「あ!すごいカツ子さんの勝ちだ!」
血相を変えて部屋に戻ってきた葉一の姿を見て太田が手を叩いて喜んだ。
「じゃあ1万円。」
「毎度アリ!またな!」
「待てよ!」
その派手な女が部屋を出て行こうとしたのを葉一は止めた。まあ、当然そうなる。
この女に会ってからの一連の状況が全くと言っていいほど、理解できていないし、太田の喜んでいる姿も、太田との関係も一切、飲み込めない。
「説明・・・してほしいんだー。」
「当たり前だろ!」
満面の笑みの太田に渙発入れずにそう言った。
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