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そしてやはり事件です
乙女
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「さあ、俺にわかるように説明してくれ!」
葉一は店の真ん中で仁王立ちして言った。
「葉ちゃんさぁ、髪パーマあてたら。ちょっとウエーブしてたほうがきっと似合うよ。」
カツ子は葉一の髪をさらりと撫でると、店の奥へと進んだが、葉一は早足でその前に立ちはだかりゆく手を阻んだ。
「話を変えるな。どうして俺をおいて警察に行ったんだ。」
「警察には行ってない。あの高校へ行ってた。」
「じゃあ、どうして八太郎さんと一緒に来たんだ!」
「なに、葉ちゃん。やいてんの?」
葉一は無言でカツ子に飛び蹴りした。カツ子はバランスを崩したが、すんでのところで棚に手をかけ転倒は待逃れた。
「行方不明になった子の妹が・・・高校へ来たんだ。その子は、秋山美咲。」
何も言わないカツ子に変わって八太郎が説明を始めたが、その隣で重く曇った顔のカツ子を見て、高額なギャラでもやりたくないと言っていた訳が少しだけわかったような気がしていた。
「だから、その妹に会って、話を聞いた。お姉さんとは、とても仲良くて毎日メールを交わしていたらしい。
けど、ある日を境にピッタリ来なくなったって。
高校まで会いに来たけど合わせてもらえなかったから、警察来たんだ。」
店の中で暴れている二人の横をすり抜けて、中央のソファーに八太郎は深く腰掛けて大きく息をついた。
ヨレヨレのジャンパーを脱いで横になると、足がソファーからかなりはみ出た。
「え?八太郎さんって・・・少年課なんですか?」
「違うよ。でも、その子がお姉さんは殺されたんだって言い張るから・・・」
「ハチが暇だったんじゃないの?」
「暇じゃねえよ。夜勤明けで、やっと帰れると思ったらその子に出口で掴まったんだよ。
しつこくってさ・・・少年課は忙しそうだし・・・仕方なくついてったらカツ子も来たんだ。」
「はぁ・・・・」
カツ子は頭を抱えた。
やりきれないモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
「まさか・・・こんな早く次が進んでいくとはね・・・」
「次が起きることはわかっていたのか。」
カツ子は両手で頭を抱えたまま2度頷いた。
「でも、もう警察も動くんでしょ。」
「そう簡単には・・・俺は課が違うし・・・なんとも・・・」
「はぁ・・・・」
葉一は、カツ子ずっと頭を抱えたままのカツ子の髪を鷲掴みにして持ち上げ、自分の真正面に顔を向けた。
ハッとしたカツ子は
「葉ちゃんの顔って、近くで見るとさらにきれいだね・・・キスしてよ。」
と訳の解らないことを言って葉一を怒らせた。
「バカなこと言ってないで、続きを教えろ。」
そう言うと、殴りたい気持ちをぐっとこらえて、髪を掴んだ手を離した。
「とりあえず、始まりは、あの西門真理音のあの病室な訳だから、あの部屋へ行ってみた。」
「何かわかったのか。」
八太郎は身を乗り出して聞いた。
「彼女の苦しみが痛いほど・・・」
「別の階のナースステーションで聞いていた話は?」
「棚橋まどか?彼女は真理音とは別の学校の子で、あの病院に看護実習で来ていたんだろうね。名前はわかったけど、学校名まではわからなかった・・・」
「もう一人、本を触って何とかって名前呟いていただろう。」
「吉野要。彼は・・・多分、真理音が好きな男の子。医大生で、あの病院にも何度か来た・・・
そして真理音に会ってる。あの図書館で・・・」
カツ子が見た図書館での光景は、カツ子が手に取ったあの本に真理音が手を伸ばした時、ちょうど吉野要も手を伸ばし、指先が触れた・・・少女漫画の一コマのような出会いだった。
そのとき見えた吉野要は、そんなに背が高いわけではなく、飛び切りのいい男という訳でもない。ごく普通のどこにでもいる、普通よりちょっと清潔感があって、普通よりちょっと優等生タイプで、目立つタイプではないが、敬遠されるタイプでもない・・・ちょっと優しそうなメガネ男子。
言葉にするには特徴がなさ過ぎて、一番難しいタイプの人間だった。
「まだ片思いなのか・・・もう付き合ってるのか・・・そこまではわからなかった。ただ、真理音はとてもその人に会いたがっている・・・それだけはわかった。」
「で、その実習生と、その男はどういうつながりなんだよ。」
「棚橋まどかともその図書館で会ってる。吉野要とも・・・そして、吉野要に気持ちを伝えてほしいと言うことを頼んでいる。」
「で、行方不明になった子のことは何にも出てきませんけど、どうなってんですか、カツ子さん。」
カツ子は八太郎の隣に崩れるように腰掛けて、背もたれに首を預けた。
「あの子の気持ちがさぁ・・・吉野でいっぱいでさぁ・・・・ほかは、なーんもなかった・・・」
そう言ったと同時に寝落ちした。
「クッソ、わかんねえじゃねえか!」
「なんだ、お前は、全部一度にわからないと気が済まないたちなんだな。」
「当たり前だろ。公式だってパズルだって、先が見えてるから解けるんだ。先が見えてねえ、断片だけって、いったい何を言いたいのか、何がしたいのか、さっぱりわかんねぇ。
おい!起きろ!」
「もう、寝かせといてやれ。おれもよくわからねえが、こういうことをすると、凄く疲れるらしい。」
八太郎は自分の着ていたジャンパーを脱いでカツ子に掛けた。
「お前どうする?ここにいてやるのか?」
「帰るよ。もちろん。」
「じゃあ、俺が弁当買ってくるまで待っていてくれるか?」
「なんで?おっさんも一緒に帰ったらいいだろ。」
「ここ、外から鍵が掛けられないんだよ。だから、こいつが先寝ると、誰かが中からカギを掛けないと・・・」
「じゃあ、帰れないじゃないですか。」
「どうせカツ子はここで寝てるから、俺は二階の部屋で寝る。」
「じゃあ、俺も一緒にここで飯だけ食って帰ろうかなぁ。自分の部屋にゴミたまるの嫌だし。俺、弁当買ってきますよ。何にします?」
「俺、魚系がいい。任せる。味噌汁はここで作るから、汁物はいらない。」
「わかりました。」
男たち二人は弁当とビールを買い込んで、好き勝手に晩餐を楽しんだ。
あとからシュウも合流し、それは賑やかに夜を満喫した。
カツ子は一人、店に置き去りにされた。
葉一は店の真ん中で仁王立ちして言った。
「葉ちゃんさぁ、髪パーマあてたら。ちょっとウエーブしてたほうがきっと似合うよ。」
カツ子は葉一の髪をさらりと撫でると、店の奥へと進んだが、葉一は早足でその前に立ちはだかりゆく手を阻んだ。
「話を変えるな。どうして俺をおいて警察に行ったんだ。」
「警察には行ってない。あの高校へ行ってた。」
「じゃあ、どうして八太郎さんと一緒に来たんだ!」
「なに、葉ちゃん。やいてんの?」
葉一は無言でカツ子に飛び蹴りした。カツ子はバランスを崩したが、すんでのところで棚に手をかけ転倒は待逃れた。
「行方不明になった子の妹が・・・高校へ来たんだ。その子は、秋山美咲。」
何も言わないカツ子に変わって八太郎が説明を始めたが、その隣で重く曇った顔のカツ子を見て、高額なギャラでもやりたくないと言っていた訳が少しだけわかったような気がしていた。
「だから、その妹に会って、話を聞いた。お姉さんとは、とても仲良くて毎日メールを交わしていたらしい。
けど、ある日を境にピッタリ来なくなったって。
高校まで会いに来たけど合わせてもらえなかったから、警察来たんだ。」
店の中で暴れている二人の横をすり抜けて、中央のソファーに八太郎は深く腰掛けて大きく息をついた。
ヨレヨレのジャンパーを脱いで横になると、足がソファーからかなりはみ出た。
「え?八太郎さんって・・・少年課なんですか?」
「違うよ。でも、その子がお姉さんは殺されたんだって言い張るから・・・」
「ハチが暇だったんじゃないの?」
「暇じゃねえよ。夜勤明けで、やっと帰れると思ったらその子に出口で掴まったんだよ。
しつこくってさ・・・少年課は忙しそうだし・・・仕方なくついてったらカツ子も来たんだ。」
「はぁ・・・・」
カツ子は頭を抱えた。
やりきれないモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
「まさか・・・こんな早く次が進んでいくとはね・・・」
「次が起きることはわかっていたのか。」
カツ子は両手で頭を抱えたまま2度頷いた。
「でも、もう警察も動くんでしょ。」
「そう簡単には・・・俺は課が違うし・・・なんとも・・・」
「はぁ・・・・」
葉一は、カツ子ずっと頭を抱えたままのカツ子の髪を鷲掴みにして持ち上げ、自分の真正面に顔を向けた。
ハッとしたカツ子は
「葉ちゃんの顔って、近くで見るとさらにきれいだね・・・キスしてよ。」
と訳の解らないことを言って葉一を怒らせた。
「バカなこと言ってないで、続きを教えろ。」
そう言うと、殴りたい気持ちをぐっとこらえて、髪を掴んだ手を離した。
「とりあえず、始まりは、あの西門真理音のあの病室な訳だから、あの部屋へ行ってみた。」
「何かわかったのか。」
八太郎は身を乗り出して聞いた。
「彼女の苦しみが痛いほど・・・」
「別の階のナースステーションで聞いていた話は?」
「棚橋まどか?彼女は真理音とは別の学校の子で、あの病院に看護実習で来ていたんだろうね。名前はわかったけど、学校名まではわからなかった・・・」
「もう一人、本を触って何とかって名前呟いていただろう。」
「吉野要。彼は・・・多分、真理音が好きな男の子。医大生で、あの病院にも何度か来た・・・
そして真理音に会ってる。あの図書館で・・・」
カツ子が見た図書館での光景は、カツ子が手に取ったあの本に真理音が手を伸ばした時、ちょうど吉野要も手を伸ばし、指先が触れた・・・少女漫画の一コマのような出会いだった。
そのとき見えた吉野要は、そんなに背が高いわけではなく、飛び切りのいい男という訳でもない。ごく普通のどこにでもいる、普通よりちょっと清潔感があって、普通よりちょっと優等生タイプで、目立つタイプではないが、敬遠されるタイプでもない・・・ちょっと優しそうなメガネ男子。
言葉にするには特徴がなさ過ぎて、一番難しいタイプの人間だった。
「まだ片思いなのか・・・もう付き合ってるのか・・・そこまではわからなかった。ただ、真理音はとてもその人に会いたがっている・・・それだけはわかった。」
「で、その実習生と、その男はどういうつながりなんだよ。」
「棚橋まどかともその図書館で会ってる。吉野要とも・・・そして、吉野要に気持ちを伝えてほしいと言うことを頼んでいる。」
「で、行方不明になった子のことは何にも出てきませんけど、どうなってんですか、カツ子さん。」
カツ子は八太郎の隣に崩れるように腰掛けて、背もたれに首を預けた。
「あの子の気持ちがさぁ・・・吉野でいっぱいでさぁ・・・・ほかは、なーんもなかった・・・」
そう言ったと同時に寝落ちした。
「クッソ、わかんねえじゃねえか!」
「なんだ、お前は、全部一度にわからないと気が済まないたちなんだな。」
「当たり前だろ。公式だってパズルだって、先が見えてるから解けるんだ。先が見えてねえ、断片だけって、いったい何を言いたいのか、何がしたいのか、さっぱりわかんねぇ。
おい!起きろ!」
「もう、寝かせといてやれ。おれもよくわからねえが、こういうことをすると、凄く疲れるらしい。」
八太郎は自分の着ていたジャンパーを脱いでカツ子に掛けた。
「お前どうする?ここにいてやるのか?」
「帰るよ。もちろん。」
「じゃあ、俺が弁当買ってくるまで待っていてくれるか?」
「なんで?おっさんも一緒に帰ったらいいだろ。」
「ここ、外から鍵が掛けられないんだよ。だから、こいつが先寝ると、誰かが中からカギを掛けないと・・・」
「じゃあ、帰れないじゃないですか。」
「どうせカツ子はここで寝てるから、俺は二階の部屋で寝る。」
「じゃあ、俺も一緒にここで飯だけ食って帰ろうかなぁ。自分の部屋にゴミたまるの嫌だし。俺、弁当買ってきますよ。何にします?」
「俺、魚系がいい。任せる。味噌汁はここで作るから、汁物はいらない。」
「わかりました。」
男たち二人は弁当とビールを買い込んで、好き勝手に晩餐を楽しんだ。
あとからシュウも合流し、それは賑やかに夜を満喫した。
カツ子は一人、店に置き去りにされた。
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