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物語のはじまり
第8話 決着の行方
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「ただいまぁ」
「お帰りなさいませお嬢様」
「お帰りなさいお姉さま」
あの後、混乱するクラスメイトをルテアが一言で収めてくれた。さすが公爵令嬢誰も逆らえないね。
ロベリアは文句を言わないと言った癖に私を泥棒扱いしてきたので、スイとエンの魔法で脅した上、耳元でこっそりおパ○ツの色を伝えたら大人しくなった。
「この歳でフリフリってどうよ」と追い討ちをかけたのは若気の至りと言うもの。ぜひ見逃して欲しい。
「お嬢様、この子たちは?」
「押し掛け家族よ。名前は青い髪がスイで赤い髪がエンよ」
「「よろしく(な)!」」
訪ねてきたエレンとエリスに二人を紹介する。
「相変わらずでございますね」
今日学園であった経緯を二人に説明し終え、エレンが最初に放った言葉がこれだ。
相変わらずってどういう意味よ!
「まぁ、今日は疲れたからあえてツッコまないわよ。それよりスイ、エンちょっと説明しておきたい事があるの」
成り行きとは言え、二人が私の家族になったからにはこれからの事を説明しておく必要があると思い、今までの経緯を一通り説明した。
最後に『誰かにバラしたらシメル』と笑顔で脅したことは言うまでもない。
「別に構わないぜ、俺たちはアリスに付いていくだけだ」
「付いていくだけだ」
「ありがとう、それとリリーは生まれて数年の子供だから虐めないでよね、二人はお兄ちゃんになったんだから」
「「妹!?」」
「お兄ちゃん?」
うん、二人とも仲良くなってくれそうだ。
スイもエンも口は悪いけれど根はとてもいい、ロベリアに攻撃した時だって少し怪我をさせる程度だったし、今もリリーをみて顔を赤くしてる。いいお兄ちゃんになってくれそうだ。
「そう言えば二人の属性って何なの? エンは炎だってわかるけど」
「察しのとおり俺は炎の精霊、炎と熱の魔法が使えるぜ」
「俺は水の精霊で水と氷の魔法がつかえる」
ほぉ、熱と氷の魔法は使えるわね。この世界にオーブンなんて便利なものはないし氷は非常に貴重な物だ。
夏の暑い季節に氷の入った冷たい飲み物なんて絶対売れる!
えっ? 精霊を便利なキッチン道具と思っていないかって? まさか、流石の私も半分程度にしか思ってないわよ。
「お嬢様なんですかそのポーズ?」
嬉しさのあまりガッツポーズを決めていたらエレンが不思議そうに訪ねてきた。
エリス、お姉ちゃんのマネをしちゃいけません。
コンコン
皆んなでお茶を楽しんでいたらメイドの誰かが訪ねてきた。ごめん名前おぼえてないや。
「どうぞ」
エレンが私の代わりに返事をして対応してくれる。
「アリス様、旦那様が書斎でお呼びです」
私の呼び方がお嬢様でなく名前、叔父は旦那様ときましたか。まぁもういいんだけど。
「分かったわ、すぐに行くと伝えておいて」
「お嬢様」
メイドが出て行った姿を確認しエレンが声を掛けてきた。
恐らく分かっているのだろうこれから起こる事が。
「大丈夫よ」
緊張してなとい言えば嘘になる、だけどここが私の正念場。ちゃんと準備もしてきたし、この日の事は何度も頭の中でシミュレーションしてきた。頑張れ私。
「それじゃ行ってくるわ」
私はチェストにしまっていた封筒を二通取り出し叔父の元へ向かった。
「失礼します」
ノックと名乗りを上げ叔父の部屋へと入って行く。
ここは亡くなったお父様の書斎、いつも夜遅くまで机に向かい仕事をされていた姿を思い出す。
今は机から装飾品まですっかり変えられてしまい、昔を感じさせる物なんて何一つ残っていない。
「座りなさい」
私は叔父に促され一番離れた位置のソファーに座った。
「今日学園で事件が起こったらしいな」
叔父が一瞬私の肩に座っているスイとエンを見た気がするけど、今となっては正直どうでもいい。
「事件とはどのようなものでしょうか?」
「惚けるでない、お前の肩に乗っている精霊の事だ」
チクるとは思っていたけど帰って速攻話すとはどれだけ根性曲がっているのよ。もう少し脅しておいたほうがよかったかしら。
「その事ですか、事件というレベルのものではございませでしたので気づきませんでした」
「戯言を」
叔父夫婦がこの屋敷に乗り込んで来てもうすぐ一年、ここまで日が経つと私と叔父達の間には修復不可能な亀裂が入っていた。
もともと彼方に非があるのだから私としては譲るつもりもなかった……今日までは。
「本当にたいした事ではないんですよ。どこかのお嬢さんが無謀な精霊契約を行使し、自分が失敗した事に気づかないまま逃した挙げ句、精霊の名前にランスロットなんて恥ずかしい名前をつけようとしただけなんですよ。
その娘、可哀想な事に突然神風が吹いてスカートがめくれていましたわ。そう言えばあの歳でフリフリはないと思いませんか?」
「「ぷっ。」」
私の肩で笑いを堪えるスイとエン、叔父の顔も微妙に頬がピクついている。
「ぷくっ、ま、まぁよい」
あっ、笑いを堪えてる。関西人のボキャブラリーを舐めんな!
「それよりお前の婚約の日取りが決まった。日程は……」
「その前にそろそろ腹を割って話し合いませんか? 私もいい加減に疲れました」
「……何を言っている?」
「私とエリスの爵位を放棄すると言ってるのよ」
今の叔父の気持ちはどんなんだろう、喜んでいる? それとも警戒している? まぁどちらでもいい。
二人のやりとりを冷静な第三者の目で見ている私がいて正直驚いている。
「もう取り繕わなくてもいいわよ、言ったでしょ腹を割って話し合おうって」
「……いいだろう、何が目的だ」
叔父はソファーに深く座り直し、今までと態度を変えて訪ねてきた。
「こちらから望むものは一つ、いえ二つね。取り敢えず婚約は破棄してもらうわ、私たちは屋敷をでて行くからね。
それと、今後私と私に関わる人全てに一切関わらないと誓約書に認めて頂戴。
この条件を飲むのならこの誓約書をあげるわ、これには私とエリスが爵位を破棄すると書いてあるわ。次期伯爵として私の書印きでね」
私は予め作っておいた姉妹のサインが入った誓約書を取り出し見せた。離れた位置に座っているのは奪おうとされた場合、スイとエンそれにリリーの魔法が炸裂する手筈になっている。
「断ればどうなる?」
「別にどうもしないわよ。でも流石にこの屋敷には居づらいから……そうね、ここを出て友達の家にでも泊めてもらうわ。私の友達なんて一人ぐらいしかいないけどね」
私の唯一友達すなわちルテア。
当然ルテアが公爵家の令嬢だと知ってるはずなのでマズイとは思ってくれるだろう。だけど子供の戯言だと交わされた場合次の手は打ってある。
実は事前にルテアとルテアのお母さんには断りを入れている、私だっておいそれと公爵様の名前なんて出せませんよ。
しかしどうやら最後の切り札を使う必要もなかったみたい、効果はあったようだ。
「いいだろう条件を飲んでやる、只こちらからも一つ条件がある」
「聞くわ」
「こちらも誓約書を認めるのだ、お前も屋敷を出て行った後、これらの話を誰にも話さないと誓約書の残せ」
叔父がそう言ってくるのも折り込み済み、すでに私たちのサインが入った別の誓約書も準備済みだ。まだ見せるつもりはないけれどね。今見せればあまりの準備の良さに疑いかねない。まぁ、こちらとしても元々裏なんて無いんだけれど。
「もちろんそのつもりよ、父が大切に守ってきた伯爵の名に汚名を着せたくないからね。それに私が何を言ってもサイン入りの破棄の旨を書いた誓約書あるんだもの、これを見せればバカな女が叫んでいるだけにしか見えないわ」
「いいだろう、契約成立だ」
その後、互いに誓約書を取り交わし細かな事の裏合わせを行った。
まだ婚約もしていないのに急に学園から消えたら誰もが怪しむものね。
これでも王都で由緒正しい学園だ、例え学園外だと言っても生徒の保護や私生活へのフォローが徹底されている。だから事前に退学の旨を伝えておかないと大騒ぎになることだってあるんだ。
私と叔父が裏合わせをした内容はこうだ。
数日後に両者参加しないまま婚約は正式手続きを元に執り行われる。そしてさらに数日後には相手先から婚約の破棄を言い渡されると言う筋書き。
その後家名の不名誉という事で学園を中退、私たち姉妹は責任を取り爵位を叔父に譲った後屋敷を出る事になる。
そして山々がすっかり赤く染まり、両親が亡くなって丁度一年が過ぎようとする日、私たちは長年住み慣れた屋敷を後にした。
両親の想い出が詰まった大切な家を。
「お帰りなさいませお嬢様」
「お帰りなさいお姉さま」
あの後、混乱するクラスメイトをルテアが一言で収めてくれた。さすが公爵令嬢誰も逆らえないね。
ロベリアは文句を言わないと言った癖に私を泥棒扱いしてきたので、スイとエンの魔法で脅した上、耳元でこっそりおパ○ツの色を伝えたら大人しくなった。
「この歳でフリフリってどうよ」と追い討ちをかけたのは若気の至りと言うもの。ぜひ見逃して欲しい。
「お嬢様、この子たちは?」
「押し掛け家族よ。名前は青い髪がスイで赤い髪がエンよ」
「「よろしく(な)!」」
訪ねてきたエレンとエリスに二人を紹介する。
「相変わらずでございますね」
今日学園であった経緯を二人に説明し終え、エレンが最初に放った言葉がこれだ。
相変わらずってどういう意味よ!
「まぁ、今日は疲れたからあえてツッコまないわよ。それよりスイ、エンちょっと説明しておきたい事があるの」
成り行きとは言え、二人が私の家族になったからにはこれからの事を説明しておく必要があると思い、今までの経緯を一通り説明した。
最後に『誰かにバラしたらシメル』と笑顔で脅したことは言うまでもない。
「別に構わないぜ、俺たちはアリスに付いていくだけだ」
「付いていくだけだ」
「ありがとう、それとリリーは生まれて数年の子供だから虐めないでよね、二人はお兄ちゃんになったんだから」
「「妹!?」」
「お兄ちゃん?」
うん、二人とも仲良くなってくれそうだ。
スイもエンも口は悪いけれど根はとてもいい、ロベリアに攻撃した時だって少し怪我をさせる程度だったし、今もリリーをみて顔を赤くしてる。いいお兄ちゃんになってくれそうだ。
「そう言えば二人の属性って何なの? エンは炎だってわかるけど」
「察しのとおり俺は炎の精霊、炎と熱の魔法が使えるぜ」
「俺は水の精霊で水と氷の魔法がつかえる」
ほぉ、熱と氷の魔法は使えるわね。この世界にオーブンなんて便利なものはないし氷は非常に貴重な物だ。
夏の暑い季節に氷の入った冷たい飲み物なんて絶対売れる!
えっ? 精霊を便利なキッチン道具と思っていないかって? まさか、流石の私も半分程度にしか思ってないわよ。
「お嬢様なんですかそのポーズ?」
嬉しさのあまりガッツポーズを決めていたらエレンが不思議そうに訪ねてきた。
エリス、お姉ちゃんのマネをしちゃいけません。
コンコン
皆んなでお茶を楽しんでいたらメイドの誰かが訪ねてきた。ごめん名前おぼえてないや。
「どうぞ」
エレンが私の代わりに返事をして対応してくれる。
「アリス様、旦那様が書斎でお呼びです」
私の呼び方がお嬢様でなく名前、叔父は旦那様ときましたか。まぁもういいんだけど。
「分かったわ、すぐに行くと伝えておいて」
「お嬢様」
メイドが出て行った姿を確認しエレンが声を掛けてきた。
恐らく分かっているのだろうこれから起こる事が。
「大丈夫よ」
緊張してなとい言えば嘘になる、だけどここが私の正念場。ちゃんと準備もしてきたし、この日の事は何度も頭の中でシミュレーションしてきた。頑張れ私。
「それじゃ行ってくるわ」
私はチェストにしまっていた封筒を二通取り出し叔父の元へ向かった。
「失礼します」
ノックと名乗りを上げ叔父の部屋へと入って行く。
ここは亡くなったお父様の書斎、いつも夜遅くまで机に向かい仕事をされていた姿を思い出す。
今は机から装飾品まですっかり変えられてしまい、昔を感じさせる物なんて何一つ残っていない。
「座りなさい」
私は叔父に促され一番離れた位置のソファーに座った。
「今日学園で事件が起こったらしいな」
叔父が一瞬私の肩に座っているスイとエンを見た気がするけど、今となっては正直どうでもいい。
「事件とはどのようなものでしょうか?」
「惚けるでない、お前の肩に乗っている精霊の事だ」
チクるとは思っていたけど帰って速攻話すとはどれだけ根性曲がっているのよ。もう少し脅しておいたほうがよかったかしら。
「その事ですか、事件というレベルのものではございませでしたので気づきませんでした」
「戯言を」
叔父夫婦がこの屋敷に乗り込んで来てもうすぐ一年、ここまで日が経つと私と叔父達の間には修復不可能な亀裂が入っていた。
もともと彼方に非があるのだから私としては譲るつもりもなかった……今日までは。
「本当にたいした事ではないんですよ。どこかのお嬢さんが無謀な精霊契約を行使し、自分が失敗した事に気づかないまま逃した挙げ句、精霊の名前にランスロットなんて恥ずかしい名前をつけようとしただけなんですよ。
その娘、可哀想な事に突然神風が吹いてスカートがめくれていましたわ。そう言えばあの歳でフリフリはないと思いませんか?」
「「ぷっ。」」
私の肩で笑いを堪えるスイとエン、叔父の顔も微妙に頬がピクついている。
「ぷくっ、ま、まぁよい」
あっ、笑いを堪えてる。関西人のボキャブラリーを舐めんな!
「それよりお前の婚約の日取りが決まった。日程は……」
「その前にそろそろ腹を割って話し合いませんか? 私もいい加減に疲れました」
「……何を言っている?」
「私とエリスの爵位を放棄すると言ってるのよ」
今の叔父の気持ちはどんなんだろう、喜んでいる? それとも警戒している? まぁどちらでもいい。
二人のやりとりを冷静な第三者の目で見ている私がいて正直驚いている。
「もう取り繕わなくてもいいわよ、言ったでしょ腹を割って話し合おうって」
「……いいだろう、何が目的だ」
叔父はソファーに深く座り直し、今までと態度を変えて訪ねてきた。
「こちらから望むものは一つ、いえ二つね。取り敢えず婚約は破棄してもらうわ、私たちは屋敷をでて行くからね。
それと、今後私と私に関わる人全てに一切関わらないと誓約書に認めて頂戴。
この条件を飲むのならこの誓約書をあげるわ、これには私とエリスが爵位を破棄すると書いてあるわ。次期伯爵として私の書印きでね」
私は予め作っておいた姉妹のサインが入った誓約書を取り出し見せた。離れた位置に座っているのは奪おうとされた場合、スイとエンそれにリリーの魔法が炸裂する手筈になっている。
「断ればどうなる?」
「別にどうもしないわよ。でも流石にこの屋敷には居づらいから……そうね、ここを出て友達の家にでも泊めてもらうわ。私の友達なんて一人ぐらいしかいないけどね」
私の唯一友達すなわちルテア。
当然ルテアが公爵家の令嬢だと知ってるはずなのでマズイとは思ってくれるだろう。だけど子供の戯言だと交わされた場合次の手は打ってある。
実は事前にルテアとルテアのお母さんには断りを入れている、私だっておいそれと公爵様の名前なんて出せませんよ。
しかしどうやら最後の切り札を使う必要もなかったみたい、効果はあったようだ。
「いいだろう条件を飲んでやる、只こちらからも一つ条件がある」
「聞くわ」
「こちらも誓約書を認めるのだ、お前も屋敷を出て行った後、これらの話を誰にも話さないと誓約書の残せ」
叔父がそう言ってくるのも折り込み済み、すでに私たちのサインが入った別の誓約書も準備済みだ。まだ見せるつもりはないけれどね。今見せればあまりの準備の良さに疑いかねない。まぁ、こちらとしても元々裏なんて無いんだけれど。
「もちろんそのつもりよ、父が大切に守ってきた伯爵の名に汚名を着せたくないからね。それに私が何を言ってもサイン入りの破棄の旨を書いた誓約書あるんだもの、これを見せればバカな女が叫んでいるだけにしか見えないわ」
「いいだろう、契約成立だ」
その後、互いに誓約書を取り交わし細かな事の裏合わせを行った。
まだ婚約もしていないのに急に学園から消えたら誰もが怪しむものね。
これでも王都で由緒正しい学園だ、例え学園外だと言っても生徒の保護や私生活へのフォローが徹底されている。だから事前に退学の旨を伝えておかないと大騒ぎになることだってあるんだ。
私と叔父が裏合わせをした内容はこうだ。
数日後に両者参加しないまま婚約は正式手続きを元に執り行われる。そしてさらに数日後には相手先から婚約の破棄を言い渡されると言う筋書き。
その後家名の不名誉という事で学園を中退、私たち姉妹は責任を取り爵位を叔父に譲った後屋敷を出る事になる。
そして山々がすっかり赤く染まり、両親が亡くなって丁度一年が過ぎようとする日、私たちは長年住み慣れた屋敷を後にした。
両親の想い出が詰まった大切な家を。
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