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みるくてぃー

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騒乱

第34話 変化する戦況

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「リーゼのブラン家が謀反を起こしたですって?」
 お父様が家に戻られてから一番最初にそう告げられた。

 陛下の死後ウィリアムとの婚約があやふやになっており、つい先日アデリナの家が謀反を起こした事でようやく前に進むかと思われた矢先、王子付きのダグラスがウィリアムの戴冠の儀が終わるまで結婚はお預けだと言ってきた。
 折角邪魔者がいなくなったというのに、この上更に先延ばしにされるなんて堪ったもんじゃないわよ。


「どうやらウィスタリア家の者を匿い、レガリアに逃がしたそうだ」
「それでどうなったんですの? リーゼは国に捕まりましたの?」
 もしリーゼが国に捕まれば笑い者にしてやれる、ウィリアムもまさか謀反を企てた家の者を好きだとは言いださないだろう。
「いや、騎士団がブラン家に押し入った時にはもぬけの殻だったそうだ」
「そう、ざんねんね。折角惨めな姿を見られると期待していのに」

「はぁ」
 お父様が珍しく大きなため息をつかれる。
「どうなさったのですか? そんな大きなため息をつかれて」
「何でもない、お前は早く王子と結婚することだけを考えろ」
「それは分かっていますが……」
 私だって早く結婚したいわよ、そうすれば綺麗な服も高価な装飾品だっていっぱい買えるというのに、ダグラスが止めるんだから仕方ないでしょ。

「そうだ、実は欲しいお化粧品があるんです。ウィリアムの為にも買ってもいいですわよね」
「……あぁ、好きにしろ」
(分かっているのか、今アージェント領が大変な事になっており、お前が王子と結婚出来なければ我が一族が路頭に迷ってしまうかもしれないという事を) 





 ブラン領が国に反旗を翻したとの一報を受け、私はフェルナンド候の命令で一軍を率いて出陣した。
 こちらの軍は騎馬隊のみで編成されたおよそ一千、一方ブラン領にはまともな騎士団は存在せず、いても精々200騎程度。予定では一日も掛からず殲滅出来るはずだ。

「分隊長、私はこの戦いには賛成しかねます。そもそもブラン家や公爵様が反旗を翻すなどとても考えられません」
 騎士団は元々ウィスタリア公爵が統制されておられた。だけど陛下が亡くなられてからは国の問題に手を取られてしまい、昨年の末頃にフェルナンド候が騎士団長に就任された。
 フェルナンド候は就任後すぐに騎士団の中核を大きく入れ替え、何処からか連れてきた怪しい一団を騎士団に迎え入れた。
 最初は古参の騎士達も反発や抗議をしていたが、逆らう意思を見せた者から辞めさせられ、公爵様に直訴しようとした者は姿を消した。

 私達国に仕える多くの騎士は、元々貴族の遠縁にあたる者が多いとはいえ直接陛下や公爵様はおろか、下級貴族と言われている方々でさえ安易に話しかける事はできない。仮に何らかの不満や改善策を伝えるには、自らの上司に一つ一つ段階を踏んでいかなければ話は通らないのだ。

「迂闊にそのような事は口にするな、我らは国の指示に従うだけだ」
 そんな事言われなくとも分かっている。恐らく古参の騎士はの大半は私たちと同じ気持ちだろう、だが騎士団に入ったからには国の指示には従わなければならない。ここで嫌だと軍を抜けると脱走兵として処分されるし、王都に残してきた家族の生活にも行き詰まる。今の私達に選択の余地など何処にもないのだ。

「貴様ら無駄口を叩く暇があればさっさと先へと進め、今日中にブランを落とさなければいつレガリアの介入があるか分からないんだぞ!」
 後方からこの軍を指揮する部隊長の叱咤しったが響く。一瞬我らの会話が聞かれたかと思ったが、どうやら不満を口にしていたの者は他にも多く、全員に言い聞かせるように大声で叫んだようだ。

「くそっ、フェルナンドの腰巾着が、後から騎士団に入っておきながら三流侯爵家の嫡子だっていうだけで、実力もないのに部隊長とか……ふざけていやがる」
 こいつも余程日頃の鬱憤うっぷんが溜まっているのだろう、周りを見渡せば我が分隊の者はおろか、他の分隊の連中まで不満が顔に出てしまっている。だが部隊長の言う通り、早急にブランを制圧しなければレガリアの介入が入り、間違いなくこちらの被害が大きくなってしまう。
 本当なら同じ国の者同士で争いたくはないが、今ならこの軍の数を見せて降伏を促す事も可能だろう。これが唯一双方に被害を出さずに解決させる最善の策だ。
 願わくば何時やぞ姿をみたブラン家のご令嬢だけは無事に逃げてくれる事を祈るのみ。

「ブラン領が見えたぞ!」
 先頭の部隊にいる者から声が聞こえる。
 これでいいんだ、我ら騎士の役目は国の命に従い国民の命を守る事。これがブランの民を守り、国の治安を守るための最善の策なんだから。

 全軍が小高い丘の上に布陣する。そして眼下に広がる光景を目にして全員が言葉を失った。





「大丈夫? リーゼ」
「すみませんお母様、お姉様。私のせいでこんな事になってしまって」
 今朝早く、王都からブラン領に目掛けて軍が出陣したと報告が入った。しかも夜が回ってからの出陣だったらしく、完全に不意を突かれた形となってしまった。

 本来軍を動かすには夜は不向きだ、見通しも悪く疲れも溜まる。それなのに軍を動かしたのはレガリアの動向を警戒するためだろう。
 私の考えは朝に王国軍が出陣し、山を3つ越える事を考えるとブラン領の手前に到着するまで約二日、その日は進軍の疲れを癒すために休息し、翌日に開戦という流れを想定していた。それだったら少なくとも二日は時間を稼ぐ事が出来たのだ。でも今朝受けた報告には敵の数はおよそ一千、しかも全員が騎馬に搭乗しているとの事なので進軍のスピードは恐らく倍以上だろう。
 先ほどミズキさんが急ぎレガリアに向かってくれたが、レガリアの王都にミズキさんが到着されるより、王国軍がブラン領に到着する方が明らかに早い。

 いくら騎士団を結成したとはいえレガリア軍が到着するまで約4日間、ブランの騎士団だけで防ぎ切らなければならないが、一千の騎馬隊の前では一日たりとも守りきる事は不可能だ。

「あなたが気にやむ事はないわ、困っている友達を助けるのに理由なんて必要ない、私の両親もそうやって笑って逝かれたわ」
「お母様……」
 それって20年前の……
 いや、今は昔の事を考えている時じゃないわね、とにかくこの現状をどうにかしないと。

 お母様とお姉様は昨日無事にブラン領へと戻られた。本当なら伯爵代理をお姉様に譲るべきなのだろうが、何故かお父様は私に継続するようにと言われていたらしい。



「騎士長、ハンス、急ぎこういうモノを沢山作って欲しいの」
 軍略会議、と言えば聞こえはいいが実際この場にいるのは僅か数名、それも半数は非戦闘員というのだからとても太刀打ちが出来るものでもないが、このまま黙って待つほど私も馬鹿ではない。

「何ですかこれは?」
 私が紙に描いた丸太と縄で作った簡易的な柵。
「これは拒馬きょばと言って騎馬の進行を防ぐものよ。これを一定間隔に配置し、さらに前後に隙間を埋めるように配置するの」
 三国志や戦国時代に詳しい人なら知っているだろう、城門の前に丸太の先を尖らしたモノを組み合わせ、騎馬隊の進行を防ぐための簡易的な柵。歩兵部隊には役に立たないが、猛スピードで突入してくる騎馬隊には障害物として役に立つ。
 こんな物で戦況が変えられる訳ではないが、無いよりかはましであろう。

「なるほど、これで騎馬隊の侵入を防ぐのですね。すぐに取り掛かりましょう」
 そう言って騎士長が近くにいた部下に指示を出し、早速作業に向かってくれる。
「王国軍は今日中には到着してしまうのよね? 何時頃になりそうなの?」
「報告では陽が完全に落ちる前には到着してしまうそうです」
「流石に早いわね、それだと今日中に攻撃を仕掛けてくる恐れがあると考えた方がいいわね」
「その為に夜の強行をしたのでしょうから、間違いなく今日中に攻めてくるでしょう」
「サツキさん、レガリアの援軍はどれぐらいになりそう? 無理を言っているのは分かっているけど、出来るだけ急いで欲しいの」
 サツキさんは少し考えた末、出てきた言葉に一同が驚愕する事になる。
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