夜明けのレガリア ―光と影の双子の公女―

みるくてぃー

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第15話 星槍の輝き

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 ゴゴゴッッ!!
「なんだ!?」
 突如帝国軍の中心部目掛けて竜巻が吹き荒れる。

「くそ、あの魔法はやべぇ」
 敵の大将が突如発生した竜巻に気を取られた瞬間私は最後の力を振り絞った。
「ぐあぁ!」

 私の突き出した剣が敵大将の右肩を貫く。
 更に剣を突き刺したまま短剣に持ち替え、太もも目掛けて突き刺す。
「がぁ!! クソが!」
 剣をこちらに振りかぶろうとするが、痛めた肩のせいで振り上げる事も出来ないようだ。その隙に数歩下がって間合いを取る。
 急所を狙えれば良かったのだが、今の私では相手の鎧を貫く力はない。そのため鉄で覆われていない場所を攻撃したのだが、何とか上手くいったようだ。

 傷口はヒールポーションで治す事は出来るだろうが、痛みまでは直ぐに治らない。相手は利き腕と足を痛めているのだから、剣を振るう事は出来ないだろうし、馬を操るのも苦労するだろう。これで敵大将はしばらく使い物にならないはすだ。

「テメェよくもやってくれたな! 今すぐそいつを殺せ!」
 後ろに控えていた騎兵が大将を庇うよう前に出てくるが、私にはもう戦える余力はない。ここで死ぬ事になるが、最後にミレーナの役に立てたのであれば十分だろう。
 敵兵から振り下ろされる剣を見ながら最後の時を迎える。

***************

 シルメリアの魔法のおかげで敵は大混乱に陥っており、この機に全軍をもって突撃を開始する。
(セレスティナどこにいるの)
 途中味方の騎士達と合流しながら森の奥へと突き進んでいく。

「お嬢様!」
 カリナが指差す方を見れば敵の騎兵に囲まれたセレスティナの姿、振り上げられた剣が彼女を襲おうとしているが、ここからでは遠すぎる。
(私はまた助けられないの? 嫌だ、そんなの絶対に嫌だ! もうあんな思いをするのは絶対に嫌だ!)

「スターゲイザーーーっ!!!」
 気づけば私は叫んでいた。
 なぜその名前を呼んだのか、なぜと分かっていたのか、なぜ答えてくれると分かっていたのか……その時の私は何も分かっていなかった。
 だが突如目の前に現れた星槍を自然と掴み、馬上から大きく跳躍する。

「間に合えーーーっ!!」
 とても跳躍ごときでこの距離を飛び越える事は出来ないだろう、だけどこの時の私は何故か出来る気がしたのだ。

***************

「父上、よろしかったのですか?」
「元の持ち主に返しただけだ、あとはランスベルト王子から公女の元に届けられるだろう」

「しかしあの槍は父上が……」
「私は星槍の主人ではない、ならば真の主人の元へと返すのが流儀であろう」
「真の主人……、では父上はミレーナが星槍の継承者だと?」
「……それはいずれ分かるだろう、真にスターゲイザーに認められた者ならば、必ず私たちの前に姿を現すのだから」

 ゼストもセレスティナも知らないが、兄上の娘はもう一人いるのだ。今はノースランド公爵家に引き取られたと聞いていたが、ミレーナの側にマスクを付けた少女がいると知った時から密かに調べさせていた。
 そしてあの戦い以降姿を見せていない事も。

 恐らくあの戦いで深手を負ってしまい、今はどこかで身を潜めているのだろう。もしかすると妹の成長を近くから見守っているだけかもしれないが……いずれにせよ、あの時の輝きは主人の死を悲しんだのかと思ったが、今は主人を助けようと何らかの魔力を放ったのではないかと考えている。

 確か姉の名前はリリーナ、リリーナ・ウエストガーデンと名付けられたはず、果たしてスターゲイザーに選ばれるのは姉か妹か……。

***************

 体が急に熱くなり全身から炎が立ち上る。
 それは徐々に形を変え炎の鳥へと姿を変える。

「ぐわぁ」
「があっ」
 気づけば目の前に呆然と佇むセレスティナの姿と、馬上から落ちて倒れ伏せている敵兵。何故か全身焼け焦げたようになっている。

「き、き、貴様ぁーー!!」
 大声で叫んだ敵に槍を突きつけたところで、初めて自分の持っている槍が何時も愛用している物と違う事に気づく。
(どういう事? 私今なにしたの?)

「くそ、お前ら時間を稼げ」
 男はそう言い残すと、一人馬を操りながら逃げ去っていく。
 追いかけたいのは山々だが今はセレスティナの容態が気になる、彼女は全身ボロボロで立っているのもやっとの様子だ。

「ここは私が押さえますので、お嬢様はセレスティナ様の治療を」
 追いついてきたカリナが木の上から敵兵に襲いかかる。
「わかったわ、深追いはしないで」
 それだけ言うとすぐに治療を開始する。一番深い傷は左脇腹付近だが、これならまだ私の魔法で応急処置ぐらいは出来る。
治療魔法キュア
 手のひらから淡い光が傷口を照らしていく。

「ありがとうミレーナ、助かったわ」
「じっとしていて、私の魔法では応急処置がやっとだから」
 私ができるのは傷口を塞ぐだけなので、全開するまでは十分な休息が必要となるだろし、無理に動こうとしたら再び傷口が開く可能性がある。
 見た目は治ったようでも油断はできないのだ。

「それにしても何時の間に奥義まで使えるようになったのよ」
 治療中、駆けつけてきた味方の兵のおかげで安心したのか、セレスティナが私に訪ねてきた。
「なんの事?」
「なんの事って、さっき使ってたでしょ? 七星槍術の奥義」
「……えっ?」
 私が使える槍術は炎魔法を核とした紅蓮槍と光弾槍、魔法を核としない龍牙槍と飛竜槍の4つだけ、他にも風魔法を核とした流星槍と彗星槍があるが、風属性が使えない私では扱う事が出来ない。風神槍はまぁ、無属性なんだけど技術が足りず同じく使えない。
 そして七つの技の奥義として、風魔法を使った防御重視の烈空陣と、炎魔法を使った攻撃重視の鳳凰翼が存在するのだが、風属性のない私には烈空陣は使えないし、鳳凰翼は今まで一度たりとも成功した試しがない。

「もしかして気づいてなかったの? さっき私を助けるために炎を纏って飛んできたじゃない。しかもあんな距離を」
「それ本当?」
 あの時は絶対にセレスティナを助けるんだって事に頭がいっぱいで、正直よく覚えていない。それに何時の間にか手にしているこの槍……
「ちょっと、それスターゲイザーじゃない!? なんで持ってるのよ!」
「あぁ、やっぱりそうよね?」
 私一人じゃ自身がなかったけど、彼女が言うなら間違いないだろう。
 なんか分からないうちに手にしてたと言っても信じてくれないだろうが、実際にそうなのだから仕方がない。

「ミレーナ様、帝国軍は撤退を開始しました」
 クラウスが馬に乗って報告しにくる。
「わかったわ、すぐに追撃戦を開始して」
 深追いは禁物だが、この後の事もあるので出来るだけ敵兵の数を減らしておきたい。
「セレスティナはこのまま後方に下がって休んでいて、私は追撃戦に向かうわ」
「ごめんなさい役に立てなくて」
「何言ってるのよ、貴方が援軍を食い止めてくれていたから今の私たちがいるのよ」
「ありがとう、気をつけてね」
「うん、じゃ行ってくるね」
 私は再び馬に跨り戦場へと戻っていく。
 全身に満ちる暖かな光、右手には光り輝く槍を携えて。



 この後駆けつけてきたフィーナ様の部隊とアドルの部隊が合流し、帝国軍の援軍を壊滅させるまでに追い詰める事が出来た。
 絶望から奇跡の援軍、そして色々謎の残る激しい戦いであったが、私たちウエストガーデン解放軍は無事プレデミー領を解放する事に成功した。
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