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第22話 死闘
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「……何で来たの」
私はセレスティナに命を助けられた事に苛立ちを隠せないでいた。
「命令違反の罪は後でこの身を持って償います。だけど貴方をここで失うわけにいかない」
「これは私の戦いよ、どきなさい」
立ちふさがるセレスティナを怒りの眼差しで睨め付ける。
「どきません、今の貴方は復讐の鬼に我を忘れています。これが国のため、国民の為に戦っているなら私だって見守っていました。だけど、ただ己の為にだけに振るう剣ではお父様を殺させはしません」
「それは反逆するという意味?」
「どう取って貰おうと構いません、今の貴方を救えるのなら私一人の命、惜しくはありません」
両手を広げ私の前に立ちふさがる、まるで斬られても構わないといった風に。
復讐の鬼……そんな事言われなくても私自身が一番よく分かっている。
周りを見渡せば心配そうに見守るミレーナの姿、いや、彼女だけではない、カリナも準も騎士達全員。敵味方合わせて全員が私を心配そうに見守っている。
……はぁ、私は何をやっていたのだろう。この戦いは一人で戦っているのではなく、皆で戦っているのだ。
この間は偉そうな事を言っておいて自分がこんなザマでは格好がつかないわね。
手に持つ槍をゆっくりと眺める。
この戦いの為に武器庫から適当に持ち出してきたものだが、扱い方がよほど悪かったのだろう、柄は傷つき、刀身は歯こぼれを起こしている。これが今の私の実力だ。こんなものでは親の仇を討つなどという事は到底無理だろう。
私は一度大きく息を吸い込み呼吸を整える。
体はあちらこちら痛いがまだ立ち上がる事は出来るし、まだ戦う事も出来る。
「どいてもらえるかしら」
「そんなに父を殺したければ、まず私を殺してからにしてください」
「それは困るわね、貴方を失うのは今後国を立て直すのに大きなマイナスになってしまうわ」
「えっ?」
「もう大丈夫よ、来てくれてありがとう」
すれ違いざまに軽く彼女の肩をたたく。
「だったら私が父と戦います。これは娘としての役目です」
「悪いわね、例え誰であろうともこの戦いを譲る気はないわ。」
「待ってください! 父は私が……」
「セレスティナ、ローズさんの邪魔をしないで」
尚も私を止めようとするセレスティナをミレーナが止めに入る。
「でも……」
「これは私たちの戦いなの、誰にも手を出させないわ」
「……わかったわ」
「ローズさん受け取ってください」
そう言ってミレーナが持っていた槍を私に差し出してくる。
「忘れないでください、これは私たちの戦いです」
「……そうだったわね、これは私たちの戦よ」
私は持っていた槍を差し出し、ミレーナの槍を受け取った。
ふぅ、ミレーナはすでに立派な公女として成長している。にわか仕込みの姉の役目はもう必要ないわね。
私がマスクを付けた理由は自身の正体を隠すためと、妹を甘やかさないため。だけど実際は私の存在を否定される事を怖がっていただけなのかもしれない。
だったらもうその役目も要らない、そっと顔に付けていたマスクを取り外す。
「私は解放軍の戦士リリーナ・ウエストガーデン、この一戦をレガリア解放への道筋とする!」
「受けてたとう、我はグレアム・ウエストガーデン。未来を築く若人よ、見事この私を倒しこの国を救って見せよ。」
星槍が眩いばかりの光を放つ……暖かい、まるでお母様に包まれているようなこの感じ、以前何処かで……
まぁいいか、スターゲイザー私に力を貸して。
槍術では技術も力も叔父の足元にも及ばないだろう、例え星槍の力を解放したとしても勝てるかどうか。でも何でだろう、妙に落ち着いている自分がいる。
星槍が私の想いに答えて更に激しく輝きだす、黒く染めた髪が元のブロンドの髪にもどるほどに。
***************
リリーナ・ウエストガーデン、リリーナ……それがローズさんの、いえお姉様の本当の名前。
私は何度も心の中でその名を繰り返す。すると突然お姉様の持つ星槍が輝きだした。
凄い、私が持っていた時の輝きの比ではない、やっぱり星槍の真の継承者はお姉様なんだ。
光に包まれたお姉様の髪が見る見る黒から私と同じブロンドの髪に変わっていく。
「え、え、えぇーーー!! ミレーナが二人!?」
何事かと思い隣を見るとセレスティナが目を大きく見開き私とお姉様を交互に見ている。そう言えば誰にもローズさんが私の双子の姉かもとは、話したことはなかったわね。
後ろを振り向けば雫以外は誰一人として驚いている様子はみれない、準さんはまぁ何となく想像はつくけど、カリナや連れて来た騎士まで驚いていないってどういうこと? しかも騎士の中には薄っすら涙まで浮かべている者までいる。
そう言えばお姉様が選定した騎士は全員が戦いを始めた時からのメンバーだった、もしかしてローズさんの正体を知っていたの?
「ちょ、ちょっと! ローズさんって一体何者!? リリーナ・ウエストガーデンって誰よ!」
「あぁ、詳しい説明は省くけどローズさんは私の双子のお姉様よ」
この戦いの邪魔をしたくないので出来るだけ早く完結に説明する。
「双子!?」
もう一度私とお姉様を交互に見つめ、最後に私の顔をじっと眺める。
「よく分からないけど、こうもそっくりなら納得するしかないわね。ミレーナがやけにローズさんの事を信頼しきっているとは思っていたけど、そう言う事だったのね。」
勝手に迷って自分で解決したみたいだけど、その答えは間違いである。私がローズさんがお姉様だと確信したのはほんの数日前なのだ、それまではもしかしたらと言う思いはあったが自信はなかった。
それにもしローズさんの正体が何であれ、私は彼女の事を信頼していただろう。
そしてこれからもずっと信頼し続けるはずだ。
私はこの戦いを一瞬も見逃す事無く見守り続ける、星槍の真の後継者の姿をこの目に焼き付けるのだ。
***************
キンッ
槍の刃と刃が重なり合う、もし私が星槍の力を全て解放していれば力の足りない私でも刀身を切り裂いていたかもしれない、だが今の星槍は輝きを潜め普通の槍へと姿を変えている。
「娘を遠ざけてくれたこと、例を言うぞ」
二人だけしか聞こえない大きさで叔父が話しかけてくる。
「唯でさえ、あの子は大変な未来が待っているのよ。この上父親殺しの汚名まで着せるわけにはいかないわ」
「すまんな、だがこの戦いに手は抜かんぞ!」
「余計な気づかいは要らないわ、全力で潰しにかかりなさい!」
お互い交わっていた刃の力を利用し、大きく間合いを取る。
「良く言った、それでこそ真の星槍の後継者だ、行くぞ! 奥義、七星鳳凰翼!」
叔父が炎を纏って襲い掛かる。
「させないわ、七星槍術奥義、七星裂空陣!」
大きく槍を旋回させ一気に地面に突き刺すと、私を中心に風の防壁が吹き荒れる
「無駄だ、鳳凰の翼撃は風の陣では防ぎきれん!」
「きゃーっ」
叔父の奥義は風の防壁を貫き、構える槍ごと私を遥か後方へと吹きとばした。
「痛っ」
炎の熱さと吹きとばされた時の衝撃で体のあちらこちらを痛めてしまう。
次に同じ技を食らえば確実にやられる。
「どうした、何故星槍の力を使わぬ。使えぬと言うわけではあるまい」
「妹の前でみっともない姿を見せちゃったからね、この上星槍の力で勝ったとあっちゃ、姉の威厳が無くなってしまうのよ」
「ふっ、面白い。ならば今一度受けてみよ、奥義、七星鳳凰翼!」
迫りくる鳳凰の羽ばたき、こんな時だと言うのに叔父の技が美しとさえ思えてしまう。一体これほどまで洗練された技を習得するまでにどれだけ努力したのだろう。
五行思想の風を全身に纏わせながら槍を下段に構え、柄を浅く両手で握りながら前後に足を開きスッっと腰を落とす。
「七星槍術裏奥義……」
すべての防御を捨て、鳳凰の羽ばたきがぶつかるギリギリの間合いで一気に槍を振り上げる。
「蒼月!」
槍が三日月のような軌道を描き、目にも止まらない速さで鳳凰を二つに切り裂く。すれ違いざまに全身を炎で包まれるが、風の幕によって全てを防いでいた。
「見事だ……ぐはっ」
槍の一薙ぎで全身の炎跡形もなく消え去る。
後ろを振り向けば体から血を流し、片膝を付いた叔父がいた。
「何だ今の技は」
「貴方は七星槍術の由来を知っているかしら?」
「由来? そうか、あの島国の技か」
ウエストガーデンの最初の公爵の名前はスザク、遥か東に浮かぶパングージの元王子だったという。
その王子は自身が身につけた技を公爵家に幾つも残したと言われており、やがて長い年月を生涯をかけ一つの槍術へと姿を変えた。そして完成された七つの技とウエストガーデンに伝わる星槍から、何時しか七星槍術と呼ばれるようになったと伝えられている。
つまり独自の発展を繰り返したとは言え、元は準達の生まれ故郷であるパングージの技ななのだ。だから私は彼の刀技をヒントに新たな奥義を編み出した。
力の無い私でも最大の破壊力を繰り出す事が出来るカウンター技。一歩間違えれば自滅の身を歩む事になるが、成功すれば鳳凰の羽ばたきをも切り裂けると考えた、これがその答えだ。
「良い勝負出会った」
「後の事は全て任せてゆっくりと休みなさい。例え歴史にその悪名が残ろうとも、私達の間では子孫まで勇敢に戦った戦士の事を語り継ぐわ」
「……すまなかった、我は兄の元へとは行くことが出来ないから、いずれ合う事があれば不出来な弟が謝っていたと伝えてくれ」
「えぇ、約束するわ」
「感謝す……る……」
叔父はその場で崩れるようにして倒れていった。
……強かった、もう一度戦ったとしたら恐らく負けてしまうだろう。それほどまでに叔父の技は洗練されていたのだ。
「お姉様……」
「終わったわよ、ミレーナ」
ありがとうスターゲイザー、そしてさようなら。
「受け取りなさいミレーナ、星槍はウエストガーデンの正当な当主であるあなたが継承しなさい」
「待ってくださいお姉様、星槍はお姉様を真の継承者だと認めています。それはここにいる全ての者が理解しているはずです」
「だけど私はこのままフィーナと共にノースランドへ戻らなければならない、今までのようにこの地で戦い続けることは出来ないのよ」
そう、私の故郷はここではない。ノースランドでは未だジーク様と騎士団が戦い続けているのだ。戦力は欲しい、だけど彼の下に位置にでもの至宝を持ち出すわけにはいかない。
それに星槍はウエストガーデンの正当な当主の証なのだ。
「ならばその星槍をこの国解放のために使いなさい、貴方にはその資格があるわ」
全員が私たちを見守る中突如現れた一人の女性。
……何で、何で生きているんですか……お母様……
私はセレスティナに命を助けられた事に苛立ちを隠せないでいた。
「命令違反の罪は後でこの身を持って償います。だけど貴方をここで失うわけにいかない」
「これは私の戦いよ、どきなさい」
立ちふさがるセレスティナを怒りの眼差しで睨め付ける。
「どきません、今の貴方は復讐の鬼に我を忘れています。これが国のため、国民の為に戦っているなら私だって見守っていました。だけど、ただ己の為にだけに振るう剣ではお父様を殺させはしません」
「それは反逆するという意味?」
「どう取って貰おうと構いません、今の貴方を救えるのなら私一人の命、惜しくはありません」
両手を広げ私の前に立ちふさがる、まるで斬られても構わないといった風に。
復讐の鬼……そんな事言われなくても私自身が一番よく分かっている。
周りを見渡せば心配そうに見守るミレーナの姿、いや、彼女だけではない、カリナも準も騎士達全員。敵味方合わせて全員が私を心配そうに見守っている。
……はぁ、私は何をやっていたのだろう。この戦いは一人で戦っているのではなく、皆で戦っているのだ。
この間は偉そうな事を言っておいて自分がこんなザマでは格好がつかないわね。
手に持つ槍をゆっくりと眺める。
この戦いの為に武器庫から適当に持ち出してきたものだが、扱い方がよほど悪かったのだろう、柄は傷つき、刀身は歯こぼれを起こしている。これが今の私の実力だ。こんなものでは親の仇を討つなどという事は到底無理だろう。
私は一度大きく息を吸い込み呼吸を整える。
体はあちらこちら痛いがまだ立ち上がる事は出来るし、まだ戦う事も出来る。
「どいてもらえるかしら」
「そんなに父を殺したければ、まず私を殺してからにしてください」
「それは困るわね、貴方を失うのは今後国を立て直すのに大きなマイナスになってしまうわ」
「えっ?」
「もう大丈夫よ、来てくれてありがとう」
すれ違いざまに軽く彼女の肩をたたく。
「だったら私が父と戦います。これは娘としての役目です」
「悪いわね、例え誰であろうともこの戦いを譲る気はないわ。」
「待ってください! 父は私が……」
「セレスティナ、ローズさんの邪魔をしないで」
尚も私を止めようとするセレスティナをミレーナが止めに入る。
「でも……」
「これは私たちの戦いなの、誰にも手を出させないわ」
「……わかったわ」
「ローズさん受け取ってください」
そう言ってミレーナが持っていた槍を私に差し出してくる。
「忘れないでください、これは私たちの戦いです」
「……そうだったわね、これは私たちの戦よ」
私は持っていた槍を差し出し、ミレーナの槍を受け取った。
ふぅ、ミレーナはすでに立派な公女として成長している。にわか仕込みの姉の役目はもう必要ないわね。
私がマスクを付けた理由は自身の正体を隠すためと、妹を甘やかさないため。だけど実際は私の存在を否定される事を怖がっていただけなのかもしれない。
だったらもうその役目も要らない、そっと顔に付けていたマスクを取り外す。
「私は解放軍の戦士リリーナ・ウエストガーデン、この一戦をレガリア解放への道筋とする!」
「受けてたとう、我はグレアム・ウエストガーデン。未来を築く若人よ、見事この私を倒しこの国を救って見せよ。」
星槍が眩いばかりの光を放つ……暖かい、まるでお母様に包まれているようなこの感じ、以前何処かで……
まぁいいか、スターゲイザー私に力を貸して。
槍術では技術も力も叔父の足元にも及ばないだろう、例え星槍の力を解放したとしても勝てるかどうか。でも何でだろう、妙に落ち着いている自分がいる。
星槍が私の想いに答えて更に激しく輝きだす、黒く染めた髪が元のブロンドの髪にもどるほどに。
***************
リリーナ・ウエストガーデン、リリーナ……それがローズさんの、いえお姉様の本当の名前。
私は何度も心の中でその名を繰り返す。すると突然お姉様の持つ星槍が輝きだした。
凄い、私が持っていた時の輝きの比ではない、やっぱり星槍の真の継承者はお姉様なんだ。
光に包まれたお姉様の髪が見る見る黒から私と同じブロンドの髪に変わっていく。
「え、え、えぇーーー!! ミレーナが二人!?」
何事かと思い隣を見るとセレスティナが目を大きく見開き私とお姉様を交互に見ている。そう言えば誰にもローズさんが私の双子の姉かもとは、話したことはなかったわね。
後ろを振り向けば雫以外は誰一人として驚いている様子はみれない、準さんはまぁ何となく想像はつくけど、カリナや連れて来た騎士まで驚いていないってどういうこと? しかも騎士の中には薄っすら涙まで浮かべている者までいる。
そう言えばお姉様が選定した騎士は全員が戦いを始めた時からのメンバーだった、もしかしてローズさんの正体を知っていたの?
「ちょ、ちょっと! ローズさんって一体何者!? リリーナ・ウエストガーデンって誰よ!」
「あぁ、詳しい説明は省くけどローズさんは私の双子のお姉様よ」
この戦いの邪魔をしたくないので出来るだけ早く完結に説明する。
「双子!?」
もう一度私とお姉様を交互に見つめ、最後に私の顔をじっと眺める。
「よく分からないけど、こうもそっくりなら納得するしかないわね。ミレーナがやけにローズさんの事を信頼しきっているとは思っていたけど、そう言う事だったのね。」
勝手に迷って自分で解決したみたいだけど、その答えは間違いである。私がローズさんがお姉様だと確信したのはほんの数日前なのだ、それまではもしかしたらと言う思いはあったが自信はなかった。
それにもしローズさんの正体が何であれ、私は彼女の事を信頼していただろう。
そしてこれからもずっと信頼し続けるはずだ。
私はこの戦いを一瞬も見逃す事無く見守り続ける、星槍の真の後継者の姿をこの目に焼き付けるのだ。
***************
キンッ
槍の刃と刃が重なり合う、もし私が星槍の力を全て解放していれば力の足りない私でも刀身を切り裂いていたかもしれない、だが今の星槍は輝きを潜め普通の槍へと姿を変えている。
「娘を遠ざけてくれたこと、例を言うぞ」
二人だけしか聞こえない大きさで叔父が話しかけてくる。
「唯でさえ、あの子は大変な未来が待っているのよ。この上父親殺しの汚名まで着せるわけにはいかないわ」
「すまんな、だがこの戦いに手は抜かんぞ!」
「余計な気づかいは要らないわ、全力で潰しにかかりなさい!」
お互い交わっていた刃の力を利用し、大きく間合いを取る。
「良く言った、それでこそ真の星槍の後継者だ、行くぞ! 奥義、七星鳳凰翼!」
叔父が炎を纏って襲い掛かる。
「させないわ、七星槍術奥義、七星裂空陣!」
大きく槍を旋回させ一気に地面に突き刺すと、私を中心に風の防壁が吹き荒れる
「無駄だ、鳳凰の翼撃は風の陣では防ぎきれん!」
「きゃーっ」
叔父の奥義は風の防壁を貫き、構える槍ごと私を遥か後方へと吹きとばした。
「痛っ」
炎の熱さと吹きとばされた時の衝撃で体のあちらこちらを痛めてしまう。
次に同じ技を食らえば確実にやられる。
「どうした、何故星槍の力を使わぬ。使えぬと言うわけではあるまい」
「妹の前でみっともない姿を見せちゃったからね、この上星槍の力で勝ったとあっちゃ、姉の威厳が無くなってしまうのよ」
「ふっ、面白い。ならば今一度受けてみよ、奥義、七星鳳凰翼!」
迫りくる鳳凰の羽ばたき、こんな時だと言うのに叔父の技が美しとさえ思えてしまう。一体これほどまで洗練された技を習得するまでにどれだけ努力したのだろう。
五行思想の風を全身に纏わせながら槍を下段に構え、柄を浅く両手で握りながら前後に足を開きスッっと腰を落とす。
「七星槍術裏奥義……」
すべての防御を捨て、鳳凰の羽ばたきがぶつかるギリギリの間合いで一気に槍を振り上げる。
「蒼月!」
槍が三日月のような軌道を描き、目にも止まらない速さで鳳凰を二つに切り裂く。すれ違いざまに全身を炎で包まれるが、風の幕によって全てを防いでいた。
「見事だ……ぐはっ」
槍の一薙ぎで全身の炎跡形もなく消え去る。
後ろを振り向けば体から血を流し、片膝を付いた叔父がいた。
「何だ今の技は」
「貴方は七星槍術の由来を知っているかしら?」
「由来? そうか、あの島国の技か」
ウエストガーデンの最初の公爵の名前はスザク、遥か東に浮かぶパングージの元王子だったという。
その王子は自身が身につけた技を公爵家に幾つも残したと言われており、やがて長い年月を生涯をかけ一つの槍術へと姿を変えた。そして完成された七つの技とウエストガーデンに伝わる星槍から、何時しか七星槍術と呼ばれるようになったと伝えられている。
つまり独自の発展を繰り返したとは言え、元は準達の生まれ故郷であるパングージの技ななのだ。だから私は彼の刀技をヒントに新たな奥義を編み出した。
力の無い私でも最大の破壊力を繰り出す事が出来るカウンター技。一歩間違えれば自滅の身を歩む事になるが、成功すれば鳳凰の羽ばたきをも切り裂けると考えた、これがその答えだ。
「良い勝負出会った」
「後の事は全て任せてゆっくりと休みなさい。例え歴史にその悪名が残ろうとも、私達の間では子孫まで勇敢に戦った戦士の事を語り継ぐわ」
「……すまなかった、我は兄の元へとは行くことが出来ないから、いずれ合う事があれば不出来な弟が謝っていたと伝えてくれ」
「えぇ、約束するわ」
「感謝す……る……」
叔父はその場で崩れるようにして倒れていった。
……強かった、もう一度戦ったとしたら恐らく負けてしまうだろう。それほどまでに叔父の技は洗練されていたのだ。
「お姉様……」
「終わったわよ、ミレーナ」
ありがとうスターゲイザー、そしてさようなら。
「受け取りなさいミレーナ、星槍はウエストガーデンの正当な当主であるあなたが継承しなさい」
「待ってくださいお姉様、星槍はお姉様を真の継承者だと認めています。それはここにいる全ての者が理解しているはずです」
「だけど私はこのままフィーナと共にノースランドへ戻らなければならない、今までのようにこの地で戦い続けることは出来ないのよ」
そう、私の故郷はここではない。ノースランドでは未だジーク様と騎士団が戦い続けているのだ。戦力は欲しい、だけど彼の下に位置にでもの至宝を持ち出すわけにはいかない。
それに星槍はウエストガーデンの正当な当主の証なのだ。
「ならばその星槍をこの国解放のために使いなさい、貴方にはその資格があるわ」
全員が私たちを見守る中突如現れた一人の女性。
……何で、何で生きているんですか……お母様……
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