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第二章 ミッドランドに帰らなきゃ編
24、女王、何故か言葉の通じる人を見つける。
しおりを挟む夜になった。
キャロラインはどこかの家と家の僅かな隙間に入り込み、そこで三角座りをして群衆をやり過ごしていた。
グゥ~、とお腹の虫が鳴る。
お腹が減った……
また涙が出てきそうになる。
右の手首が痛かったことが遠い昔のように思えてきた。
とにかく、おなかに何か入れるべきだと思った。
人間である以上、何かを食べなければ生きてはいけないし、なにより、何かを食べなければ頭が回らない。とにかく、どうにかしてミッドランドへ帰らなければならない。その為には、今食べなければ。
キャロラインは三角座りをやめ、立ち上がり、通りに出た。
色んな店から明かりが消えていて、まだ開いているお店は一軒しかなかった。だから、キャロラインはそこに入った。そこはどうやら居酒屋だった。
店の棚には如何にも安そうな葡萄酒が並んでいた。
キャロラインは無言で空いているカウンター席に座ると、強面のオッサンが「コアウホジクゲタ?」と聞いてきた。
言葉など全く分からないので、キャロラインはメニュー表を指さした。そうすれば何かは出てくるだろうと思ったからだ。
予想通り、強面のオッサンは無表情のままジョッキを取り出し、そこに何かの酒を注いでゆく。なんの酒を注いでいるのかは知らないが、飲めないものを出すわけがない。
――とりあえず、お酒をたくさん飲めばお腹も膨れるわ。
強面のオッサンが乱暴にキャロラインの前にジョッキを置き、中の酒が少し周りに飛び散る。
「野蛮な」と小さな声で言ったキャロラインはグラスを手に取り、それを口の中に注ぎ込んだ。
――!!!
キャロラインは思い切りむせた。この酒、アルコールがキツイ!
それを見た周りの客が笑う。
うるさいわね、と思った……が、口に出さない。外国人だと思われたら途端に追い出されるかもしれないと思ったからだ。もう一杯飲むと、キャロラインはまたむせた。更に一杯飲み、またむせる。
どうでもいい客の声が耳に入りこんでくる。
「ホウケコママケゲウアフォ」
「ジリジリラゲマヘ」
「ポワトメアバナスケガ」
本当に、酷い響きの言葉……と思いながら更に一杯飲む。
それを繰り返してゆくと、なんだか、段々どうでもよくなってきた気がしてきた。
こんな場所からミッドランドに帰るなんて、どだい無理だったのかもしれない。
こんな地の果てからミッドランドへなんて帰れっこないわ。
無理よ、無理。
その間にもウザったらしいあの言葉が耳に入り込む。
「ラオケアナケマゲケンゲ」
「ホウケコママケゲウアフォ」
「ケイェカゲゼヘカリアケ?」
別に言葉を差別しているわけじゃないけど、何をどうやったらそんなにひどい言葉を発することができるのか心底わからなかった。
こいつらみんな滅んでしまえばいいんだわ。
「コゲマハケイアケドア」
「コレメツゴアケカネフォアケ」
「オッサン! おつまみ頼むわ! なんかあるでしょう?」
「カコエンラオケアナケマゲ」
「コエオガオエイガケイ」
――ん?
今、なにか聞こえたような……
いや、気のせいに決まってる……、と思いジョッキを傾けた時、その声はまた聞こえた。
「ったく、全然冷えてないじゃんこの葡萄酒。アチキをなめてんのかい?」
――え?
キャロラインは思わずそちらを見た。すると、肌が黒く髪が金色のギャルが酒場の店主や周りの客と何か言い争いをしていた。ギャルは声を荒げた。
「だから! 酒がぬるいって言ってんの!」
「コゲオカクフルケ!」
「あんたは黙ってな! 酒がまずくなる」
「ゲヘベクアカ!」
「なんだってぇ!? もういっぺん言ってみな!」
言葉を喋れる人をみつけた! と思いキャロラインはギャルに近づき「あなたミッドランド語が喋れるのね?」と問うと、周りの人々がざわついた。
ギャルも青ざめた顔でキャロラインを見る。
――ん?
なにか反応がおかしい気がした。
「だって、あなたは今ミッドランド語喋ってたじゃない。そうでしょう?」と聞いてもギャルは何も答えない? どうしてだろう?
そこまで言葉に発してから初めて自分の間違いに気づいた。
そういえば、この女は何故か店主や周りの客とミッドランド語で言い争ってたのだ。ミッドランド語を知らないはずのこの連中と……
まさか……
ステータス画面を開くと、ちょうどスキル“交渉術”が点滅し、その下に小さく“交渉中”へと書かれていた。
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