悪役令嬢キャロライン、勇者パーティーを追放される。

Y・K

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第二章 ミッドランドに帰らなきゃ編

26、影武者、魔王と出会う。

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 壁に掛けてある大きな時計の針が3の数字を指した。もう夜の3時になってしまった。夜空にはまるいお月様が浮かび、その月光が寝室に入り込む。


 女王の寝室のベッドで横になっていたパナは大きなたれ目をぱちりと開いた。


 やっぱり寝られない……


 その日パナはなかなか寝つけなかった。


 色々考え事をしていたら寝られなくなったのだ。


 あんな話、絶対に無理だ……、とパナは思った。


 あんな話……とは、本当の女王キャロライン様は消えたけど、他の諸侯に女王が消えたと勘づかれたくないから、パナが女王のふりをする……、という話だ。


 パナが偽物だと知っているのは二人。女王様の御父君のアルバトーレ=ドンスター公爵様。それにドンスター家の一切をあずかる執政官イエロー様。

 この二人だけだ。その二人が決めたのだ……今回の決定を……


 どうしてそんな決定なんてしたんだろう? とパナは思った。


 そんな大役なんてオラには無理なのに……、どうして……


 パナは再び目をつぶる。早く眠りたかった。深い眠りについて、意識を無くしてほしかった。




 そんな時だった。


 ガタガタと窓が揺れたのだ。


 風の仕業だろう、と思いそのままベッドに中にいると「これ、朕を無視するのかキャロライン」という声が聞こえた。


 え?


 思わず上半身を起こし、窓を見ると、黒い翼の生えた青い坊ちゃん刈りの少年が窓を揺らしていた。


 あ、悪魔? モンスター?


「これ、キャロライン。早く開けぬか。そなたが寝ている時以外いつでも遊びに来てよいと言ったゆえ朕は遊びにきたのだぞ。これ、早く開けぬか」


 この悪魔少年が女王様の名前の口に出しているので、パナは混乱しながらも窓をあけた。


「ふー、それまであまり地上に出たことはなかったが、地上に友がいると出る機会が多くなるなぁキャロライン……。これもなかなか悪くないと思えるぞ朕は……、ん?」


 パナは驚きのあまり声をだせずにいると、青い髪の少年ザザバエゾはパナの体に鼻を近づけて、くんくんその匂いを嗅いだ。


「ん? そなた匂いが違うな……、キャロラインではないのか?」

「そ、その……オラ、パナ……と申しますだ」

「ふーん……、で? 朕の友のキャロラインはどこじゃ?」

「そ、それが……」


 パナは状況の一切合切を説明した。


「ふむ。ようは、どこかに飛ばされた、ということじゃな? 魔法によって」

「そうですだ」

「分かった。朕が探しに行ってやろう」

「本当ですけ?」

「うむ。友は大切にしろ、と父上からよう言われておったからのう。友を大切にできぬものは頂点に立つ資格などない、と」

「お父様……ご立派な方ですねぇ」

「そなたもそう思うか? 朕もそう思う。父上は朕の憧れじゃ……しかし……ここにキャロラインがいない、となると……まったくどうしてこやつは……」とザザバエゾは言い、ベッドサイドテーブルに置かれた例の魔族の時計を睨みつけた。

「これ、このザザバエゾが来てるというに、まだ眠ったままか?」

 すると、その魔族の時計の文字が表示されていた部分がみるみる丸くなり、そこに黒々とした目玉が現れた。目玉はザザバエゾの姿を捉えると、飛び上がった。

「あ、王陛下……、王陛下ではございませんか……」と時計は甲高い声をあげる。「これはご機嫌麗しゅう」

「愚か者! 朕の機嫌がよいと思うか? そなたがずっと寝ていたせいで朕の友キャロラインがいなくなってしまったではないか」

「キャロライン様がですか? へー……いつでございます? ここにいらっしゃるじゃありませんか」

「匂いを嗅いでみよデンプシー! 別人じゃ!」

「くんくん……。あ…………」

 時計のデンプシーは何かを察したように黙り込んだ。

 しばらく沈黙が続く。そしてようやくザザバエゾがゆっくりと口をあけた。


「よくも朕に恥をかかせてくれたなデンプシー。覚悟はできているな?」

「お待ちください陛下! その……すぐに探してきます。すぐにキャロライン様を探してきますゆえ、この度の失態お許しくだされ!! なにとぞ! なにとぞ!!」

「……必ず見つけ出すか?」

「もちろんでございます! このデンプシーめのスキルはそのためにあるのでございますから」

「うむ。では朕の気持ちが変わらぬうちに早くいけ!」

「はっ!!」

 時計のデンプシーはそう言うと、背中から翼を生やし、まんまるのお月様が浮かぶ闇夜に飛び立っていった。

 パナがその奇怪な光景に目を奪われている隙に、青い髪の少年はどこかに消えた。

 パナは大きく息をつき、ベッドに大の字になる。

 なんだか不思議な夜だ……、そう思った。
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