悪役令嬢キャロライン、勇者パーティーを追放される。

Y・K

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第二章 ミッドランドに帰らなきゃ編

38、女王、新スキル「女王の言葉」を発動させる。

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 この時、キャロラインには全く自覚がなかったが、


 彼女はレベルアップしていた。


 様々な経験をし、困難を味わい、そしてレベルアップしたのだ。



 そして、レベルアップと同時に彼女にはあるスキルが開眼していた。



 その名も【 女王の言葉クイーンズワード 】


 それは元々持っていたスキル「交渉術」と同じく、何の戦闘力も持たないスキルで、効能は“自分が喋っている言葉が真実であると、聞いている相手に分からせることができるスキル”であった。

 もちろん、嘘を言えば嘘と相手に分かるスキルでもある。


 すべての真実も嘘もそれを聞く相手に筒抜けになるスキル。


 この効果により、囚人全員に自分が本物の女王であるとキャロラインは分からせたのだ。



 だからこそ、ミッドランド女王の口から出た言葉は真実である、と誰もが思った。


 当然、彼女が喋る見返りも真実であると理解した。


 だからこそ囚人同士手を取り合い、この刑務所に挑みかかったのである。


 キャロラインが居たのは地下の3階の牢獄だった。だから、なんとしても地上に出なければならなかった。


 キャロライン率いる脱獄囚たちは一丸となって地下2階に躍り出る。


「飛び掛かるのよ!」とキャロラインが叫び、その言葉をチルリンが翻訳する。


 先頭の勇敢な胸板の厚い裸のオッサンは果敢に素手で刑務官に飛び掛かった。


「武器よ!」とキャロラインは叫んだ。「皆、敵から武器を奪うの!」


 その言葉を合図に、脱獄囚達は殴り倒した刑務官から武器を奪う。


 木の棒や、槍や、剣を皆、刑務官から奪った。



 キャロラインも落ちていた鉄の盾を拾い、そして、列の先頭を走り始める。


「皆、わたくしについていらっしゃい!!」


 すると全身武装した刑務官がキャロラインに飛び掛かり、剣を振り下ろす。


 キャロラインはとっさにそれを盾でガードした。


 甲高い金属音と共に、ものすごい振動が盾越しに伝わってきた。


 ジーンと腕がしびれる。


 しかし、キャロラインは引かなかった。むしろ、叫んだ。



「命が惜しければ、今すぐここから立ち去りなさい!」



 異国の言葉なのに、何故かその言葉の意味の本質が心の中に入り込んできて、刑務官は動揺する。

「ホアウケヘゲナオン ――なんだこの女――」


「早く立ち去るのよ!」


「エケゲラゾラ! ――なめるなよ!――」


 次の瞬間、横から飛んできた剣によって刑務官の首が飛び、床に転がった。


 隣を見ると、顎髭を生やした裸のおっちゃんに返り血がついていた。


「ありがとう」と礼を言うと、おっちゃんはこちらを一瞥して、また戦闘に戻った。


「大丈夫かよキャル!」と後ろからチルリンが追い付いてきた。「あんま前に行くなよ、弱いんだから」


「分かってるわよ。でもね、そうでもしないと、皆わたくしについてこないじゃなくて?」


 キャロラインはそう言ってから、また盾を持ち上げた。


「安全な場所にずっと隠れている卑怯者の言葉なんて、なんの説得力も無いものなのよチルリン」


 チルリンには、そう喋るキャロラインが初めて女王に見えた。


 それは覚悟を持つ者だけが放つ、説得力にある言葉に聞こえたのだ。


「さぁ行くわよチルリン!」とキャロラインは叫び、また囚人の一団に加わる。チルリンもそのあとに続く。


 もうそろそろ地上が近いはずだった。
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