魔王の番

にーにゃ

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王子一行

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ガチャ


「ヒナちゃん、おはよう」


「はよ、アベン」


「うんうん、準備出来てるねえ」


「当たり前だ」


上空を長時間飛ぶらしいから、厚着するようにと昨日服を渡された。


「報告によると、もうすぐ王族たちが着くらしいけど、見てから行こうかあ
その中にルリちゃんがいるかもしれないしねえ」


「ああ、そうだな」


アベンの言葉に頷いた。


「んー?来たみたい」


突然アベンがそう言った。


「は?」


何を言っているんだ?


「魔王様から今連絡がきたんだあ」


俺の疑問にアベンがサラリと答えた。


「どうやって・・・」


魔王って、今ここにいないよな?


「それより、行くよお」


アベンは詳しく話すつもりはないのか、俺の手を取って部屋から出ようとした。


「あ、ああ」


今そんな事を気にしている場合じゃないか
また聞けばいいしな

俺らはゆっくりと門に向かった。


「なあ、急がなくていいのか?」


まあ、俺がまだ走れるほど回復してないからだと思うけど


「大丈夫だよお
待たせればいいんだよお
それに先に魔王様が向かってると思うしねえ」


「そうか」


だけど、俺は瑠璃がいるかもしれないと思うと焦りが募った。

アベンが玄関の扉を開けると


「離せよっ!!
俺にこんな事、していいと思ってるのか!!
今なら許してやるから離せ!!」


魔王と執事たちに捕まっている灰石が執事たちに向かって叫んでいた。


そういえば、灰石がいたんだったか
全く会わなかったから忘れてた


「はあ、うるせえ」


叫んでないと生きれないのか?


「だねえ
静かにさせるう?」


俺とアベンは叫び続けている灰石の横を通り過ぎて、魔王の元に向かった。


「ああ、来たか
さっさと終わらせるぞ」


魔王は俺らを見るとすぐに門に向かって歩き出した。


「だねえ
行こう、ヒナちゃん」


「ああ」


後ろで叫んでいる灰石を無視して、門に向かった。
門の向こうには門を開けようとしているのか、門に体当たりしたり、必死に門を開けようとしていた。

そんな王子たちに門に向かって魔王はスッと手を横にずらすと、門が独りでに開いた。

王子たちは一瞬、ぽかんと呆けたようになっていたけど、すぐに態勢を整えて俺らの方に向かってきた。


「それにしてもこんな所までわざわざご苦労なやつらだな」


魔王はふんっと馬鹿にしたように王子たちを見つめてそう言った。


「だねえ
まあそれだけ神子様に夢中なんでしょ」


アベンをクスクスと笑いながら答えた。


「っ魔王!!
リン!!」


「リンを返してください!」


王子たちが灰石を見つけた瞬間にそう叫んだ。


「ビア!インウィ!みんな!!」


灰石もそれに答えるように叫んだ。

それを見た俺は、眉間にしわを寄せ、心の中で舌打ちした。

チッ
くそ共が
ここでもその茶番をするのかよ


「うるせぇ」


「だよねえ
いいよお、早く引き取りなよお」


魔王もアベンも不愉快に思っているのか、より一層苛立っていた。

早く瑠璃を迎えに行きたいのにっと、逸る気持ちと苛立ちを抑えて王子たちを見た。



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