魔王の番

にーにゃ

文字の大きさ
37 / 141

瑠璃side

しおりを挟む





何が起きたのか全く分からないが、遠くからあいつらの叫び声が聞こえてきたので、あいつらの方がやられたことは分かった。


「瑠璃!!
よかった、無事で!!
無事って言っても酷い有様だけど、本当に生きててよかった!」


太陽の声が近くで聞こえた。
ぎゅっと手を握りしめられて、その温もりに幻聴でも何でもないことがわかった。

太陽!!
よかった、本当に
本当に、無事でよかったっ

泣きそうになったけど他にも人がいると思い出し、力が入らない手で太陽の手を握り返し、目は見えないけど必死に太陽の方に向こうとした。


「待て
暫くルリは休ませる
トリス、クラルを呼んでくれ
それと、人族の王共はあそこに放り込んでおけ」


低くて冷たい声が上から聞こえて、思わず固まった。

さっき、俺と話していた時と全く違う・・・
同一人物だよな?


「畏まりました」


「ヒナちゃん、ルリちゃんが心配なのはわかるけど、先に休ませないと」


ヒナちゃん!?
それにルリちゃん!?


「ああ、わかってる
だけど、瑠璃の側にいる」


太陽はその呼び名を受け入れているのか・・・
仲、いいんだな
でも、ルリちゃんは勘弁してほしい


「・・・
勝手にしろ」


太陽が側にいてくれるのは有難い
太陽が素で話しているってことはこの人達は信用できるって事だけど、会って間もない人達とずっと一緒にはいたくねえ
はあー
俺、これからどうなるんだ?


目が見えないからどこに連れて行かれたのかわからないけど、俺を運んでくれてるこの人が時々俺を気遣ってくれていることはわかった。

優しい人なんだろうな・・・

暫くすると、突然声が聞こえた。


「魔王様」


その事に俺はビクッと体が跳ねた。

ビビった
・・・気づいてないよな?

突然聞こえた声だけに驚くなんて、情けなさ過ぎて気を紛らわすためにもぞもぞと動いた。
そんな俺に、じっとしていろと言っているのか、ぎゅっと俺を抱き寄せた。

あ、あー・・・!
やめてくれ
今更ながら今抱かれている状況が恥ずかしくなってきた


「クラル、俺の部屋に運ぶ
すぐにルリを診てくれ」


「畏まりました」


「え!?どう、「しーっ」」


「ヒナちゃん、野暮ってものだよ?」


「はあ!?」


太陽が何か叫んでいたけど、誰かに口でも塞がれたのかそのあとの会話は聞こえなかった。

それより、この人の事、魔王様って言ってなかった?
・・・マジで!?
俺って魔王様に運ばれてるのかよ
ますます、大丈夫なのか、俺・・・
でも、そっか、この人が、魔王なんだ
なんか、納得だ
だから、どことなく安心感みたいなのがあるのか?
気を抜くと、すり寄ってしまいそうになる
・・・
って、いや!
俺が今、満身創痍なだけだよなっ
そうに、違いねえ!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

落ちこぼれ同盟

kouta
BL
落ちこぼれ三人組はチートでした。 魔法学園で次々と起こる事件を正体隠した王子様や普通の高校生や精霊王の息子が解決するお話。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

処理中です...