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6.
しおりを挟む月末まで残り15日となったこの日、ロザリーが言っていたダンスパーティーに参加する。
今更だが、ロザリーはダンスパーティーがあることをどこで誰から聞いたのだろうか。
王都に戻ってきたばかりの彼女にすぐに会ってくれるような友人がいるだろうか。
彼女は平民になっている。
友人だった令嬢たちはもう結婚していて、婚家に彼女を招くことはしないだろう。
手紙でも出して街のどこかで会ったのだろうか。
それにしては早すぎるよな?
だってダンスパーティーの話を聞いたのは、4日前だ。
そして僕が彼女と再会したのが更にその4日前。
その4日間に手紙を出して会ったのか?それとも街で偶然?
やはり、どう考えても昔の友人から聞いたとは考えにくい。ということは、妻が言っていた令息たちからか。
令息たち。学園卒業前後の。ロザリーとの関わりがさっぱりわからない。
5,6歳は年下だ。ロザリーが貴族だったことも知らないだろう。
ひょっとすると、今回のようなダンスパーティーはよく開かれているのだろうか。
前回、誰かに誘われてロザリーは参加した。それで次回開かれる今日のパーティーを知っていた。
そんなところだろうか。
だが、またここで疑問がある。前回とはいつで、誰が誘ったのか。
誰が、というのが令息なのだろう。ではいつそのパーティーはあったのか。
それがわかれば、ロザリーが王都に来たのが8日前だったというのは嘘だったことがわかる。
その嘘を暴いたところでどうする?
令息たちとはダンスパーティーで知り合った。
最初に誘ったのは?そこまで調べることに意味があるのか?
平民でも誘われたダンスパーティーに来ることは悪いことではないだろう?
妻の助言は何だったんだ?
すっきりしない。
ダンスパーティーに参加していたのは、比較的若い世代ばかりだった。
こういうところに参加したことがなかったので、戸惑いが強かった。
ダンスも格式ばったものではない。なんというか、自由だ。
尻込みした僕に気づいたのか、ロザリーは『踊ってくる!』と人込みに消えた。
呆気にとられた僕は何か飲もうと思ったとき、同じく騎士で仕事内容は違うグレッグに会った。
会った、というか、視線を感じたその先に、グレッグが驚きの顔で僕を見ていた。
「アドバス、お前、何やってんだ……まさか今の女性と付き合っているとか言わないよな?」
「え……?あーっと。説明が難しいな。」
妻がいる今の僕は、ロザリーと付き合っていると言えるのか?愛人と言うべきか?いや、まだ愛人らしい関係はないぞ?でも部屋に住まわせてるよな。それは愛人を囲っていると言うことなのか?
「嘘だろっ!お前、離婚してないよな。あんな女を愛人にしたのか?」
「あんな女って、ひどい言い方だな。……元婚約者なんだ。」
「え……あぁ、そうか。よりを戻したのか。今の付き合いはいつからの関係なんだ?」
「8日前からだ。王都の外れで馬車から降ろされているところで再会した。……隣国から帰ってきたばかりだと。」
「はぁ?お前、それ騙されているぞ?少なくとも1年ほど前から彼女は王都にいたはずだ。
というか、お前、巡回時の指示を聞いていないのか?彼女の特徴、ピッタリじゃないか!」
巡回時の指示?何だそれ。
「あっ!まさに8日前じゃないか。サルボア公爵から娘に不敬をした女を探すように捜索指示があったろう?」
捜索指示……そう言えば、ロザリーを宿に連れて行った後、騎士団に戻った時に一緒に巡回していたエリックに『これってさっきアドバスが相手していた女性の特徴じゃないか?』とか言ってたな。あれが捜索指示命令だったのか?
ロザリーのことで頭がいっぱいになっていた僕は指示を聞いていなかったけど、エリックがロザリーに興味を持ったのかと勘違いしたんだ。
僕は『違うよ』と言った気がする。それでもエリックが『彼女はどこに向かったんだ?』と聞いてきたから、『遠くにある実家に帰るって言ってた』と嘘をついた。
ロザリーは何をやらかしたんだ?
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