元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?

しゃーりん

文字の大きさ
14 / 20

14.

しおりを挟む
 
 
旦那様と結婚する前の婚約解消の経緯を話すと、旦那様は泣きそうになっていたわ。


「足が?気づかなかった。痛みは大丈夫なのか?」

「ええ。たまに少し痛む程度まで良くなりましたわ。」


気づかなかったのは、旦那様が歩く私の姿をほとんど見たことがないからよ?


「旦那様も共にダンスが踊れない妻はお断りでしょうか?」

「まさかっ!ダンスなどできなくても問題ない。社交のほんの一部のことじゃないか。だが、すまなかった。僕が全然君を夜会に誘わなかったから気づくことができなかった。」

「いえ、大丈夫ですよ。逆に私の足のことを知っている人たちは、踊れないから夜会に来ないのだと思っているはずですので。出産もありましたし、まだ爵位の継いでいない若い夫婦は似たようなものですわ。」

 
妊婦や産後などは一定期間はどうしても夜会に姿を見せることはないわ。
私の場合、結婚して3年と少しだけど、そのうちの1年半ほどは妊娠中と産後だもの。
産後は母乳が出たり、体形が変わったりしてドレスを着るのが難しいのよね。
以前と変わらない体形に戻るまで夜会には出ない人もいるそうだし。


「踊らなくてもいいじゃないか。そのうち君と夜会に行きたい。君が妻だと紹介したい。」

「……ありがとうございます。」


これは……復縁というのも変だけど、旦那様はやり直しを望んでいらっしゃるということよね?

うーん。エルビスのためにはその方がいいかしらね?もうちょっと様子見だけどね。


「あ、君は両親からリアと呼ばれているのか?」

「そうですね。使用人の方にもそう呼ばれています。皆さん、ロザリーさんのことをご存知ですので。
似た名前の私をロザリアと呼ぶとロザリーさんが頭にチラつくそうなのです。ですのでリアと。」


まさかそういう理由だとは思ってなかったのね。旦那様の顔が引きつったわ。


「あぁ、なるほど。……わかる気がする。身勝手な彼女のことを怒っていた者もいたからな。愛称でロザリーと呼ばれていたんじゃないのか?すまないな。呼び名まで。」

「いえ、リアと呼ばれることもありましたので大丈夫ですよ。」

「僕もリアと呼んでいいかな?」

「ええ。構いませんわ。」


その時、夕食の準備ができたと声がかかった。


「またリアの話を聞きたい。それにエルビスのことも。」

「そうですね。お仕事の合間や、終えられてから少しずつお話しましょう。」

「ありがとう。リアのこと、エルビスのこと、伯爵家のこと。知ることがいっぱいある。」


いやいやではなく嬉しそうにそう言った旦那様は、本当に知りたいのでしょう。

結婚当初から今の旦那様だったら良かったのに、と思ったけれど、元婚約者のロザリーさんが忘れられない訳あり男だったからこそ、婚約を解消された私に声がかかったのだものね。 

今日から新たにやり直しね。婚約時代からかしら?もう子供もいるけれど。


旦那様は私の歩幅に合わせてエスコートしてくださったわ。
私の足の状態を把握しようとしておられるのね。

家の中ではヒールを履いていないから、あまり違和感なく歩けるの。
私の様子に旦那様も安心したお顔をされていたわ。

優しい人なのね。



家族揃っての初めての食事ね。エルビスも時間が合えば一緒に食べるの。

エルビスもご機嫌だわ。旦那様を嫌がらなくて良かったわ。
旦那様を見てエルビスが泣いたら、笑ってやろうかと思っていたけど。 

それにしても、なぜ旦那様は食事中に何度も私を見ているのかしら?


「アドバス、お前どうしたんだ?」


同じく疑問に思ったのか、お義父様が聞いてくださったわ。


「いや、リアの髪色が違って見えて。前にも似たようなことを思ったことがある気がして。」


あぁ、今は照明に照らされて髪の表面が金色に見えるでしょうからね。
前に眉をひそめていたのも、どこで見たのか思い出そうとしていたのかしら?


「あら。思い出したの?リアはあなたの初恋の女の子よ?」


お義母様の言葉に、旦那様は狼狽えた。


「え?違うよ、だって……初恋の相手は、え?ロザリーじゃなかったのか?」


そうらしいわ。旦那様が勘違いしてるってお義母様から聞いたもの。


 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します

佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。 セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。 婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。

皇帝の命令で、側室となった私の運命

佐藤 美奈
恋愛
フリード皇太子との密会の後、去り行くアイラ令嬢をアーノルド皇帝陛下が一目見て見初められた。そして、その日のうちに側室として召し上げられた。フリード皇太子とアイラ公爵令嬢は幼馴染で婚約をしている。 自分の婚約者を取られたフリードは、アーノルドに抗議をした。 「父上には数多くの側室がいるのに、息子の婚約者にまで手を出すつもりですか!」 「美しいアイラが気に入った。息子でも渡したくない。我が皇帝である限り、何もかもは我のものだ!」 その言葉に、フリードは言葉を失った。立ち尽くし、その無慈悲さに心を打ちひしがれた。 魔法、ファンタジー、異世界要素もあるかもしれません。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが

ユユ
恋愛
10歳の時に婚約した彼は 今 更私に婚約破棄を告げる。 ふ〜ん。 いいわ。破棄ね。 喜んで破棄を受け入れる令嬢は 本来の姿を取り戻す。 * 作り話です。 * 完結済みの作品を一話ずつ掲載します。 * 暇つぶしにどうぞ。

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか

れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。 婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。 両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。 バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。 *今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m

君を愛する事は無いと言われて私もですと返した結果、逆ギレされて即離婚に至りました

富士山のぼり
恋愛
侯爵家に嫁いだ男爵令嬢リリアーヌは早々に夫から「君を愛する事は無い」と言われてしまった。 結婚は両家の父が取り決めたもので愛情は無い婚姻だったからだ。 お互い様なのでリリアーヌは自分も同じだと返した。 その結果……。

貴方は何も知らない

富士山のぼり
恋愛
「アイラ、君との婚約は破棄させて欲しい」 「破棄、ですか?」 「ああ。君も薄々気が付いていただろう。私に君以外の愛する女性が居るという事に」 「はい」 「そんな気持ちのまま君と偽りの関係を続けていく事に耐えられないんだ」 「偽り……?」

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...