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しおりを挟む応接室に残ったクラウドとディート。
ディートのどこかスッキリしない顔を見て、クラウドは面白くなった。
「ディート、ヴィッテ嬢の言った言葉の何が引っかかったんだ?」
『いえいえ。元々は告白するつもりなんてなかったんです。無謀ですからね。
ですが、婚約することになって、その前にダメ元で告白したかったんです。
それで、やっぱり振られてスッパリ諦めて婚約しました。』
彼女はそう言った。その言葉の何に引っかかったのだろう……
「クラウド、令嬢が私に告白するのは無謀なのか?」
「うーん。爵位によっては無謀とも言えるかも。子爵・男爵令嬢は特にそうかな。
伯爵令嬢でも、まぁ、格によると思う。ヴィッテ嬢のパルテ家ならそうでもないけどな。」
「公爵・侯爵令嬢なら無謀じゃないのか。」
「釣り合い的にはね。
ディートの公爵家なら、自国の王女も他国の王女もあり得る地位だから。
あと、ディートが誰の告白も受けたことがないから受け入れられるはずがないっていう無謀さ。
それも込めているんじゃない?」
「そうか。だからダメ元なのか。……振られたら、スッパリ諦めるものなのか?」
「うーん。それは人それぞれなんじゃない?
ヴィッテ嬢みたいに、別の男との婚約をきっかけに思い人を諦めるために告白することもある。
胸に秘めたまま婚約して思い続ける令嬢もいれば、婚約者に気持ちが移る令嬢もいるだろうし。
ディートに振られても、まだ秋波を送ってくる令嬢もいるだろ?」
ディートは婚約者のいない高位貴族なんだ。諦めの悪い令嬢もいる。
「ヴィッテ嬢はもう私をスッパリ諦めたということだよな。」
「まぁ、それはそうかもしれないし、違うかもしれないし?」
「どういうことだ?」
恋愛に関しては、他人の気持ちにも自分の気持ちにも鈍い男だからなぁ。
「だから、人それぞれだって。
さっきまであった気持ちを綺麗サッパリ無くすことなんて難しいだろ?
『失恋を癒すには新たな恋』なんて言葉もある。
例えば、お前に振られたヴィッテ嬢は婚約者になったギガルドを好きになった可能性もある。
あいつが好感の持てる男だったなら、あいつもヴィッテ嬢に好感を持っていたら。
脱税の罪は侯爵にはあるが、2人が恋愛結婚して爵位を落としても援助する可能性もあった。」
「なっ!あんな男を……」
「だから、例えばの話だって。
ヴィッテ嬢の次の婚約者は伯爵がまともなのを選ぶだろうし。
どんな政略結婚だって、何かしらの情はあるだろう?
昔、好きだった男なんて、よっぽどのことがない限り思い続けないさ。」
面白いなぁ、ディート。ショックを受けてるのか?
「振った令嬢は諦めてくれた方がお前も気が楽だろう?付きまとわれたら嫌だし。
そろそろ、婚約者を探したら?そうすれば、告白も釣書も減るんじゃない?」
「婚約者……
クラウド、例えば振った令嬢にやっぱり付き合ってほしいって言うことはあり得るのか?」
お?ようやく自覚したのか?
「相手に婚約者ができていなかったり、気持ちが残っている場合はあり得るんじゃないか?
略奪は面倒事になるけど、金で解決する場合もあるし。心証は悪いだろうけど。」
悩んでるな。婚約じゃなくて付き合うのか?それもアリか。
「振ったことを撤回するなら、早めがいいと思うよ?
ヴィッテ嬢にまた変な縁談が持ち込まれる前に伯爵も婚約者を考えそうだし。」
「……相手がヴィッテ嬢とは言ってない。」
「違うの?話の流れ的にそうなのかと。
あの子なら、私やディートに媚びも売らないし、囮になる度胸もある。
裕福なのに浪費家でもないし、会話も楽しいし、いいと思ったんだけどなぁ。
他に思い当たらなかったから……で、どの令嬢のこと?」
「………………ヴィッテ嬢で合ってる。」
クラウドは、ニンマリ笑った後、我慢できなくて結局、声に出して笑った。
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