夫の子ではないけれど、夫の子として育てます。

しゃーりん

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コールタッド伯爵家からラフォーレ侯爵家に嫁いだフォルティアはベッドに座って夫となったディカルドを待っていた。初夜、である。

フォルティアが着ている夜着は、初夜としてはシンプルなものだろう。
透けていたり、丈が短い夜着にする勇気がフォルティアにはまだ足りていなかった。

ディカルドは半年前にフォルティアの婚約者になったばかりで、婚約と同時に結婚の日付まで決められたというのに、会ったのは月に一度程度。

ラフォーレ侯爵家に呼ばれてお茶を飲んだり、侯爵夫妻も一緒に昼食をとったり、結婚式の打ち合わせをしたり、部屋の内装を希望したり。
 
どれもこれも、お互いの性格や好みを把握するのに十分な時間とは言えなかったが、政略結婚とはそういうものであり一緒に暮らしていく上でお互いを知ることができれば、とフォルティアは思っていた。

だから、思いが通い合っていなくても、初夜というのは義務でもあるとわかっていた。
正式な夫婦となり婚家の一員になる儀式のようなものでもある。

その覚悟を持って、フォルティアは夫婦のベッドに座ってディカルドを待っていた。




……どれくらいの時間が経った頃だろうか。2時間は待っていただろう。

ようやく、夫婦の寝室に姿を見せたディカルドは少し酔っているようだった。
眠ることなく座ったままディカルドを待っていたフォルティアに驚いたのか、自分のガウンを脱いでフォルティアの夜着の上から着せた。

そのままフォルティアの前に跪き、頭を下げたまま言った。 


「すまない。僕は君を抱くことができない。僕が愛しているのはリーリエだけで、今後も変わらない。」
 

リーリエとは、ディカルドがフォルティアと婚約する前の婚約者の名前で、彼女は病気で亡くなった。

彼がリーリエだけを愛し続けたいのであれば、それは構わない。
だけど、抱く気がないのであればこの結婚に何の意味があったのだろうか。

フォルティアは、ラフォーレ侯爵家を継ぐ子供を産むために嫁いできたのだ。

『どうして結婚前にそのことを言ってくれなかったの?』

そう聞きたかったけれど、結婚してしまった後ではもう意味がない。


「では、このラフォーレ侯爵家の跡継ぎはどうされるのですか?」

「それは……遠縁からでも養子を貰えばいいと思っている。」


ディカルドはフォルティアの実家コールタッド伯爵家がこの侯爵家に援助していることを知らないのではないか。
フォルティアはそう思った。
侯爵夫妻が隠しているのだろう。知っていれば、初夜を放棄することなどあり得ない。


「……わかりました。」

「本当に、すまない。だが、このこと以外であれば君のことはちゃんと妻として接するつもりだから。」


そう言い残し、夫婦の寝室から出て行ったディカルドはそれで自分が誠実な男だと思っているのだろうか。


フォルティアは、そっちがその気なのであれば2年後に白い結婚を証明して離婚することにしようと決心した。

援助金が無くなって困るのはラフォーレ侯爵家。
金目当てでフォルティアを選んだということを息子に話していない侯爵夫妻の過ちの結果なのだと2年後に笑ってやる。フォルティアはそう思っていた。

 



 

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